大切な方を見送る葬儀は、故人様への最後の別れを告げ、ご遺族に寄り添う厳粛な場です。
そのため、参列する際には服装にも細心の注意を払う必要があります。
しかし、「どんな服装が適切なのか」「これは着ていっても大丈夫？」と迷ってしまう方も少なくないでしょう。
特に、普段使い慣れているアイテムの中に、葬儀の場にはそぐわないものがあることを知らずに身につけてしまうと、思わぬ失礼にあたる可能性もゼロではありません。
この記事では、葬儀服装NGなアイテムとその理由を具体的に解説し、安心して葬儀に参列するためのマナーをご紹介します。
故人様やご遺族に失礼なく、心穏やかに弔意を表すために、ぜひ参考にしてください。
葬儀の服装マナー、なぜNGがあるのか
葬儀における服装には、長い歴史の中で培われてきた様々なマナーが存在します。
これらのマナーは単なる形式ではなく、故人様への哀悼の意を表し、ご遺族に寄り添う気持ちを示すための大切な手段です。
なぜ特定のアイテムがNGとされるのか、その基本的な考え方を知ることで、より深くマナーを理解し、心からの弔意を示すことができるでしょう。
葬儀という場は、日常とは異なる特別な空間であり、そこにふさわしい装いが求められます。
服装は、言葉以上にその人の気持ちや配慮を伝えるものだからこそ、細部にまで気を配ることが重要なのです。
故人と遺族への敬意を示すということ
葬儀の服装マナーの根底にあるのは、何よりもまず故人様への敬意と、悲しみの中にいるご遺族への配慮です。
華美な装いや派手な色は、場の雰囲気にそぐわず、悲しみに暮れる人々の感情を逆なでする可能性があります。
例えば、明るい色の服やきらびやかなアクセサリーは、「弔いの場にふさわしくない」と見なされがちです。
これは、故人様への哀悼の気持ちを最優先し、自身の装飾よりも弔意を表すことに重きを置くという考え方に基づいています。
また、ご遺族は様々な手続きや対応に追われ、心身ともに疲弊しています。
そのような状況で、参列者の服装によって不快な思いをさせたり、余計な心配をかけたりすることは避けたいものです。
控えめで落ち着いた装いは、静かに故人を偲び、ご遺族に寄り添う姿勢を示すことにつながります。
服装マナーを守ることは、形式的なルールに従うだけでなく、故人様とご遺族に対する深い思いやりを形にする行為なのです。
喪服の種類で変わるNGの範囲
一口に「喪服」と言っても、実はいくつかの種類があり、参列する立場や葬儀の形式によって適切な装いは異なります。
最も格式が高いのは「正喪服」で、喪主や親族が着用することが多いです。
次に「準喪服」があり、一般の参列者が着用するブラックスーツやブラックフォーマルがこれにあたります。
そして、お通夜や急な弔問などで着用する「略喪服」があります。
NGとされるアイテムの範囲は、この喪服の種類や場の格式によって微妙に変わることがあります。
例えば、正喪服や準喪服では許されないような装いでも、略喪服であれば許容されるケースも存在します。
しかし、これはあくまで例外的な対応であり、基本的には準喪服のマナーに沿った装いを心がけるのが最も安心です。
特に、アクセサリーや小物類に関しては、どの種類の喪服であっても、華美なものや光沢のあるものは避けるのが一般的です。
重要なのは、参列する葬儀の形式や自身の立場を理解し、それにふさわしい装いを選ぶことです。
迷った場合は、最も格式の高い準喪服の基準に合わせて準備しておくと、どのような状況でも失礼なく参列できるでしょう。
喪服の種類によるNGの範囲を知ることは、適切な服装を選ぶための重要な手がかりとなります。
具体的に注意！葬儀でNGとされるアイテム【完全ガイド】
葬儀に参列する際に避けるべきアイテムは多岐にわたります。
衣服だけでなく、アクセサリー、バッグ、靴、さらには髪型やメイク、ネイルに至るまで、細部にわたる配慮が必要です。
ここでは、具体的にどのようなアイテムがNGとされ、なぜそれが適切ではないのかを詳しく解説します。
これらの情報を知っておくことで、葬儀の場でうっかり失礼にあたることを防ぎ、故人様への弔意をしっかりと示すことができるでしょう。
「知らなかった」では済まされないのが、葬儀のマナーです。
一つ一つのアイテムについて、その理由とともに理解を深めていきましょう。
アクセサリー・バッグ・靴の選び方
アクセサリーは、慶事では装いを華やかにするものですが、弔事においては控えめにするのが基本です。
光沢のあるものや揺れるデザインのものは避けましょう。
例えば、ダイヤモンドやカラーストーン、ゴールドやプラチナのネックレスやイヤリングはNGです。
結婚指輪はつけていても問題ありません。
アクセサリーをつける場合は、一連のパールネックレスや、オニキスなど黒い石のシンプルなものを選びます。
イヤリングやピアスも同様に、揺れないデザインで控えめなものにしましょう。
パールのネックレスは、二連や三連のものは「不幸が重なる」ことを連想させるため避けるのがマナーとされています。
バッグも同様に、光沢のある素材や派手なデザイン、大きなブランドロゴが入ったものはNGです。
布製や革製の黒無地で、金具が目立たないシンプルなものを選びます。
セカンドバッグを持つ場合も、同様の基準で選びましょう。
靴は、男性は黒の革靴（金具や装飾の少ないもの）、女性は黒のパンプスが基本です。
エナメル素材やスエード素材、爬虫類系の革、サンダル、ミュール、ブーツ、スニーカーはNGです。
ヒールの高さは3～5cm程度の歩きやすいものが適切です。
靴下やストッキングも、男性は黒無地の靴下、女性は肌色のストッキングが一般的です。
冬場は寒さ対策として黒いストッキングを着用することもありますが、基本は肌色と覚えておくと良いでしょう。
これらのアイテム選びは、華美さを排し、つつましく弔意を示すという葬儀の場の基本的な考え方に基づいています。
髪型・メイク・ネイルの落とし穴
髪型、メイク、ネイルも、葬儀の場にふさわしいかどうかが問われます。
髪型は、清潔感を第一に、派手なアレンジは避けましょう。
長い髪は一つにまとめるのが一般的です。
明るすぎる髪色は、黒く染めるのが理想ですが、難しい場合は目立たないようにまとめるなど工夫が必要です。
ヘアアクセサリーは、黒や紺のシンプルなものを選びます。
シュシュやリボンなど、カジュアルなものや装飾的なものはNGです。
メイクは、「片化粧（かたげしょう）」と呼ばれる、薄づきで控えめなメイクがマナーとされています。
ファンデーションはナチュラルに、アイシャドウやチーク、リップはベージュやブラウン系の落ち着いた色を選びます。
ラメやパール入りのもの、つけまつげ、濃いアイメイク、真っ赤な口紅などはNGです。
涙でメイクが崩れても良いように、ウォータープルーフのものを選ぶと安心です。
ネイルは、基本的には落とすのがマナーです。
派手な色やデザインのネイル、ジェルネイル、スカルプチャーネイルなどは弔いの場にふさわしくありません。
どうしても落とせない場合は、手袋をするなどの配慮が必要ですが、できる限り自然な爪で参列するのが望ましいです。
透明のトップコート程度であれば許容される場合もありますが、基本は何も塗らないのが最も丁寧な対応です。
これらの身だしなみも、悲しみに寄り添う姿勢を示すための重要な要素であり、自己主張や華やかさを抑えることが求められます。
服装以外にも気をつけたい持ち物と振る舞い
葬儀に持参する小物や、その場での振る舞いにも、服装と同様にマナーが存在します。
些細なことのように思えるかもしれませんが、こうした細部への配慮が、故人様やご遺族への敬意を示すことにつながります。
特に、普段何気なく使っているアイテムが、葬儀の場では不適切とされることもあります。
ここでは、服装以外の持ち物や振る舞いについて、避けるべき点とその理由を解説します。
ハンカチ、数珠、防寒具などの小物
葬儀に持参する小物にも注意が必要です。
まず、ハンカチは涙を拭くために必需品ですが、派手な色や柄のものは避け、白や黒、紺などの無地のものを選びます。
レースや刺繍が施されているものも、派手すぎなければ問題ありません。
キャラクターものや明るい色のハンカチはNGです。
数珠は、仏式葬儀に参列する際に持参するのが一般的です。
宗派によって形や色が異なりますが、自身の宗派の数珠を持参するのが最も丁寧です。
宗派が分からない場合や、自身の宗派がない場合は、略式数珠と呼ばれる宗派を問わないものを持参すれば問題ありません。
数珠は貸し借りするものではないため、持っていない場合は無理に用意する必要はありませんが、今後も法事などで使用する機会があるため、一つ用意しておくと安心です。
数珠の色は、派手な色や透明なものは避けるのが無難です。
冬場の防寒具であるコートやマフラー、手袋は、会場に入る前に脱ぐのがマナーです。
色は黒や紺、グレーなどの落ち着いた色を選びます。
毛皮やファー素材のものは、殺生を連想させるためNGとされています。
急な雨の場合の傘も、黒や紺、グレーなどの地味な色を選びましょう。
これらの小物は、あくまで弔いの場にふさわしい、控えめで実用的なものを選ぶことが大切です。
香水や派手な装い、子供の服装
身だしなみとして、香水にも注意が必要です。
香りの強い香水は、体調の悪い方や高齢者の方の迷惑になる可能性があるため、つけないのがマナーです。
どうしてもつけたい場合は、ごく控えめに、肌ではなく衣服の内側につけるなど配慮が必要です。
また、メイク同様、派手な装飾や過度な露出は避けましょう。
例えば、胸元が大きく開いた服や、ミニスカート、タイトすぎるシルエットの服などは、葬儀の場にはふさわしくありません。
肌の露出は控えめにし、落ち着いたシルエットの服を選ぶことが大切です。
お子様が参列する場合の服装も、大人と同様に配慮が必要です。
学校の制服がある場合は、制服を着用するのが最も適切です。
制服がない場合は、白や黒、紺、グレーなどの落ち着いた色の、ブレザーやカーディガン、シャツ、ブラウス、ズボン、スカートなどを組み合わせます。
靴は、黒や紺のスニーカーやフォーマルシューズを選びます。
キャラクターものや派手な色・柄の服、サンダルなどはNGです。
お子様の場合も、清潔感を第一に、派手さを抑えた服装を心がけましょう。
また、お子様の年齢によっては、騒いだり走り回ったりしないよう、事前にしっかり言い聞かせることも重要なマナーです。
葬儀服装のNG、知っておきたい一次情報と応用知識
葬儀の服装マナーは、地域や宗派によって微妙な違いがあったり、状況によって柔軟な対応が求められたりすることがあります。
一般的なマナーを知っていることはもちろん大切ですが、さらに踏み込んだ知識や、迷ったときの対処法を知っておくと、より安心して葬列に参列できます。
ここでは、葬儀服装のNGに関する、知っておくともっと役立つ応用的な知識や、一次情報として押さえておきたいポイントをご紹介します。
地域や状況で異なるマナーのポイント
葬儀のマナーは、日本全国で統一されているわけではなく、地域や宗派によって独自の慣習が存在することがあります。
例えば、特定の地域では、男性が夏場でも白い靴下を履くのが一般的であったり、女性が特定の色の小物を持つことが許容されていたりすることもあります。
また、宗派によっては、数珠の持ち方や服装の細部に違いが見られることもあります。
これらの地域や宗派独自の慣習は、その土地やコミュニティで長く受け継がれてきたものであり、尊重すべき大切な一次情報と言えます。
しかし、外部の人間がすべての地域の慣習を把握するのは困難です。
そのため、迷った場合は、その葬儀を取り仕切る葬儀社に尋ねるか、故人様の近親者（ご遺族）に確認するのが最も確実です。
特に、家族葬や一日葬など、近親者のみで行われる小規模な葬儀の場合、一般的なマナーよりも、ご遺族の意向が優先されることもあります。
「平服でお越しください」と言われた場合でも、完全に普段着ではなく、略喪服やそれに準ずる落ち着いた服装で参列するのが一般的ですが、その「平服」の解釈も、ご遺族によって異なる場合があります。
状況に応じて柔軟に対応するためにも、事前に確認する勇気を持つことが大切です。
迷ったときの確認方法と事前準備
葬儀の服装で迷ったとき、誰に聞けば良いのか、どのように確認すれば失礼がないのかを知っておくことは非常に重要です。
最も信頼できる情報源は、葬儀を執り行っている葬儀社です。
葬儀社の担当者は、その葬儀の形式やご遺族の意向、地域の慣習などを把握しているため、具体的なアドバイスを得られます。
電話で問い合わせる際は、「一般参列者なのですが、服装について確認したい点がありまして」と丁寧に伝えましょう。
また、故人様の近親者であるご遺族や、その地域の事情に詳しい親戚、友人などに尋ねるのも良い方法です。
ただし、悲しみの中にいるご遺族に、服装のことで過度な負担をかけるのは避けたいところです。
もし尋ねる場合は、「一般的なマナーで問題ないでしょうか」といった聞き方で、相手に判断を委ねすぎないように配慮が必要です。
さらに、事前に基本的な喪服一式を用意しておくことは、急な訃報に慌てず対応するために非常に有効な準備です。
特に、準喪服となるブラックスーツやブラックフォーマル、それに合わせるシャツやブラウス、ネクタイ、ストッキング、靴、バッグなどは、一通り揃えておくと安心です。
「備えあれば憂いなし」という言葉があるように、いざという時に困らないよう、日頃から少しずつ準備を進めておくことをおすすめします。
また、最近では喪服のレンタルサービスや、コンビニエンスストアでも購入できる簡易的な喪服セットなどもありますので、状況に応じて活用するのも良いでしょう。
まとめ
葬儀に参列する際の服装マナーは、単なる規則ではなく、故人様への弔意とご遺族への深い配慮を示すための大切な手段です。
華美な装いや派手なアイテムを避け、控えめで落ち着いた服装を心がけることが、葬儀という厳粛な場にふさわしい姿勢と言えます。
具体的には、光沢のあるアクセサリーやバッグ、派手な色やデザインの服、露出の多い服、明るい色のメイクやネイルなどはNGとされます。
これらのNGアイテムとその理由は、「悲しみに寄り添い、自己主張を控える」という葬儀の基本的な考え方に基づいています。
また、服装だけでなく、ハンカチや数珠といった小物、香水などの身だしなみ、さらにはお子様の服装に至るまで、細部への配慮が求められます。
地域や宗派によってマナーが異なる場合があるため、迷った際は葬儀社や近親者に確認することが大切です。
事前に基本的な喪服一式を準備しておくことは、いざという時に慌てず、失礼なく参列するための有効な備えとなります。
この記事でご紹介したNGアイテムとその理由を参考に、故人様への最後の敬意を表し、ご遺族に心穏やかに寄り添えるように、適切な装いを心がけましょう。
