葬儀費用を分割で支払う方法

2025年4月28日

突然の訃報は、心身ともに大きな負担となります。
ましてや、その後に発生する葬儀費用について、すぐにまとまった金額を用意するのが難しいという方もいらっしゃるかもしれません。
葬儀は多くの場合、急に執り行われるため、事前に十分な準備ができないまま支払い期日を迎えることも少なくありません。
このような状況で、「葬儀費用を分割で支払う方法はないのだろうか？」と考えるのは自然なことです。
この記事では、葬儀費用を分割で支払うための様々な選択肢や、利用できる公的な制度、そして知っておくべき注意点や相談先について、分かりやすくお伝えします。
大切な方を安心して見送るために、費用に関する不安を少しでも和らげるお手伝いができれば幸いです。

葬儀費用を分割で支払う主な方法とは

葬儀費用は、多くの場合、葬儀後すぐに現金一括での支払いを求められます。
しかし、急な出費に対応できない場合でも、いくつか分割払いに近い形で対応できる方法があります。
これらの方法は、それぞれに特徴や利用条件がありますので、ご自身の状況に合わせて検討することが大切です。
金融機関が提供するローンや、クレジットカードの活用、場合によっては葬儀社との個別の相談、そして身近な方からの協力を得ることも一つの方法です。
これらの選択肢を理解することで、突然の費用負担に対する不安を軽減し、落ち着いて故人を見送る準備を進めることができます。
それぞれの方法について、詳しく見ていきましょう。

葬儀ローンやクレジットカード払いを検討する

葬儀費用の支払いに困った際に、まず検討できるのが葬儀ローンやクレジットカード払いです。
葬儀ローンは、葬儀費用に特化した目的別ローンで、多くの金融機関や葬儀社が提携する形で提供しています。
一般的に、無担保で利用でき、比較的スピーディーに手続きが進むというメリットがあります。
審査はありますが、通過すれば葬儀費用を借り入れ、金融機関に分割で返済していく形になります。
金利や手数料は金融機関によって異なりますので、複数の商品を比較検討することが重要です。
また、葬儀ローンは葬儀の申し込みと同時に手続きを進めることが多く、葬儀費用全体をカバーできる場合が多いのも特徴です。

クレジットカード払いも、葬儀費用を分割で支払う有効な手段の一つです。
対応している葬儀社であれば、葬儀費用をクレジットカードで決済し、後からカード会社に分割払いやリボ払いを申請することができます。
この方法のメリットは、普段利用しているカードが使えること、手続きが比較的簡単なことなどが挙げられます。
ただし、葬儀社によってはクレジットカード払いに対応していない場合や、対応していても利用できるカードブランドや金額に上限がある場合もあります。
また、クレジットカードの分割払いやリボ払いは、手数料が高くなる傾向がありますので、返済総額がいくらになるのかを事前にしっかり確認する必要があります。
クレジットカードの利用限度額も事前に確認し、葬儀費用の総額に対して足りるかどうかも重要な確認ポイントです。
どちらの方法を選ぶにしても、契約内容や返済条件をよく理解し、無理のない返済計画を立てることが最も大切です。

葬儀社への直接相談や身近な人からの協力

葬儀ローンやクレジットカード払い以外にも、葬儀費用に関する支払いの相談は可能です。
まず、葬儀を依頼する葬儀社に直接相談してみましょう。
多くの葬儀社では、支払い方法について柔軟な相談に応じてくれる場合があります。
ただし、葬儀社が自社で長期の分割払いを直接提供しているケースは、実はそれほど多くありません。
多くの場合、提携している信販会社のローンを紹介されたり、クレジットカード払いを提案されたりすることが一般的です。
しかし、葬儀社によっては、支払い期日を少し延ばしてもらったり、費用の一部を葬儀後に支払うなどの相談に乗ってくれる可能性もゼロではありません。
特に、故人の遺産整理に時間がかかる場合など、具体的な事情を説明することで、一時的な融通が利く場合もあります。
まずは遠慮せずに、正直に現在の状況と希望する支払い方法について相談してみることが第一歩です。

また、親族や友人など、身近な人に相談し、一時的に費用を立て替えてもらったり、借り入れたりすることも現実的な選択肢です。
特に、故人の配偶者や子供、兄弟姉妹など、費用負担を分担する立場にある親族間での話し合いは非常に重要です。
葬儀費用は喪主が負担することが多いですが、必ずしも喪主一人で全額を負担しなければならないわけではありません。
事前に親族と費用分担について話し合っておくことで、一人当たりの負担を減らし、支払いのハードルを下げることができます。
もし一時的な立て替えをお願いする場合でも、借りる金額や返済の期日、方法などを明確にしておくことで、後々のトラブルを防ぐことができます。
身近な人からの協力は、精神的な支えにもなりますし、金銭的な負担を分散させる有効な手段と言えます。

公的制度を活用した葬儀費用の軽減

葬儀費用は高額になることも少なくありませんが、実は故人や遺族の状況によっては、公的な制度から給付金や補助金を受け取れる場合があります。
これらの制度は、直接的な「分割払い」の仕組みではありませんが、葬儀にかかる費用負担を大きく軽減してくれるため、結果として手持ちの資金で対応しやすくなったり、借り入れが必要な金額を減らしたりすることにつながります。
知っているか知らないかで、経済的な負担感が大きく変わる可能性のある重要な制度です。
主に、故人が加入していた健康保険や、生活保護の受給状況によって利用できる制度が異なります。
これらの制度を適切に活用することで、葬儀費用の支払いに向けた準備をより計画的に進めることができるでしょう。

健康保険・後期高齢者医療制度の埋葬料/埋葬費について

故人が国民健康保険、または後期高齢者医療制度に加入していた場合、葬儀を行った方（通常は喪主）に対して「埋葬料」または「埋葬費」が支給される制度があります。
これは、葬儀に要した費用の一部を補助するもので、葬儀費用を直接分割払いにするものではありませんが、葬儀費用の一部を賄うことができるため、全体の負担を軽減し、結果的に手元の資金で対応しやすくなる効果があります。

具体的には、故人が国民健康保険に加入していた場合は「埋葬料」として、通常5万円が支給されます。
故人が世帯主だった場合は、その世帯の世帯主に対して支給されます。
故人が後期高齢者医療制度に加入していた場合も、同様に「葬祭費」として、自治体によって金額は異なりますが、一般的に3万円から7万円程度が支給されます。
これらの給付金は、葬儀後、申請手続きを行うことで受け取ることができます。
申請には、亡くなった方の保険証、申請者の本人確認書類、印鑑、振込先の口座情報、そして葬儀の領収書や会葬礼状など、葬儀を行った事実が確認できる書類が必要となります。
申請期限は葬儀を行った日の翌日から2年間と定められていますので、忘れずに手続きを行いましょう。
申請から支給までには一定の期間がかかるため、葬儀費用の支払いにすぐ充当できるわけではありませんが、後日まとまった金額が支給されることは、家計にとって大きな助けとなります。

生活保護受給者の葬祭扶助とその他の支援

故人または葬儀を執り行う方が生活保護を受給している場合、葬儀費用について「葬祭扶助」という制度を利用できる可能性があります。
葬祭扶助は、生活保護法に基づく制度で、困窮のため最低限度の葬儀費用も賄えない場合に、居住地の自治体が必要最小限の範囲で葬儀費用を支給するものです。
支給されるのは、検案、運搬、火葬または埋葬、納骨その他葬祭のために必要なものにかかる費用の一部です。
一般的に、火葬のみの直葬形式で、最低限必要な項目（搬送、火葬、骨壺など）のみが扶助の対象となることが多いです。
装飾的な要素や飲食費、返礼品などは対象外となるのが一般的です。

この制度を利用するには、葬儀を行う前に、居住地の福祉事務所に相談し、申請する必要があります。
原則として、葬儀を執り行った後に申請しても認められないため、必ず事前に相談することが重要です。
福祉事務所の担当者が、申請者の状況や故人の状況（遺族の有無、扶養義務者の有無など）を確認し、葬祭扶助の要件を満たすかどうかを判断します。
要件を満たすと判断された場合、福祉事務所から葬儀社に対して直接費用が支払われる形になることが多いです。

また、これらの制度以外にも、自治体によっては独自の支援制度を設けている場合や、社会福祉協議会が低所得者向けの貸付制度を用意している場合もあります。
例えば、「臨時特例つなぎ資金貸付制度」など、公的な給付が支給されるまでの間のつなぎ資金として、無利子または低利子で借り入れができる制度が存在する可能性もあります。
これらの制度については、お住まいの市区町村の役所窓口（福祉課や市民課など）や、社会福祉協議会に相談してみることをお勧めします。
専門の担当者が、利用できる制度や申請方法について丁寧に教えてくれるはずです。

葬儀費用を分割払いにする際の注意点と相談先

葬儀費用を分割払いやローンなどで対応することは、一時的な負担を軽減する有効な手段ですが、いくつかの注意点があります。
安易に利用してしまうと、後々の返済に苦労したり、想定外の費用が発生したりするリスクも考えられます。
特に、急な状況で冷静な判断が難しい中での手続きになるため、契約内容を十分に理解しないまま進めてしまうことも少なくありません。
後悔しないためにも、事前にどのような点に注意すべきかを知っておくことが重要です。
また、一人で悩まず、専門家や相談窓口を頼ることも非常に大切です。
適切な情報収集と相談を行うことで、より安心して葬儀費用の問題に向き合うことができるでしょう。

支払い方法別のメリット・デメリットとリスク

葬儀費用を分割払いに近い形で対応する方法はいくつかありますが、それぞれにメリットとデメリット、そして潜在的なリスクが存在します。
例えば、葬儀ローンは、まとまった金額を借り入れられる点や、葬儀費用に特化しているため手続きが比較的スムーズな点がメリットです。
しかし、当然ながら金利が発生するため、借り入れた金額以上の返済が必要になります。
返済期間が長くなればなるほど、総支払額は増加します。
また、審査があるため、必ずしも利用できるとは限りません。

クレジットカード払いは、普段使い慣れている方法であることや、手続きが簡単な点がメリットです。
しかし、葬儀社によっては対応していない場合や、高額な葬儀費用ではカードの利用限度額を超える可能性があります。
また、リボ払いや分割払いの手数料は、ローンよりも高くなる傾向があり、特にリボ払いは毎月の返済額が一定でも、元金がなかなか減らず、返済が長期化するリスクがあります。

葬儀社による直接の分割払いや後払いは、柔軟な対応が期待できる場合がありますが、対応している葬儀社が限られることや、支払い期間が短い場合が多いことがデメリットです。
親族からの借入は、金利がかからない場合が多いですが、返済が滞ると人間関係に亀裂が入るリスクがあります。
公的制度は、支給や扶助によって費用負担を軽減できますが、申請から受給までに時間がかかるため、葬儀直後の支払いに間に合わないことや、対象となる費用が限られることがデメリットです。
どの方法を選ぶにしても、金利や手数料、返済期間、毎月の返済額などを具体的に把握し、無理なく返済できる計画を立てることが最も重要です。
複数の方法を組み合わせることも視野に入れつつ、ご自身の経済状況を冷静に見極める必要があります。

急ぎの場合の対応と後悔しないための準備

葬儀は突然の出来事であり、費用についても急な対応が求められることがほとんどです。
そのため、「急ぎで費用を用意しないといけないけれど、間に合うだろうか」と不安に感じる方も多いでしょう。
結論から言うと、葬儀費用を完全に後払いや分割払いにできる公的な制度は少なく、多くの場合は葬儀後すぐに一括払いを求められます。
公的な埋葬料や葬祭扶助は、申請から受給まで数週間から数ヶ月かかるのが一般的で、葬儀直後の支払いには間に合わないことがほとんどです。

そのため、急な状況で費用に不安がある場合は、まず葬儀社に相談することが最も現実的な対応策となります。
支払い方法について相談できるか、提携ローンやクレジットカード払いに対応しているかを確認しましょう。
複数の葬儀社から見積もりを取り、費用だけでなく支払い方法についても比較検討することが重要です。
葬儀費用は、葬儀の規模や内容によって大きく変動します。
不要なオプションを省くなど、費用を抑える工夫をすることも、結果的に支払い負担を軽減することにつながります。

また、将来の葬儀に備えて、事前に準備をしておくことも非常に有効です。
例えば、葬儀保険への加入や、互助会への積み立ては、もしもの時にまとまった費用を用意するための手段となります。
葬儀社との事前相談もおすすめです。
事前に葬儀の形式や内容、費用について話し合っておくことで、いざという時に慌てずに済み、費用に関する不安を軽減できます。
事前相談では、支払い方法についても具体的に確認することができます。
故人や自身の希望を反映させつつ、費用についても納得できるプランを事前に立てておくことが、後悔しない葬儀につながります。