大切な方が亡くなられたとき、弔いの気持ちを伝えるために準備するのが香典です。
香典には故人への弔意と、遺されたご家族への経済的な助け合いという意味が込められています。
その香典を包む際、「お札の入れ方って、どうすればいいんだっけ?」と迷う方は少なくありません。
特に葬儀香典お札の入れ方正しい向きについては、普段あまり意識しないことだけに、いざという時に不安になるものです。
この記事では、香典のお札に関する正しいマナーについて、向きや折り方、新札・旧札の選び方、複数枚の場合の注意点まで、分かりやすく丁寧にご説明します。
故人への敬意とご遺族への配慮を示すための大切な作法ですので、ぜひ最後までお読みいただき、いざというときに慌てず準備できるよう参考にしてください。
葬儀の香典、お札の正しい向きと基本的な入れ方
香典を準備する際に、まず多くの方が疑問に思われるのが、お札を香典袋にどのように入れるかという点です。
特に「お札の向き」については、慶事とは異なるため、「これで合っているのかな?」と不安になりやすいポイントでしょう。
ここでは、香典におけるお札の正しい向きと、その根拠となる考え方について詳しく解説します。
お札の向き一つにも、故人への弔意を表す大切な意味が込められているのです。
香典で一番気になる「お札の向き」の正解
香典に入れるお札の向きには、明確なマナーが存在します。
結論から言いますと、香典ではお札の肖像画が印刷されている面を、香典袋の裏側に向けて入れるのが正しい向きとされています。
つまり、香典袋の表側から透かして見たときに、お札の肖像画が見えない状態になっているのが正解です。
これは、悲しみの中で故人との別れを惜しむ気持ちや、急な不幸で慌てて駆けつけたという気持ちを表すためと言われています。
慶事であるお祝い事では、お札の肖像画を表に向けて喜びを表すのとは対照的です。
この向きを間違えないようにすることが、香典を包む上での最初の、そして最も大切なステップと言えるでしょう。
お札の裏表、肖像画はどっち?
お札の向きを正しく理解するためには、「お札の裏表」と「肖像画の位置」を確認しておく必要があります。
日本のお札は、通常、肖像画が印刷されている面が「表」と見なされます。
例えば、一万円札であれば福沢諭吉、五千円札であれば樋口一葉、千円札であれば野口英世の顔が印刷されている側が表です。
そして、肖像画が印刷されていない、建物などが描かれている面が「裏」とされます。
香典に入れる際は、この肖像画がある「表」の方を、香典袋の裏側(金額や住所を書く側)に向けるのがマナーです。
つまり、香典袋を表から見たときに、お札の裏面が見えるような状態になります。
悲しみを表すお札の「折り方」
香典では、お札を折って入れるのが一般的です。
この折り方にも、悲しみを表す意味合いが込められています。
基本的には、お札を一度だけ折る「二つ折り」が最も一般的で丁寧な方法とされています。
折り方としては、まずお札を表(肖像画のある方)が上になるように置きます。
次に、お札の下側を上に向けて折ります。
このとき、肖像画が内側になるように折るのがポイントです。
つまり、肖像画が見えないように折り込みます。
さらに、地域や慣習によっては、お札を三つ折りにする場合もありますが、二つ折りが最も広く行われている作法と言えるでしょう。
お札を折ることで、「予期せぬ出来事でした」「急なことで準備が十分でありませんでした」という気持ちを表すとも言われています。
なぜこの向き・折り方をするのか?その理由
香典でお札を裏向きに、そして折って入れるという作法には、深い意味があります。
まず、お札を裏向き(肖像画を袋の裏側に向ける)にするのは、故人への弔意を表し、悲しみで顔を伏せている様子を象徴しているという考え方が一般的です。
また、お札を折るのは、不幸が突然訪れたことへの驚きや、十分に準備する時間がなかったという気持ちを表すためと言われています。
きれいにピン札をそのまま入れるのは、慶事の際に喜びを表現する方法であり、不幸を前もって準備していたかのような印象を与えかねません。
そのため、悲しみを共有し、慌てて駆けつけたという気持ちを示すために、お札は裏向きに、そして折って入れるのが正しいマナーとされているのです。
これらの作法は、単なる形式ではなく、故人や遺族への心遣いを示す大切な行為なのです。
香典のお札は「新札」?複数枚の入れ方は?
香典のお札について、向きや折り方と並んでよく耳にする疑問が、「新札を使ってもいいのか?」という点です。
また、包む金額によっては複数枚のお札を入れることになりますが、その場合の入れ方にもマナーがあります。
ここでは、香典にふさわしいお札の種類と、複数枚のお札を包む際の注意点について詳しく解説します。
正しい知識を持っておくことで、失礼にあたることなく、故人への弔意を適切に伝えることができるでしょう。
香典に新札を使ってはいけない理由と急な場合の対処法
香典では、基本的に新札を使用しないのがマナーとされています。
その理由は、「不幸を予期して、あらかじめ用意周到に準備していた」という印象を与えてしまうことを避けるためです。
お葬式は突然の出来事であり、参列者は急いで駆けつけるものです。
そのため、香典に使うお札も、普段流通しているような、ある程度使用感のある旧札を使うのが良いとされています。
しかし、手元に新札しかないという場合もあるでしょう。
その場合は、新札を一度折ってから戻すことで、意図的に使用感を持たせるという対処法があります。
例えば、お札を横にして真ん中で一度折り、すぐに元に戻すといった簡単な方法で構いません。
こうすることで、新札特有のピンとした状態を避け、「急なことで新札しか用意できませんでした」という気持ちを表すことができます。
ただし、あまりにも破れていたり汚れていたりするお札は失礼にあたるため、避けるようにしましょう。
複数枚のお札を香典に入れる場合の注意点と重ね方
香典に複数枚のお札を入れる場合も、向きや折り方については同様です。
すべてのお札を同じ方向(肖像画が袋の裏側を向くように)に揃えて入れます。
そして、複数枚のお札は向きを揃えた上で重ねて、まとめて折って中袋に入れます。
このとき、重ねる順番に厳格な決まりはありませんが、一般的には金額の大きいお札を一番上に重ねるのが自然です。
例えば、1万円札が数枚と千円札が数枚の場合、1万円札を上に重ね、その下に千円札を重ねるようにします。
すべてのお札の向きを揃え、肖像画が内側になるように二つ折りにしてから中袋に納めましょう。
金額に応じたお札の枚数と数え方
香典の金額は、故人との関係性や自身の年齢などによって異なりますが、包む金額によってお札の枚数も変わってきます。
例えば、5千円を包む場合は五千円札1枚、1万円を包む場合は一万円札1枚が基本ですが、3千円の場合は千円札3枚、5千円を千円札5枚で包む、といったケースもあります。
複数枚になる場合、お札を数える際には、中袋に金額を記載するのがマナーです。
金額は旧字体(大字)で記載するのがより丁寧とされています。
例えば、壱万円(一万円)、伍千円(五千円)、参千円(三千円)のように記載します。
複数枚のお札を数える際は、誰が見ても分かりやすいように、金額を正確に記載することが重要です。
また、お札の枚数が多くなりすぎると、中袋が膨らんでしまい、香典袋全体の形が崩れてしまう可能性があります。
金額にもよりますが、可能な限り枚数が少なくなるように、高額紙幣を組み合わせることも考慮すると良いでしょう。
例えば、3万円を包む際に千円札30枚ではなく、1万円札3枚で包む方がスマートです。
香典袋への入れ方と渡すときのマナー、その他注意点
お札の準備ができたら、いよいよ香典袋に包みます。
香典袋には、中袋と外袋があるのが一般的です。
それぞれのお札の入れ方や、香典袋の書き方、そして受付で香典を渡す際のマナーについても確認しておきましょう。
香典袋の扱い方や渡し方にも、故人への弔意とご遺族への配慮を示す大切な作法が含まれています。
中袋へのお札の入れ方と中袋の書き方
お札は、まず中袋に入れます。
先ほど解説したように、お札はすべて向きを揃え、肖像画が内側になるように二つ折りにしてから中袋に納めます。
このとき、中袋の表側(金額を書く側)から見て、お札の裏面(肖像画がない方)が見えるように入れるのが正しい向きです。
中袋の表面には、包んだ金額を記載します。
金額は縦書きで、先ほど述べたように旧字体(大字)で書くのが丁寧です。
例えば、「金 壱萬円也」のように書きます。
裏面には、差出人の住所と氏名を記載します。
郵便番号や電話番号も記載しておくと、ご遺族が香典返しなどの手続きをする際に便利です。
住所は都道府県から正確に、氏名もフルネームで記載します。
夫婦連名で出す場合や、会社の代表として出す場合など、書き方にはいくつかパターンがありますが、基本的には誰からの香典か、いくら包んだのかが明確に分かるように丁寧に記載することが重要です。
外袋への入れ方と袱紗の使い方
お札を中袋に納め、必要事項を記載したら、その中袋を外袋に納めます。
外袋には表書き(御霊前など)と氏名が印刷または手書きされています。
中袋を外袋に入れる際は、中袋の表側(金額を書いた側)が、外袋の表側(表書きのある側)を向くように入れます。
こうすることで、ご遺族が香典袋を開けた際に、すぐに金額と差出人を確認できるようになります。
香典袋は、そのまま持ち歩くのではなく、必ず「袱紗(ふくさ)」に包んで持ち運びます。
袱紗は、香典袋が汚れたり折れたりするのを防ぎ、弔意を丁重に表すためのものです。
香典に使う袱紗の色は、紺色、緑色、灰色、紫色などが一般的です。
紫色の袱紗は慶弔どちらにも使えるため便利です。
袱紗への包み方にも作法があり、弔事の場合は左開きになるように包みます。
受付で香典を渡すときのマナーと渡し方の工夫
葬儀会場に到着したら、受付で香典を渡します。
香典は、袱紗から取り出し、相手から見て表書きが正面になるように向きを変えて渡します。
このとき、袱紗の上に香典袋を乗せたまま渡すのが最も丁寧な渡し方です。
受付の方に「この度は心よりお悔やみ申し上げます」といった弔いの言葉を述べながら、一礼して両手で差し出します。
もし袱紗を忘れてしまった場合は、ハンカチなどで代用するか、何も包まずに香典袋だけを渡すことになりますが、袱紗に包んで渡すのが正式なマナーです。
また、香典を渡すタイミングは、受付で記帳を済ませた後が一般的です。
事前に香典袋の準備を済ませておき、受付ではスムーズに渡せるようにしておきましょう。
これらの一連の動作を通して、故人への最後の敬意と、ご遺族への深いお悔やみの気持ちを伝えることができるのです。
まとめ
葬儀の香典は、故人への弔意とご遺族への心遣いを形にする大切なものです。
特に葬儀香典お札の入れ方正しい向きについては、普段あまり意識しないことだけに、いざという時に迷いがちですが、そこには深い意味が込められています。
お札は肖像画を袋の裏側に向けて入れ、悲しみを表すために一度折るのが基本的なマナーです。
また、新札は避け、急な場合は一度折ってから入れるといった配慮も大切です。
複数枚のお札を包む際は、向きを揃えて重ね、中袋に金額と住所氏名を正確に記載します。
香典袋は袱紗に包んで持ち運び、受付では丁寧に両手で渡すのが正式な作法です。
これらのマナーは、単なる形式ではなく、故人や遺族に対する敬意と思いやりの表れです。
この記事が、皆様が安心して弔いの気持ちを伝えるための一助となれば幸いです。
大切なのは形だけでなく、故人を偲び、ご遺族を気遣う心持ちです。