葬儀を終え、少し落ち着いた頃に開かれる「お別れ会」。
故人を偲び、生前の思い出を語り合う温かい場ですが、「どんな服装で参加すればいいのだろう?」と悩む方も多いのではないでしょうか。
一般的な葬儀とは異なり、明確なルールがないことも多いため、葬儀後のお別れ会における服装マナーは特に気になるポイントですよね。
この場で失礼なく、かつ故人やご遺族に寄り添う気持ちを表すためには、どのような服装を選べば良いのか。
この記事では、お別れ会の趣旨を踏まえ、参加する際の服装について詳しく解説していきます。
会場の雰囲気や自身の立場なども考慮した、適切な服装選びのヒントを見つけていただければ幸いです。
お別れ会とは?葬儀との違いと服装の基本
故人を見送る儀式として、まず葬儀や告別式が執り行われます。
しかし、近年では葬儀後にも改めて「お別れ会」や「偲ぶ会」といった形式で、故人を偲ぶ場を設けることが増えてきました。
このお別れ会は、葬儀とは異なる趣旨で行われることが多く、それに伴い服装のマナーも少し変わってきます。
まずはお別れ会がどのような場なのかを理解し、服装の基本的な考え方を押さえておきましょう。
お別れ会は、宗教的な儀式として行われる葬儀とは異なり、故人の友人や知人が中心となって故人を偲び、別れを惜しむことを目的とした会です。
形式も様々で、ホテルやレストラン、故人のゆかりの場所などで開催されることが多く、立食形式であったり、故人の好きだった音楽を流したり、思い出の写真を飾ったりと、故人らしさを反映した自由なスタイルで行われる傾向にあります。
そのため、葬儀のような厳格な礼服が求められることは少なく、案内状に「平服でお越しください」と記載されている場合がほとんどです。
この「平服」という言葉が、多くの方を悩ませる原因となるのですが、お別れ会における平服は、決して普段着やカジュアルな服装を指すわけではありません。
故人を偲ぶ気持ちを表し、会場にふさわしい、落ち着いた服装を心がけることが基本となります。
葬儀とは異なる「お別れ会」の趣旨
葬儀は、故人の冥福を祈り、社会的な手続きとしての意味合いが強い儀式です。
一般的には仏式、神式、キリスト教式など、宗教に則った形式で行われます。
参列者は喪服や準礼服といった格式の高い服装を着用し、厳粛な雰囲気の中で執り行われます。
一方、お別れ会や偲ぶ会は、故人をよく知る人々が集まり、故人の生前の功績を称えたり、思い出を語り合ったりすることで、故人との別れを受け止め、故人を偲ぶことに重きを置いた会です。
宗教的な儀式としての側面は薄く、自由な形式で行われることが多いのが特徴です。
例えば、故人が音楽好きだった場合はジャズの生演奏があったり、美食家だった場合は故人の好きだった料理が振る舞われたりすることもあります。
このように、お別れ会は故人の人となりや生前の想いを反映した、比較的自由で温かい雰囲気の場となる傾向があります。
そのため、参列者も葬儀のような厳格な服装ではなく、故人を偲ぶ気持ちを大切にしつつ、会場の雰囲気に合わせた服装を選ぶことが求められます。
案内状に「平服で」と書かれているのは、まさにこのようなお別れ会の趣旨を反映していると言えるでしょう。
服装の基本原則「平服」が意味するもの
お別れ会の案内状でよく見かける「平服でお越しください」という言葉。
これは、「普段着で構いません」という意味ではありません。
お別れ会における平服とは、略喪服(インフォーマル)やそれに準ずる、控えめで落ち着いた服装を指します。
具体的には、男性であればダークカラー(黒、紺、グレーなど)のスーツに白いシャツ、落ち着いた色合いのネクタイを着用するのが一般的です。
女性であれば、黒、紺、グレー、濃いブラウンなどのワンピースやアンサンブル、スーツ、パンツスタイルなどが適しています。
柄物は避けるか、目立たない控えめなものを選びましょう。
アクセサリーは控えめに、パールのネックレスやイヤリングなどが無難です。
靴は黒のシンプルな革靴やパンプスを選び、光沢のあるものや派手なデザインのものは避けましょう。
バッグも小ぶりで地味な色のものを選びます。
このように、お別れ会での「平服」は、葬儀の喪服ほど堅苦しくはないけれど、故人を偲ぶ場にふさわしい、品格と落ち着きのある装いを意味します。
迷った場合は、ダークカラーを基調とした、ビジネスシーンでも失礼にあたらない程度の服装をイメージすると良いでしょう。
ただし、会場の格式や遺族からの案内に合わせて、少しカジュアルダウンしても良い場合もあります。
例えば、故人がカジュアルな方を好む方で、会場もレストランやカフェなどであれば、ブラウスに落ち着いた色のスカートやパンツといった組み合わせでも問題ないこともあります。
重要なのは、故人を偲ぶ気持ちを第一に考え、場にふさわしい配慮をすることです。
男女別・立場別に見るお別れ会の服装マナー
お別れ会での服装は、性別や自身の立場によっても適切なスタイルが異なります。
男性はスーツスタイル、女性はワンピースやアンサンブルが一般的ですが、それぞれに押さえておきたいポイントがあります。
また、故人との関係性や参加する立場(親族、友人、会社関係者など)によっても、服装に求められる「平服」の度合いが微妙に変わってくる場合があります。
ここでは、男女それぞれの基本的な服装に加え、立場による配慮についても詳しく見ていきましょう。
自身の状況に合わせて、失礼なく、かつ故人を偲ぶ気持ちを適切に表せる服装選びの参考にしてください。
男性の場合は、ダークカラーのスーツが基本となりますが、ネクタイやシャツの色、靴などの小物にも配慮が必要です。
女性の場合は、様々な選択肢がありますが、露出の多いものや派手なデザインは避けるのが鉄則です。
親族として参加する場合と、友人や会社の同僚として参加する場合では、求められる服装の格式が異なることもあります。
これらの点を理解しておくことで、お別れ会という場にふさわしい、心遣いの行き届いた装いをすることができます。
男性編:スーツスタイルと小物選びのポイント
男性がお別れ会に参加する場合の服装は、ダークカラーのスーツ(ブラックスーツ、濃紺、チャコールグレーなど)が最も一般的で無難な選択肢です。
ビジネススーツとして着ているものでも、色が落ち着いていれば問題ありません。
シャツは白無地のものを選びましょう。
柄物や色物のシャツは避けるべきです。
ネクタイは、葬儀で着用するような光沢のない黒無地のものを選ぶのが最も丁寧ですが、お別れ会の趣旨によっては、落ち着いた色合い(濃いグレー、濃紺など)の無地や、目立たない控えめな柄(織柄など)のものでも良いとされています。
ただし、明るい色や派手な柄、キャラクターものは避けましょう。
靴は黒の革靴を選びます。
ストレートチップやプレーントゥといったシンプルなデザインのものが適しています。
エナメル素材などの光沢が強いものや、スエードなどのカジュアルな素材のものは避けるのがマナーです。
靴下は黒無地のビジネスソックスを着用します。
ベルトも靴の色に合わせて黒を選び、シンプルなデザインのものにします。
アクセサリーは結婚指輪以外は原則として外すのがマナーです。
時計は派手なデザインや色のものは避け、シンプルで控えめなものを選びましょう。
ポケットチーフは通常は不要です。
バッグを持つ場合は、ビジネスシーンでも使えるような、落ち着いた色の革製や布製のブリーフケースなどが適しています。
女性編:ワンピースやアンサンブル、パンツスタイル
女性がお別れ会に参加する場合の服装は、黒や濃紺、チャコールグレー、濃いブラウンといったダークカラーのワンピース、アンサンブル(ワンピースとジャケットの組み合わせ)、スーツ、パンツスタイルが一般的です。
露出の多いデザイン(ノースリーブ、ミニスカート、胸元が大きく開いたものなど)は避け、袖のあるものか、ジャケットやカーディガンなどを羽織るようにしましょう。
スカート丈は膝が隠れるか、膝丈程度のものが適切です。
パンツスタイルの場合は、ワイドパンツやテーパードパンツなど、きちんと感のあるデザインを選びます。
素材は、光沢のない、ウール、ジョーゼット、ポリエステルなど、落ち着いたものを選びます。
レースやシフォン素材でも、派手すぎず、全体的に落ち着いた印象であれば問題ありません。
アクセサリーは控えめに、パールのネックレスやイヤリングが定番で最も無難です。
一連のものが良いとされていますが、二連でも派手すぎなければ許容される場合もあります。
ゴールドやプラチナなど光沢のあるアクセサリーは避けましょう。
結婚指輪はつけていて構いません。
バッグは小ぶりなハンドバッグやクラッチバッグを選び、色は黒や濃紺、グレーなど、服装と同系色の落ち着いたものが適しています。
布製でも革製でも構いませんが、光沢のある素材や派手な装飾のあるものは避けます。
靴は黒のシンプルなパンプスを選びます。
ヒールが高すぎず、安定感のあるものが良いでしょう。
ブーツやミュール、サンダル、スニーカーなどは避けるのがマナーです。
ストッキングは肌色か黒のものを着用します。
黒のストッキングは喪服に準じたより丁寧な印象になります。
親族、友人、会社関係者など立場による配慮
お別れ会の服装マナーは、参加する故人との関係性や自身の立場によっても、求められるフォーマル度が異なる場合があります。
一般的に、親族として参加する場合は、友人や会社関係者よりも少し丁寧な服装を心がけるのが無難です。
特に、喪主や遺族に近い立場であれば、略喪服に近い、より落ち着いたダークカラーの服装を選ぶことが多いでしょう。
例えば、男性であればブラックスーツに黒無地のネクタイ、女性であれば黒のワンピースにジャケットといったスタイルです。
一方、友人や会社関係者として参加する場合は、「平服」の範囲内で、会場の雰囲気や故人の人柄に合わせて少し幅を持たせることが可能です。
例えば、故人がカジュアルな方を好む方で、レストランでの立食形式のお別れ会であれば、男性はダークカラーのジャケットにパンツ、女性は落ち着いた色のブラウスにスカートやパンツといった、ビジネスシーンよりも少しソフトな装いでも良い場合があります。
しかし、これはあくまで会場や案内に応じた判断であり、迷った場合はダークカラーのスーツやワンピースといった、よりフォーマルに近い服装を選ぶ方が失礼がありません。
共通して言えるのは、どのような立場であっても、故人を偲ぶ気持ちを第一に考え、華美な服装やカジュアルすぎる服装は避けるということです。
案内状に「平服で」と書かれていても、その場の雰囲気や他の参加者の服装を考慮して、適切な装いを心がけることが大切です。
季節や会場に合わせた服装の選び方と注意点
お別れ会は、開催される時期や場所によって、服装選びにも工夫が必要になります。
特に季節に応じた服装は、体調管理の面からも重要なポイントです。
また、ホテル、レストラン、故人の自宅など、会場によって雰囲気や格式が異なるため、それに合わせた服装を選ぶことも大切です。
ここでは、季節ごとの服装の工夫や、会場別の注意点、そしてお別れ会で避けるべき服装について具体的に解説します。
これらの点を踏まえることで、どのような状況でも故人を偲ぶ場にふさわしい、適切で心地よい服装を選ぶことができるでしょう。
暑い時期には涼しさを保ちつつ失礼のない装いを、寒い時期には暖かさを確保しながら着膨れしない工夫が必要です。
会場の雰囲気は、案内状やウェブサイトなどで確認することができます。
また、お別れ会には、葬儀以上に避けるべき服装や持ち物があります。
これらを事前に把握しておくことで、当日慌てることなく、安心して参加することができます。
暑い時期・寒い時期の服装の工夫
お別れ会が夏場に行われる場合、暑さ対策は必須ですが、Tシャツや短パン、サンダルといったカジュアルすぎる服装はNGです。
男性は、夏用の薄手のスーツや、ジャケットを着用し、会場内ではジャケットを脱いでも良いか確認すると良いでしょう。
シャツは夏用の素材(クールマックスなど)を選び、汗対策をしっかり行います。
女性は、夏用の薄手のワンピースや、風通しの良い素材のアンサンブルなどが適しています。
袖はあった方が丁寧ですが、ノースリーブの場合は必ずジャケットやカーディガンを羽織ります。
素材はリネン混なども良いですが、シワになりにくいものを選ぶと綺麗に着られます。
足元は素足ではなく、肌色や黒のストッキングを着用します。
冬場に行われる場合は、寒さ対策としてコートやマフラー、手袋などが必要になりますが、会場に入る前に脱ぐのがマナーです。
会場内では、ウール素材などの暖かい素材のスーツやワンピース、アンサンブルを選びます。
男性はインナーに暖かい肌着を着用したり、ベストを着用したりするのも良いでしょう。
女性は、厚手のタイツを着用しても構いませんが、色は黒を選びます。
カイロを使用する際は、外から見えないように配慮しましょう。
どちらの季節でも、体温調節ができるように、重ね着しやすい服装を選ぶと便利です。
例えば、ジャケットの下にカーディガンを重ねたり、薄手のストールを持参したりするなど、会場の空調に合わせて調整できる工夫をすると良いでしょう。
ホテルやレストランなど会場による違い
お別れ会が開催される会場によって、服装に求められる格式は異なります。
ホテルや格式の高いレストランで行われる場合は、よりフォーマルな服装が求められる傾向があります。
男性はダークカラーのスーツに黒無地のネクタイ、女性は黒や濃紺のワンピースやスーツといった、略喪服に近い、より丁寧な服装を心がけるのが無難です。
アクセサリーも控えめに、パールのみとするのが一般的です。
一方、カジュアルなレストランやカフェ、故人の自宅などで行われる場合は、案内状に「平服で」とあれば、少しカジュアルダウンした服装でも許容される場合があります。
例えば、男性はダークカラーのジャケットに落ち着いた色のパンツ、女性はブラウスに落ち着いた色のスカートやパンツといった、ビジネスシーンよりは少し柔らかい印象の服装でも良いでしょう。
ただし、これは会場の雰囲気や遺族の意向によるため、迷った場合は無難なダークカラーのスーツやワンピースを選ぶのが安心です。
会場のウェブサイトを確認したり、案内状に特別な指示がないか注意深く読んだりすることで、会場の雰囲気を事前に把握し、適切な服装を選ぶ手助けになります。
避けるべき服装と持ち物のマナー
お別れ会では、「平服で」と案内されていても、故人を偲ぶ場にふさわしくない服装は避けるべきです。
具体的には、派手な色や柄の服装、露出の多い服装(ミニスカート、ノースリーブ、胸元が開いた服など)、カジュアルすぎる服装(Tシャツ、ジーンズ、スウェット、サンダル、スニーカーなど)は避けましょう。
毛皮製品やアニマル柄も、殺生を連想させるため弔事には不適切とされています。
光沢の強い素材や、華美な装飾(スパンコール、大きなフリルなど)のある服装も避けるべきです。
アクセサリーは、光るものや揺れるもの、派手なデザインのものは避け、控えめなパールやシルバーのシンプルなものを選びましょう。
バッグも、ブランドロゴが大きく入ったものや、明るい色、派手なデザインのものは避けるのがマナーです。
持ち物についても、葬儀で必須とされる数珠や香典は、お別れ会では必要ない場合が多いです。
特に会費制の場合は香典は不要です。
案内状に持ち物についての指示がないか確認しましょう。
基本的に、お別れ会は故人を偲ぶ場であり、派手さや華やかさを競う場ではありません。
故人やご遺族への配慮を忘れず、控えめで落ち着いた服装と立ち居振る舞いを心がけることが最も大切です。
まとめ
葬儀後の「お別れ会」や「偲ぶ会」は、故人を偲び、生前の思い出を語り合うための大切な場です。
案内状に「平服で」と記載されていることが多く、その服装選びに悩む方もいらっしゃいますが、決して普段着を指すわけではありません。
お別れ会における「平服」とは、略喪服やそれに準ずる、控えめで落ち着いた服装を意味します。
男性はダークカラーのスーツに白いシャツ、落ち着いた色合いのネクタイ。
女性は黒や濃紺などのワンピース、アンサンブル、スーツ、パンツスタイルが基本となります。
露出の多いデザインや派手な色・柄、光沢のある素材、毛皮製品などは避けるべきです。
最も重要なのは、故人を偲ぶ気持ちを第一に考え、場にふさわしい配慮をすることです。
会場の雰囲気や故人との関係性、案内状の指示などを考慮し、失礼のない服装を心がけましょう。
アクセサリーは控えめに、バッグや靴も落ち着いたものを選びます。
季節に応じた素材や重ね着の工夫も大切です。
この記事で解説したポイントを参考に、お別れ会という故人との最後の時間を穏やかに過ごすための、適切な服装選びをしていただければ幸いです。