突然の訃報を受け、どのように振る舞えば良いのか不安に感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
特に初めて葬儀に参列する場合や、しばらくご無沙汰していた方の葬儀に参列する場合など、葬儀の流れ参列者が知るべきマナーについて改めて確認しておきたいことは多いものです。
故人に失礼なく、そしてご遺族に寄り添う気持ちで参列するためには、基本的な流れやマナーを知っておくことが大切です。
この記事では、葬儀に参列する際に知っておくべき基本的な流れと、場面ごとの具体的なマナーについて、初めての方でも安心して参列できるよう分かりやすく解説します。
葬儀全体の流れと参列者が知るべき各儀式の役割
葬儀は、故人との最期のお別れをし、冥福を祈る大切な儀式です。
一般的には「通夜」「告別式」「火葬」という流れで進められますが、参列者としてこれらの儀式がどのような意味を持ち、どのように進行するのかを知っておくと、落ち着いて故人を見送ることができます。
現代では様々な形式の葬儀がありますが、ここでは一般的な仏式の葬儀の流れを中心に解説します。
通夜・告別式・火葬の基本的な流れと意味
まず、訃報を受けて最初に行われるのが「通夜」です。
通夜は本来、遺族や近親者が夜通し故人に寄り添い、別れを惜しむ時間でした。
現代では、仕事などで日中に参列できない方のために、夕方から夜にかけて行われることが多く、多くの方が参列する場となっています。
通夜では、読経や焼香が行われ、その後「通夜振る舞い」として食事の席が設けられることもあります。
この通夜振る舞いは、故人を偲びながら、弔問客が供養のために飲食を共にするという意味合いがあります。
次に「告別式」は、故人に最後の別れを告げ、弔いの儀式を行う場です。
僧侶による読経や弔辞、弔電の奉読、そして参列者全員での焼香が行われます。
告別式は、社会的なお別れの儀式としての側面が強く、故人の冥福を祈るとともに、生前お世話になった方々が故人に別れを告げる大切な時間です。
告別式の後には、霊柩車に故人の棺を乗せ、近親者や特に親しかった方々が同行して「火葬場」へ向かいます。
火葬場では、火葬の前に最期のお別れを行い、火葬後には遺骨を骨壺に収める「骨上げ(拾骨)」が行われます。
この一連の流れを通して、故人の魂が安らかに旅立つことを願い、遺族や参列者が故人を偲び、弔意を表します。
それぞれの儀式には故人を弔い、見送るという大切な意味が込められていることを理解しておきましょう。
参列者として心がけたい儀式への向き合い方
葬儀に参列する上で最も大切なことは、故人への弔意とご遺族への配慮の気持ちです。
形式的なマナーも重要ですが、それ以前に、故人の死を悼み、安らかな旅立ちを願う心が何よりも尊ばれます。
通夜や告別式の間は、静かに故人を偲び、厳粛な雰囲気を保つように心がけましょう。
会場では、無用なおしゃべりは控え、携帯電話の電源は必ず切るかマナーモードに設定し、着信音などが鳴らないように注意が必要です。
焼香の順番を待つ間なども、私語は慎み、静かに故人を偲ぶ時間として過ごしましょう。
また、ご遺族は悲しみの中にあり、葬儀の準備や対応で心身ともに疲弊しています。
参列者は、ご遺族の負担にならないよう、受付での手続きは迅速に行い、会場内では指示に従ってスムーズに行動することが求められます。
故人を偲び、ご遺族に寄り添う気持ちを持って儀式に臨むことが、参列者として最も大切な心構えと言えるでしょう。
儀式の意味を理解し、心を込めて故人を見送ることが、何よりの供養となります。
葬儀参列前に必ず確認・準備しておきたいこと
訃報は突然届くことがほとんどです。
慌てず、失礼のないように参列するためには、訃報を受け取った段階でいくつかの重要な確認と準備をしておく必要があります。
特に初めて葬儀に参列する方や、久しぶりの参列で不安がある方は、ここで解説するポイントをしっかりと押さえておきましょう。
事前に準備を整えておくことで、当日の流れに余裕を持って臨むことができます。
訃報を受けたらまず何をするべきか
まず、訃報を受け取ったら、葬儀の日時、場所、そして葬儀の形式(一般葬、家族葬、一日葬など)を確認しましょう。
また、遺族からの特別な連絡事項がないかも確認することが非常に重要です。
例えば、香典や供花・供物を辞退されている場合や、平服での参列をお願いされている場合などがあります。
これらの情報は、遺族の意向を尊重するために必ず確認し、それに従うようにしましょう。
確認した情報は、後で慌てないようにメモしておくと安心です。
また、職場や学校関係の場合は、担当部署や責任者に速やかに連絡を入れ、休暇の手続きや弔電・供花の手配について確認しましょう。
親しい友人や知人の訃報であれば、共通の知人に連絡を取り、情報を共有したり、連名で弔電や供花を送る相談をするのも良いでしょう。
訃報の内容を正確に把握し、遺族の意向や関係先への連絡を迅速に行うことが、最初のステップとして非常に重要です。
服装、香典、数珠など持ち物の準備とマナー
葬儀に参列する際の服装は、一般的に喪服を着用します。
男性はブラックスーツに白いワイシャツ、黒いネクタイ、黒い靴下、黒い革靴が基本です。
女性はブラックフォーマルと呼ばれる黒いスーツやワンピース、アンサンブルに、黒いストッキング、黒いパンプスを合わせます。
アクセサリーは結婚指輪以外は原則としてつけませんが、パールのネックレスやイヤリングは許容される場合があります。
ただし、二連のものは「不幸が重なる」という意味合いから避けるのが一般的です。
また、光沢のある素材や派手なデザインのものは避けましょう。
急な訃報で喪服の準備が難しい場合は、地味な色合い(黒、紺、ダークグレーなど)のスーツやワンピースでも構いませんが、可能な限り黒に近いものを選び、光沢のある素材や派手な装飾は避けるように配慮が必要です。
夏場でも肌の露出は控えめにし、冬場でもコートは会場に入る前に脱ぐのがマナーです。
香典は、故人への弔意を表すとともに、遺族の葬儀費用の負担を軽減するという意味合いがあります。
金額は故人との関係性や自身の年齢によって異なりますが、一般的な相場を参考に、無理のない範囲で包みましょう。
香典袋の表書きは仏式であれば「御霊前」や「御仏前」(四十九日以降)、氏名は薄墨で書くのがマナーです。
お札は新札を避けるのが一般的ですが、どうしても新札しかない場合は一度折り目をつけてから包むと良いでしょう。
香典袋は必ず袱紗(ふくさ)に包んで持参し、受付で渡す際に袱紗から取り出します。
数珠は、念仏を唱える際に数を数える道具ですが、仏式の葬儀においては、故人の冥福を祈る際に持つものです。
自分の宗派の数珠があればそれを使用するのが望ましいですが、なければ略式の数珠でも構いません。
数珠は貸し借りするものではないため、持っていない場合は無理に用意する必要はありませんが、葬儀の場にふさわしい身だしなみと持ち物の準備は、故人と遺族への敬意を示す大切なマナーです。
弔電や供花・供物の手配方法と注意点
葬儀に参列できない場合や、弔意を表したい場合には、弔電や供花・供物を送ることができます。
弔電は、NTTやインターネットの弔電サービスなどを利用して手配します。
宛名は喪主の方の氏名とし、葬儀が執り行われる場所と日時を正確に伝達することが重要です。
故人との関係性に応じたメッセージを選び、差出人の氏名や住所を正確に記載しましょう。
弔電は、通夜や告別式の開始時刻までに会場に届くように手配するのが一般的です。
供花や供物は、葬儀社を通して手配することが多いです。
葬儀社に連絡し、故人の氏名、喪主の氏名、葬儀の日時と場所を伝えて手配を依頼します。
供花や供物の種類、金額などは葬儀社から案内がありますので、それに従って選びましょう。
ただし、ご遺族が香典や供花・供物を辞退されている場合もあります。
訃報で辞退の意向が示されている場合は、その意向を尊重し、無理に送ることは控えるのがマナーです。
どうしても弔意を表したい場合は、後日改めて弔問に伺うか、弔いのメッセージなどを送ることを検討しましょう。
弔電や供花・供物の手配は、故人を悼む気持ちを表す大切な行為ですが、遺族の意向に沿って行うことが最も重要です。
葬儀当日の流れに沿った具体的な参列マナー
葬儀当日は、会場に到着してから帰宅するまで、様々な場面で適切なマナーが求められます。
特に受付での対応、焼香の作法、会場での振る舞いなどは、多くの人が気にするポイントでしょう。
ここでは、葬儀当日の流れに沿って、参列者が知っておくべき具体的なマナーと注意点を詳しく解説します。
一つ一つの行動に心を込めることで、故人への弔意と遺族への配慮を示すことができます。
受付での記帳、香典の渡し方、会場での振る舞い
葬儀会場に到着したら、まず受付に向かいます。
受付では、一礼をして「この度は心よりお悔やみ申し上げます」など、短いお悔やみの言葉を述べます。
次に、香典を渡します。
香典は袱紗から取り出し、相手に表書きが向くように両手で渡します。
その際に「御霊前にお供えください」などと一言添えると丁寧です。
受付で氏名や住所を記帳します。
記帳する際は、薄墨の筆ペンを使用するのが一般的です。
これは「悲しみの涙で墨が薄くなった」という意味や、「急なことで墨をする時間がなかった」という意味合いがあります。
丁寧に読みやすい字で記帳しましょう。
記帳や香典の受け渡しが終わったら、遺族に一礼をして会場へ進みます。
会場では、案内係の指示に従って席に着きます。
一般の参列者は、祭壇から遠い席から順に詰めて座るのがマナーです。
会場内では静かに過ごし、携帯電話の電源は切っておくこと、他の参列者や遺族との私語は控えることが重要です。
式が始まるまでは静かに故人を偲びながら待ちましょう。
会場に入る際や席に着く際に、遺族や他の参列者に会釈をすることは構いませんが、長々と話し込むことは避けましょう。
焼香の正しい手順と宗派による違い
焼香は、故人の冥福を祈り、自身の心身を清めるための大切な儀式です。
焼香の作法は、立礼焼香、座礼焼香、回し焼香の3種類があり、会場の形式によって異なります。
最も一般的なのは立礼焼香です。
自分の番が来たら、祭壇に進み、遺影に一礼し、僧侶に一礼します。
焼香台の前に進み、遺影に向かって合掌します。
その後、抹香(粉末状の香)をつまみ、目の高さに掲げ(これを「おしいただく」と言います)、香炉に落とします。
この動作を繰り返しますが、回数は宗派によって異なります。
真言宗や天台宗は3回、浄土宗は特に回数を定めない、浄土真宗本願寺派は1回、真宗大谷派は2回など、様々な作法があります。
しかし、参列者としては、故人を思う気持ちが最も大切であり、回数に厳密にこだわる必要はありません。
多くの葬儀では、1回または2回で済ませる方が多いようです。
迷った場合は、前の人に合わせて行うか、1回にしても失礼にはあたりません。
焼香が終わったら、再び遺影に一礼し、僧侶に一礼をして自席に戻ります。
座礼焼香や回し焼香も基本的な流れは同じですが、座って行ったり、香炉が回ってくるのを待ってから行ったりと、形式が異なります。
いずれの場合も、心を込めて故人の冥福を祈ることが大切です。
通夜振る舞い・精進落としへの参加とマナー
通夜の後に設けられる「通夜振る舞い」や、火葬後や初七日法要の後に行われる「精進落とし」は、故人を偲びながら、弔問客や僧侶が飲食を共にする場です。
これらの席に招かれた場合、参加するかどうかは自由ですが、故人を偲ぶ気持ちがあれば、少しでも顔を出すのが一般的なマナーとされています。
特に通夜振る舞いは、故人との思い出を語り合い、遺族を慰める場でもあります。
参加する場合は、席に着く前に遺族に「お招きいただきありがとうございます」などと挨拶をし、お酒や料理を勧められたら、無理のない範囲でいただきましょう。
食事の席では、故人の思い出話などを中心に、和やかに話すのが良いでしょう。
ただし、長居は禁物です。
頃合いを見て、遺族に改めてお悔やみの言葉を伝え、「お開きのようですね」「そろそろ失礼いたします」などと声をかけて退席します。
通夜振る舞いや精進落としは、遺族への慰めや供養の意味合いが強い場であるため、故人や遺族への配慮を忘れずに行動することが大切です。
場の雰囲気を読み、適切なタイミングで退席することも重要なマナーの一つです。
たくさん飲食することよりも、故人を偲び、遺族に寄り添う姿勢が求められます。
遺族への声かけやその他の配慮
葬儀の場でご遺族に声をかける際は、短い言葉で、お悔やみの気持ちを伝えるようにしましょう。
「この度は心よりお悔やみ申し上げます」「大変でしたね」といった簡潔な言葉を選びます。
「頑張ってください」「また連絡します」など、遺族に負担をかけるような言葉や、不幸が重なることを連想させる「重ね重ね」「度々」といった重ね言葉は避けるのがマナーです。
また、故人の死因や最期の様子などを根掘り葉掘り聞くことも絶対に避けましょう。
ご遺族は心身ともに疲れていますので、長話はせず、簡潔に弔意を伝え、静かに見守る姿勢が大切です。
会場内では、携帯電話の電源を切る、私語を慎むといった基本的なマナーに加え、写真撮影は厳禁です。
葬儀の様子を許可なく撮影することは、遺族や他の参列者に対して非常に失礼にあたります。
また、小さな子供を連れて参列する場合は、子供が騒いだり泣いたりしないように配慮が必要です。
可能であれば、別室で待機させるか、一時的に会場の外に出るなどの対応を検討しましょう。
葬儀の場は、故人を悼み、遺族に寄り添うための厳粛な場であることを理解し、常に周囲への配慮を忘れずに行動することが、参列者として求められる重要なマナーです。
現代の葬儀形式(家族葬・一日葬など)にみるマナーのポイント
近年、葬儀の形式は多様化しており、一般葬だけでなく、家族葬や一日葬、直葬といった小規模な形式を選ぶご遺族が増えています。
これらの形式は、参列者の範囲や儀式の進行が一般葬とは異なるため、参列する側もその特性を理解し、適切なマナーで臨むことが求められます。
特に家族葬は広く行われるようになりましたが、参列に際しては注意が必要です。
家族葬に招かれた場合の心構え
家族葬は、親族やごく親しい友人など、限られた範囲の人々で故人を見送る形式です。
家族葬で訃報を受け取る場合、同時に「近親者のみで執り行うため、弔問や香典、供花などを辞退いたします」といった形で、参列や弔意表明について特定の意向が示されることが多くあります。
家族葬に招かれたということは、ご遺族があなたを故人との別れを共有してほしい大切な存在だと考えているということです。
そのご遺族の気持ちに応えるためにも、まずはご遺族の意向をしっかりと確認し、それに従うことが最も重要なマナーです。
もし、弔問や香典などを辞退されている場合は、その意向を尊重し、無理に弔問に伺ったり、香典を送ったりすることは控えましょう。
後日改めて、落ち着いた頃にご遺族に連絡を取り、弔いの言葉を伝えるなどの方法を検討するのが良いでしょう。
もし参列を依頼された場合は、一般葬と同様に喪服を着用し、香典についても辞退の意向がなければ一般の相場に合わせて準備します。
ただし、家族葬は少人数で行われるため、よりアットホームな雰囲気で行われることもありますが、あくまで故人を弔う場であることに変わりはありません。
静かに故人を偲び、ご遺族に寄り添う気持ちで参列しましょう。
会場での私語や携帯電話の使用などは、一般葬と同様に慎むべきです。
一日葬や直葬における参列の考え方
一日葬は、通夜を行わずに告別式と火葬を一日で行う形式です。
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