葬儀後の弔問で失礼にならない持ち物選び

和菓子の詰め合わせ、カタログギフト、リボン付きのタオルなどが温かみのある背景に並べられているギフトセットのイラスト。上品で落ち着いた雰囲気が感じられる。

葬儀を終え、少し落ち着いた頃にご自宅へ弔問に伺う機会があるかもしれません。
故人を偲び、ご遺族にお悔やみの気持ちを伝える大切な弔問ですが、「何を持って行けば失礼にならないだろうか」「どんなものを選べば喜ばれるのだろうか」と、持ち物について悩んでしまう方も多いのではないでしょうか。
特に、近年は葬儀の形式も多様化しており、昔ながらの習慣にとらわれすぎるとかえってご遺族に負担をかけてしまう可能性もあります。
この記事では、葬儀後の弔問で失礼にならない持ち物選びのポイントを、具体的な例を交えながら詳しく解説します。
故人への敬意とご遺族への心遣いが伝わる、適切な持ち物を選ぶための一助となれば幸いです。

目次

葬儀後の弔問における持ち物の基本マナー

葬儀後の弔問は、故人を偲び、ご遺族に寄り添う大切な機会です。
その際に持参する持ち物には、故人への供養の気持ちと、ご遺族への慰めの気持ちが込められています。
持ち物を選ぶ上でまず押さえておきたいのは、形式よりも「気持ち」が大切だということです。
高価なものを用意する必要はありませんし、無理をする必要もありません。
大切なのは、故人を偲び、ご遺族を気遣う心です。
ここでは、弔問時の持ち物として一般的な香典やお供え物について、基本的な考え方とマナーをお伝えします。
これらの基本を踏まえた上で、ご自身の状況や故人・ご遺族との関係性を考慮して、最適な持ち物を選んでいきましょう。

香典の準備と金額の目安

弔問時の持ち物として最も一般的とされるのが香典です。
香典は、お線香やお花代として故人の霊前にお供えする意味合いと、葬儀に関わる急な出費に対する相互扶助の意味合いを持っています。
香典を持参する場合、まずは不祝儀袋を用意します。
仏式であれば白黒または双銀の結び切りの水引がかかったものを選び、表書きは「御仏前」(四十九日以降)や「御霊前」(四十九日まで)とします。
薄墨の筆や筆ペンで丁寧に書きましょう。
金額は、故人やご遺族との関係性、ご自身の年齢によって一般的な目安があります。
例えば、親しい友人や知人であれば5千円から1万円程度、親族であれば1万円から10万円以上と幅があります。
特に近しい親族の場合は、事前に相談して金額を決めることも珍しくありません。
大切なのは、故人との関係性を考慮し、無理のない範囲で気持ちを包むことです。
また、偶数の金額は避けるのが一般的ですが、1万円は例外とされることが多いです。
香典を渡す際は、袱紗(ふくさ)に包んで持参し、受付や仏前で袱紗から取り出して両手で丁寧に渡すのが正式なマナーとされています。

お供え物を選ぶ際の心遣い

香典とともにお供え物を持参することも多いですが、これは必須ではありません。
香典のみ、あるいはお供え物のみでも失礼にはあたりません。
お供え物を選ぶ際は、故人が好きだったものや、日持ちするもの、個包装されているものが喜ばれる傾向にあります。
例えば、故人がお好きだったお菓子や果物、あるいは缶詰や海苔といった加工食品などが考えられます。
生花をお供えすることもありますが、後述するように手入れや処分に手間がかかる場合もありますので、ご遺族の状況を考慮して判断することが大切です。
お供え物には、のし紙をかけるのが一般的です。
仏式の場合は、白黒または黄白の結び切りの水引を用い、表書きは「御供」とします。
名前は送り主の名前をフルネームで記載します。
お供え物を選ぶ上で最も重要なのは、ご遺族への配慮です。
受け取ったご遺族が、困ることなく故人にお供えしたり分け合ったりできるようなものを選ぶ心遣いが求められます。
一例として、私が以前弔問に伺った際、ご遺族が少人数でご高齢だったため、大きな箱に入ったお菓子よりも、小さめの個包装のお菓子や、すぐに食べられる果物が大変喜ばれた経験があります。
その経験から、相手の状況を想像することの大切さを学びました。

手土産は必要か、判断のポイント

弔問時に「手土産」という名目で何かを持参すべきか悩む方もいらっしゃるかもしれません。
ここでいう「手土産」は、お供え物とは少し意味合いが異なります。
お供え物は故人の霊前にお供えするものですが、手土産はご遺族の方々への差し入れといった意味合いが強いでしょう。
結論から言うと、弔問時に改めて「手土産」を用意する必要は基本的にありません。
香典やお供え物を持参するのであれば、それで十分です。
しかし、弔問が長引いてご遺族がお茶や食事を用意してくださった場合など、何かお礼の気持ちを示したいと感じる場面もあるかもしれません。
その場合でも、改めて手土産を渡すのではなく、用意してくださったことへの感謝の言葉を丁寧に伝えることが最も大切です。
もし、どうしても何か形にしたいと考えるのであれば、日持ちするお茶菓子など、ご遺族が後でゆっくり召し上がれるようなものを選ぶのが良いかもしれません。
ただし、これはあくまで例外的な対応であり、弔問の目的は故人を偲び、ご遺族を慰めることにあることを忘れてはなりません。
形式にとらわれすぎず、その場の状況やご遺族の気持ちを最優先に考えて行動することが、何よりも大切なのです。

弔問時の持ち物で避けるべきものと注意点

弔問の持ち物を選ぶ際、どのようなものが適切かを知ることと同様に、どのようなものを避けるべきかを知ることも非常に重要です。
良かれと思って持参したものが、かえってご遺族に負担をかけてしまったり、故人への供養の気持ちとしてふさわしくないとされるものもあります。
特に、弔問はご遺族が心身ともに疲弊している時期に行われることが多いため、持ち物によってさらに負担を増やしてしまうようなことは避けたいものです。
ここでは、弔問時の持ち物として避けるべきものや、持ち物に関する注意点について詳しく解説します。
これらの点に注意することで、故人への敬意とご遺族への心遣いが、より適切に伝わるようになります。

遺族の負担になりやすいお供え物とは

お供え物は、故人への供養の気持ちを表すものですが、選び方を間違えるとご遺族の負担になってしまうことがあります。
具体的には、手入れが必要なものや、すぐに傷んでしまうもの、量が多すぎるものなどが挙げられます。
例えば、生花は美しいですが、花瓶の水の交換や枯れた後の処分が必要です。
ご遺族が忙しい時期には、こうした手入れが負担になることがあります。
また、生菓子や要冷蔵の食品なども、すぐに消費しなければならず、ご遺族の負担になる可能性があります。
大量の果物なども、食べきれずに傷んでしまうことがあるため、避けた方が無難です。
遺族が受け取った後に困ることなく、故人にお供えしたり、皆で分け合ったりできるようなものを選ぶことが、最も大切な配慮です。
私自身、以前弔問を受けた際、大きな生花をたくさんいただき、とてもありがたかったのですが、正直なところ、水替えや枯れた後の処理に追われ、心身ともに疲れている時期には少し大変だった経験があります。
その経験から、弔問する際は、日持ちするお菓子や、個包装で分けやすいものを選ぶように心がけています。
葬儀の専門家の方にお話を伺った際も、近年は遺族の負担を考慮して、日持ちするお菓子や果物を少量、または香典のみで弔問される方が増えているとのお話でした。

弔問時期や形式による持ち物の配慮

弔問の時期や、葬儀の形式によって、持ち物に関する配慮も変わってきます。
例えば、葬儀から日が浅い時期(四十九日前)に弔問する場合は、香典の表書きを「御霊前」とするのが一般的です。
一方、四十九日を過ぎてから弔問する場合は、故人の魂が仏様になったと考えられているため、香典の表書きは「御仏前」とします。
また、近年増えている家族葬や一日葬、直葬などで、ご遺族が香典やお供え物を辞退されるケースも多くあります。
事前にその旨を伺っている場合は、ご遺族の意向を尊重し、無理に香典やお供え物を持参しないことが大切です。
香典やお供え物を辞退された場合は、故人を偲ぶ気持ちを丁寧に言葉で伝え、静かに手を合わせるだけで十分な心遣いとなります。
もし、どうしても何か形にしたいという気持ちが強いのであれば、後日、仏壇にお供えできるような線香や、控えめな金額の供物料を現金書留で送るなどの方法も考えられますが、まずはご遺族の「辞退する」という意思表示を尊重することが最も重要です。
弔問のタイミングも、ご遺族の落ち着いた頃を見計らって連絡し、都合の良い日時を尋ねるのがマナーです。
突然訪問することは避けましょう。

持ち帰りを考慮したお供え物の選び方

弔問に持参したお供え物は、基本的に仏壇や祭壇にお供えされます。
その後、ご法要などで集まった親族で分け合ったり、ご遺族が少しずついただいたりするのが一般的です。
しかし、遠方から弔問に駆けつけた親族がいる場合や、ご遺族の自宅が手狭である場合など、お供え物を持ち帰ってもらう可能性も考慮して選ぶと、より親切な心遣いとなります。
持ち帰りを考慮する場合、まず軽くてかさばらないものが適しています。
また、割れ物や崩れやすいものも避けた方が良いでしょう。
個包装されていて、持ち運びやすい形状のお菓子や、瓶詰ではない加工食品などは、持ち帰っていただく際にも負担が少ないと言えます。
例えば、日持ちする焼き菓子のアソートや、小分けになったお茶、あるいは乾物などがおすすめです。
私自身、以前地方の親戚宅へ弔問に伺った際、日持ちする個包装のゼリーを持参したところ、小さくて軽いので親戚が持ち帰るのにちょうど良かったと喜ばれた経験があります。
こうした細やかな配慮が、ご遺族や集まった親族にとって、負担なく故人を偲ぶ時間につながるのです。
また、お供え物には、誰からのものか分かるように、氏名を記載したのし紙を必ずつけましょう。

持ち物以外で気をつけたい弔問時の振る舞い

弔問で故人を偲び、ご遺族を慰めるためには、持ち物だけでなく、その場での振る舞いや言葉遣いも非常に重要です。
どんなに素晴らしい持ち物を用意しても、マナーに欠ける振る舞いをしてしまっては、せっかくの心遣いが台無しになってしまいます。
弔問は、ご遺族が心身ともに疲れている時期に行われるため、相手への配慮を常に忘れないことが大切です。
ここでは、持ち物以外で弔問時に気をつけたい服装や言葉遣い、滞在時間などについて解説します。
これらの点に注意することで、故人への敬意とご遺族への心遣いが、より深く伝わる弔問となるでしょう。

服装に関する基本的な考え方

葬儀後の弔問における服装は、正式な喪服である必要はありません。
ただし、故人を偲び、ご遺族に配慮した落ち着いた服装を選ぶことが大切です。
一般的には、地味な平服で伺うのがマナーとされています。
男性であれば、ダークカラー(黒、紺、グレーなど)のスーツに白いシャツ、地味なネクタイを着用します。
女性であれば、ダークカラーのワンピースやアンサンブル、スーツなどが適切です。
いずれの場合も、光沢のある素材や華美な装飾、肌の露出が多い服装は避けるべきです。
アクセサリーも結婚指輪以外は控えるのが無難です。
靴は黒やダークカラーのシンプルなものを選び、ストッキングは黒を着用します。
派手な色や柄物は避け、全体的に落ち着いたトーンでまとめることが、故人への敬意を表す上でも、ご遺族に不快な思いをさせないためにも重要です。
また、夏場でもサンダルやミュール、露出の多い服装は避けるべきです。
冬場はコートを着用しますが、弔問宅に入る前に脱ぎ、裏返して手に持つのがマナーとされています。
服装は、弔問という厳粛な場にふさわしい、控えめなものを選ぶことを心がけましょう。

弔問時の言葉遣いと滞在時間

弔問の際には、故人へのお悔やみの言葉と、ご遺族へのお慰めの言葉を丁寧に伝えることが大切です。
言葉遣いには「忌み言葉」や「重ね言葉」など、避けるべき表現があります。
「重ね重ね」「度々」「追って」といった重ね言葉や、「死ぬ」「生きる」「苦しむ」「別れる」といった直接的な忌み言葉は避けるようにしましょう。
代わりに、「ご愁傷様でございます」「心よりお悔やみ申し上げます」「安らかなお眠りをお祈りいたします」といった言葉を用います。
故人との思い出話をする際は、明るすぎる話題や、ご遺族が辛くなるような内容は避け、故人の人柄を偲ぶような穏やかな話題を選ぶのが良いでしょう。
弔問の目的は、ご遺族を励ますことではなく、故人を偲び、ご遺族に寄り添うことです。
そのため、ご遺族の話を静かに聞き、共感を示すことが大切です。
また、弔問の滞在時間にも配慮が必要です。
ご遺族は葬儀の疲れや悲しみで心身ともに疲弊しています。
長居はせず、故人への挨拶とご遺族へのお悔やみを済ませたら、30分から1時間程度を目安に失礼するのが一般的です。
ご遺族から引き止められた場合は、少し時間を延長することもありますが、基本的には短時間で済ませることを心がけましょう。
ご遺族の様子を見て、疲れているようであれば早めに切り上げる勇気も必要です。

遺族への心温まる気遣いを形にする

弔問の持ち物やマナーは形式的なものですが、最も大切なのはご遺族への心からの気遣いです。
悲しみの中にいるご遺族にとって、弔問客の存在は時に大きな支えとなります。
持ち物や言葉遣いに加えて、何かできることはないかと考えるその気持ちこそが、最も尊い心遣いと言えるでしょう。
例えば、遠方から弔問に訪れる親族がいる場合、駅までの送迎を申し出る、あるいは小さなお子さんがいるご遺族のために、短時間だけ子供の面倒を見ることを申し出るなど、具体的なお手伝いを申し出ることも考えられます。
ただし、これはあくまで「申し出る」段階に留め、ご遺族の負担にならないように、断られても無理強いしないことが大切です。
また、後日改めて、ご遺族の様子を気遣う連絡を入れることも、長く続く心遣いとなります。
弔問は一度きりのことかもしれませんが、その後もご遺族の悲しみが癒えるまで、そっと寄り添う気持ちを持ち続けることが、故人への供養にも繋がるのではないでしょうか。
特別なことをする必要はありません。
ご遺族の状況を想像し、「今、何をして差し上げたら一番負担が少ないだろうか」「どんな言葉が心に響くだろうか」と考えるそのプロセス自体が、既に深い心遣いなのです。
形式にとらわれすぎず、ご自身の心から湧き上がる故人への想いとご遺族への労りを、無理のない範囲で形にすることが、何よりも大切なのです。

まとめ

葬儀後の弔問は、故人を偲び、ご遺族に寄り添う大切な機会です。
持ち物を選ぶ際には、故人への供養の気持ちと、ご遺族への心遣いを第一に考えることが重要です。
香典は一般的な持ち物ですが、ご遺族が辞退される場合はその意向を尊重しましょう。
お供え物を選ぶ際は、日持ちするものや個包装されているもの、量が多すぎないものなど、ご遺族の負担にならないものを選ぶ配慮が必要です。
生花や生菓子など、手入れや消費に手間がかかるものは避けた方が無難な場合があります。
また、弔問の時期や葬儀の形式によって適切な持ち物や対応が異なるため、事前に確認することが大切です。
持ち物だけでなく、弔問時の服装や言葉遣い、滞在時間といった振る舞いも、故人への敬意とご遺族への配慮を示す上で非常に重要です。
派手な服装は避け、落ち着いた平服で伺い、忌み言葉や重ね言葉を使わないよう注意しましょう。
滞在時間は短時間にとどめ、ご遺族の負担にならないように配慮します。
最も大切なのは、形式にとらわれすぎず、ご遺族の状況を思いやり、心から寄り添う気持ちです。
この気持ちがあれば、自然と適切な持ち物を選び、振る舞うことができるはずです。
この記事が、皆様が故人への敬意とご遺族への心遣いを適切に伝えるための、一助となれば幸いです。

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