葬儀後の弔問は、故人を偲び、ご遺族へお悔やみを伝える大切な機会です。
しかし、葬儀の時とは異なり、「いつもの喪服で良いのか？」「具体的にどのような服装が適切なのか？」と迷ってしまう女性は少なくありません。
特に、四十九日を過ぎてからの弔問や、ご自宅に伺う場合など、状況に応じた服装選びには配慮が必要です。
この記事では、葬儀後の弔問における女性の服装選びについて、基本マナーから具体的なアイテム、急な弔問への対応まで、分かりやすく解説します。
適切な服装で心穏やかに弔問を済ませるためのポイントを紹介するので、ぜひ参考にして、失礼のない装いを心がけましょう。
葬儀後の弔問、その服装はいつもの喪服で大丈夫？
弔問にふさわしい服装の基本を押さえましょう
故人様がお亡くなりになった直後や、まだ葬儀・告別式が終わって間もない時期に弔問する場合、基本的には葬儀に参列する際に着用する「喪服」に近い服装が望ましいとされています。
これは、ご遺族がまだ深い悲しみの中にいらっしゃるため、弔意を示すとともに、華美な服装で不謹慎な印象を与えないための配慮です。
具体的には、黒色のワンピースやアンサンブル、またはブラックスーツなどが適しています。
ただし、葬儀ほど形式張る必要はなく、「略喪服」と呼ばれる、より普段使いに近い地味な服装でも問題ありません。
大切なのは、故人様への哀悼の意と、ご遺族への心遣いを服装で表現することです。
黒や濃い紺、チャコールグレーといった地味な色を選び、露出の少ないデザインを心がけましょう。
例えば、袖は長袖か七分袖、スカート丈は膝が隠れるくらいの長さが良いでしょう。
派手な装飾や明るい色の服は避け、落ち着いた印象を与えることが基本です。
弔問は、ご遺族が落ち着かれた頃を見計らって伺うのが一般的ですが、急な訃報を受けてすぐに伺う場合もあります。
そのような状況でも、できる限り地味で控えめな服装を選ぶことがマナーです。
時期によって変わる服装の考え方（四十九日、一周忌など）
弔問の服装は、故人様がお亡くなりになってからの経過期間によって考え方が少しずつ変わってきます。
特に大きな区切りとなるのが「四十九日」です。
四十九日までは、まだ「忌中」とされる期間であり、ご遺族も喪に服している時期です。
この期間に弔問する場合は、前述したように略喪服、つまり黒や濃い紺などの地味な色合いのワンピースやアンサンブル、スーツなどが適切です。
たとえご遺族から「平服でどうぞ」と言われたとしても、この時期は「平服」＝「略喪服」と解釈するのが一般的です。
普段着で伺うのは失礼にあたります。
四十九日を過ぎると、「忌明け」となります。
この時期以降の弔問や、一周忌、三回忌といった年忌法要に招かれた場合の服装は、四十九日までとは少し考え方が変わります。
ご遺族から「平服でお越しください」という案内があった場合は、文字通りの普段着ではなく、略喪服やそれに準ずる地味な服装で問題ありません。
例えば、黒や濃いグレー、紺などの地味な色のスーツや、ブラウスに地味な色のスカートやパンツを合わせたスタイルなどが考えられます。
ただし、明るい色や派手な柄物、露出の多いデザインは引き続き避けるべきです。
一周忌や三回忌などの法要では、親族のみでこぢんまりと行う場合もあれば、ある程度参列者が集まる場合もあります。
参列者の顔ぶれや法要の規模によって、服装のフォーマル度は調整する必要があるかもしれません。
迷った場合は、少し改まった略喪服を選んでおけば安心です。
自宅や職場への弔問、場所による違い
弔問に伺う場所によっても、服装の選び方に少し違いが出てきます。
最も多いのは、故人様のご自宅へ伺うケースでしょう。
ご自宅への弔問は、ご遺族がまだ葬儀の疲れや悲しみの中にいらっしゃる中、お邪魔することになります。
そのため、服装は控えめであることに加え、ご遺族に余計な気を使わせないような配慮が大切です。
例えば、夏場に伺う場合でも、ノースリーブなど露出の多い服装は避け、カーディガンなどを羽織るなどして肌を隠すのがマナーです。
自宅とはいえ、あくまで弔問という目的で伺っていることを忘れず、落ち着いた装いを心がけましょう。
また、靴を脱いで家に上がることも多いので、靴下やストッキングにも気を配る必要があります。
穴が開いていたり、派手な柄物だったりしないよう、シンプルなものを選びましょう。
一方、ご不幸があった方の職場へお悔やみを伝えに行く場合もあるかもしれません。
この場合は、仕事着のままで構わない場合が多いです。
ただし、可能な限り地味な色合いの服装を選び、派手なアクセサリーやメイクは控えるようにしましょう。
もし制服がある場合は、制服のままで問題ありません。
職場での弔問は、短時間で済ませることが多いため、あまりに改まった喪服で伺うとかえって相手に負担を感じさせてしまうこともあります。
状況を判断し、失礼にあたらず、かつ相手に配慮した服装を選ぶことが重要です。
弔問の服装、具体的なアイテム選びのポイント
服装の色とデザイン、どこまで許される？
弔問の服装選びで最も基本となるのは、「色」と「デザイン」です。
色は、葬儀と同様に黒が最も一般的ですが、弔問の場合は濃紺やチャコールグレーといった地味な色合いも許容されます。
これらの色は、黒ほど重すぎず、かといって明るすぎないため、弔問にふさわしい落ち着きと品位を保つことができます。
重要なのは、明るい色や派手な柄物は絶対に避けることです。
例えば、赤や黄色、青などの鮮やかな色はもちろん、花柄や大きなチェック柄なども弔事の場にはふさわしくありません。
無地、または遠目には無地に見えるような非常に細かい織り柄などが良いでしょう。
デザインに関しては、肌の露出を最小限に抑えることが重要です。
袖は長袖または七分袖、スカート丈は膝が隠れる程度の長さが基本です。
胸元が大きく開いたデザインや、体のラインを強調するようなタイトなシルエットは避けるべきです。
ワンピース、アンサンブル、スーツスタイルが一般的ですが、これらの服装は、控えめなデザインで、体型をカバーできるものを選ぶと安心です。
最近では、弔問にも使えるようなシンプルなデザインのブラウスとスカートやパンツのセットアップなども販売されています。
デザインを選ぶ際は、「華やかさ」ではなく「落ち着き」と「品位」を基準に考えましょう。
足元と手元、靴・ストッキング・バッグの選び方
服装本体だけでなく、足元と手元も弔問の場では重要なポイントです。
靴は、黒色のシンプルなパンプスが基本です。
素材は布製またはマットな革製が望ましいとされています。
エナメルやスエードなど光沢のある素材は避けるべきという意見もありますが、最近では光沢が控えめなものであれば許容されることも増えてきました。
金具や装飾の少ない、プレーンなデザインを選びましょう。
ヒールは高すぎず、歩きやすい高さ（3～5cm程度）が適しています。
ブーツやサンダル、ミュール、オープントゥの靴は弔事には不向きです。
ストッキングは、肌色のストッキングを着用するのが一般的です。
夏場でも素足は避けるのがマナーです。
黒ストッキングは喪服着用時が基本ですが、弔問でも問題ない場合が多いです。
ただし、柄物やラメ入りのものは絶対に避け、無地のものを選びましょう。
バッグは、黒色の布製またはマットな革製の小ぶりなものが適しています。
サブバッグを持つ場合は、同じく黒色の布製でシンプルなデザインのものを選びます。
光沢のある素材や派手な金具、ブランドロゴが大きく入ったものは避けるべきです。
持ち物は最小限にし、バッグに収まるようにするのが理想です。
手元、つまりネイルについても触れておきましょう。
派手なネイルアートや長い爪は避け、短く整え、透明または薄いベージュなどの控えめな色にするか、何も塗らないのが無難です。
アクセサリーやメイク、控えるべきこと
弔問の際のアクセサリーやメイクは、極力控えるのがマナーです。
アクセサリーは、結婚指輪以外は基本的にすべて外すのが無難です。
もしつける場合でも、一連のパールネックレスやパールの一粒イヤリングのみが許容される範囲です。
二連のパールネックレスは、「不幸が重なる」という連想をさせるため、弔事の場では避けるべきとされています。
ダイヤモンドやルビー、サファイアなどの色石、ゴールドやプラチナといった光り輝く素材のアクセサリーは、弔問の場にはふさわしくありません。
シンプルなデザインのパールを選ぶようにしましょう。
メイクについては、薄化粧を心がけることが重要です。
派手なアイシャドウ、チーク、口紅は避け、健康的な印象を与える程度のナチュラルメイクが望ましいです。
ノーメイクも失礼にあたる場合がありますので、最低限のベースメイクと、眉を整える、薄い色のリップを塗る程度にとどめましょう。
アイシャドウはブラウン系やベージュ系など、肌になじむ地味な色を選び、ラメやパール入りのものは避けます。
髪型も清潔感を第一に考え、顔にかからないようにまとめるのが基本です。
長い髪は一つに結ぶか、シニヨンなどでまとめます。
派手なヘアアクセサリーは避け、黒や地味な色のシンプルなものを選びましょう。
香水も、強い香りは避けるべきです。
弔問は故人を偲び、ご遺族に寄り添う場であり、自分を飾る場ではありません。
全体的に控えめで、落ち着いた印象を与えることを心がけましょう。
急な弔問や手持ちがない場合の対応
急な訪問でも失礼にならない服装の工夫
訃報は突然訪れるものです。
急な弔問に伺うことになったものの、手元に喪服や略喪服に該当する服がない、という状況も起こり得ます。
このような場合でも、慌てる必要はありません。
手持ちの服の中から、できる限り地味で控えめなものを選んで対応することが重要です。
例えば、黒や濃紺、チャコールグレー、ダークブラウンなどの地味な色のブラウスに、同じく地味な色のスカートやパンツを合わせるスタイルでも構いません。
柄物は避けるのが基本ですが、もし無地のものが全くない場合は、遠目には無地に見えるような細かい柄や、目立たない織り柄のものを選びましょう。
露出の多いデザインは避けるべきなので、例えばノースリーブの服しかない場合は、地味な色のカーディガンやジャケットを羽織るなどの工夫をします。
靴も、黒や地味な色の、なるべく装飾の少ないパンプスやローファーを選びます。
スニーカーやサンダルは避けるべきです。
バッグも、黒や地味な色の、シンプルなデザインのものを手持ちの中から選びましょう。
もし適切なバッグがない場合は、地味な色の風呂敷などで代用することも考えられます。
メイクやアクセサリーも、前述のマナーに従い、極力控えるようにします。
急な弔問の場合、服装が完璧でなくても、故人を偲び、ご遺族を気遣う気持ちが何よりも大切です。
ただし、できる限りの配慮は示すようにしましょう。
もしもの時のために準備しておきたいアイテム
急な弔問や、いざという時に慌てないためにも、普段からいくつか準備しておくと安心なアイテムがあります。
特に女性の場合、地味な色のカーディガンやジャケットは、急な訃報に対応する上で非常に役立ちます。
例えば、仕事帰りや外出先から直接弔問に伺うことになった場合でも、普段着の上に地味な色のカーディガンやジャケットを羽織るだけで、ある程度落ち着いた印象を与えることができます。
色は黒や濃紺、グレーなどがおすすめです。
また、黒または濃紺のストッキングも、急な弔問に備えてバッグや職場のデスクに一つ入れておくと安心です。
夏場でも素足での弔問はマナー違反となるため、ストッキングは必須アイテムと言えます。
さらに、シンプルな黒いバッグも一つ用意しておくと便利です。
普段使いもできるような、装飾の少ない、マットな素材の小ぶりなバッグを選んでおけば、急な弔問だけでなく、様々なフォーマルな場面でも役立ちます。
これらのアイテムを常備しておくことで、予期せぬ訃報に際しても、最低限のマナーを守った服装で弔問に伺うことが可能になります。
もちろん、最も良いのは略喪服一式を準備しておくことですが、それが難しい場合でも、これらのアイテムがあれば心強い味方となります。
まとめ
葬儀後の弔問における女性の服装は、故人を偲び、ご遺族に寄り添う気持ちを表す大切な要素です。
葬儀とは異なり、弔問の時期や場所、ご遺族との関係性によって適切な服装は少しずつ変わってきますが、基本となるのは「控えめであること」と「故人様への哀悼の意を示すこと」です。
具体的には、黒や濃紺、チャコールグレーなどの地味な色合いを選び、肌の露出が少ないデザインの服を選ぶことが重要です。
四十九日までは略喪服に近い装いを、それ以降は「平服」として略喪服に準ずる地味な服装を心がけましょう。
自宅への弔問では、より控えめでご遺族に配慮した服装を、職場での弔問では仕事着でも構わない場合があるものの、できる限り地味な色合いを選ぶことが望ましいです。
靴やバッグ、アクセサリー、メイクについても、光沢のあるものや派手な装飾、明るい色は避け、落ち着いた印象を与えるアイテムを選びます。
急な弔問で手持ちがない場合でも、地味な色の服を選び、カーディガンなどを羽織ることで対応可能です。
日頃から地味な色のカーディガンや黒ストッキング、シンプルな黒いバッグなどを準備しておくと、いざという時に慌てずに済みます。
弔問は形式だけではなく、故人様への感謝の気持ちや、悲しみの中にいるご遺族への心遣いを伝える場です。
適切な服装で、心穏やかに故人様を偲び、ご遺族に寄り添うことが何よりも大切です。
この記事が、あなたの弔問時の服装選びの一助となれば幸いです。
