突然の訃報に接したとき、悲しみとともに「どうすればいいのだろう」「失礼があってはいけない」と不安を感じる方は少なくありません。
特に葬儀への参列は、普段の生活ではあまり経験しない場面が多く、服装や持ち物、さらには挨拶や振る舞い方まで、様々なマナーが求められます。
参列者としての葬儀マナー 服装から挨拶まで総まとめとして、この記事では、いざという時に慌てず、故人への弔意と遺族への配慮をしっかりと示せるよう、参列に関する一連の流れと必要なマナーを分かりやすく解説します。
初めて参列する方から、久しぶりに参列する方まで、安心して葬儀に臨めるよう、具体的なポイントをお伝えしますので、ぜひ最後までお読みください。
訃報を受けたら:葬儀参列の準備と確認事項
訃報は、予期せぬタイミングで届くことが多いものです。
連絡を受けたら、まずは落ち着いて、必要な情報を正確に聞き取ることが大切です。
その後の参列の判断や準備、そして遺族への配慮ある対応へと繋がります。
ここでは、訃報を受けた際に確認すべきことや、その後の行動について詳しく見ていきましょう。
参列の判断と遺族への連絡
訃報を受けたら、まず最初に確認すべきは、誰から連絡があったのか、そして故人との関係性です。
その上で、通夜や告別式の日時、場所、そして葬儀の形式(家族葬、一般葬など)をしっかりと把握します。
特に近年増えている家族葬の場合、親族やごく近しい人のみで執り行われるため、参列を辞退してほしいという意向が示されることもあります。
連絡を受けた際に「参列してもよろしいでしょうか」と尋ねるか、あるいは「ご迷惑でなければお伺いさせていただきたいのですが」と丁寧に意向を確認するのが良いでしょう。
遺族は悲しみの中にあり、対応に追われている状況ですので、長電話は避け、必要な情報だけを簡潔に聞き取るように心がけます。
参列の可否を決めたら、できるだけ早く遺族にその旨を伝えます。
参列する場合は「〇〇(氏名)でございます。
この度は心よりお悔やみ申し上げます。
つきましては、通夜・告別式に参列させていただきたく存じます。
」といったように、お悔やみの言葉とともに参列の意思を伝えます。
もし遠方であったり、都合がつかなかったりして参列できない場合でも、必ずその旨を伝え、弔電を送る、後日弔問に伺う、といった別の形で弔意を示す意向を伝えると丁寧です。
遺族の意向を尊重し、無理強いしないことが最も重要です。
葬儀の種類と宗派によるマナーの違い
葬儀には、一般葬、家族葬、一日葬、直葬など、様々な形式があります。
それぞれの形式によって、参列者の範囲や流れ、必要な準備が異なります。
一般葬は広く参列者を招く形式で、会社関係者や友人・知人も参列するのが一般的です。
家族葬は近親者のみで執り行われるため、連絡を受けても参列を控えるべき場合があります。
一日葬は通夜を行わず告別式と火葬を一日で行う形式、直葬は通夜・告別式を行わずに火葬のみを行う形式です。
これらの形式によって、参列できるタイミングや準備すべきことが変わってきますので、訃報を受けた際に葬儀の形式を確認しておくことが大切です。
また、葬儀は故人の信仰していた宗派によって、儀式の流れや焼香の作法、数珠の種類などが異なります。
仏式以外にも、神式やキリスト教式などがあり、それぞれのマナーがあります。
例えば、仏式では焼香を行いますが、神式では玉串奉奠(たまぐしほうてん)、キリスト教式では献花を行います。
自分が参列する葬儀がどの宗派で行われるかを確認し、事前に基本的なマナーを把握しておくと、当日戸惑うことなく故人を偲ぶことができます。
ただし、宗派ごとの細かい作法に自信がない場合は、無理に完璧を求めず、心を込めて故人を弔う気持ちを持つことが何よりも大切です。
葬儀会場で案内がある場合は、それに従うのが最も確実な方法です。
参列者の服装マナー完全ガイド:失礼のない身だしなみ
葬儀に参列する際の服装は、故人や遺族に対して弔意を示す大切なマナーの一つです。
華美な装いや派手な色は避け、落ち着いた色合いの準喪服または略喪服を着用するのが基本です。
ここでは、男性、女性、そして子供の服装について、具体的な選び方や注意点を詳しく解説します。
喪服・準喪服の選び方と着こなし(男性・女性)
男性の場合、最も正式な喪服はモーニングコートですが、一般の参列者はブラックスーツ(ダークスーツ)を着用するのが一般的です。
これが準喪服にあたります。
スーツは光沢のない黒無地のものが基本です。
シャツは白無地のレギュラーカラーを選び、ネクタイは光沢のない黒無地、または織り柄で目立たないものを選びます。
ネクタイピンはつけません。
靴下も黒無地を選びます。
ビジネススーツとして着ているダーク系のスーツでも、黒に近い濃紺やチャコールグレーであれば略喪服として許容される場合もありますが、可能であれば光沢のないブラックスーツを用意しておくと安心です。
女性の場合、最も正式な喪服はブラックフォーマルと呼ばれる黒無地のワンピースやアンサンブル、スーツです。
こちらも光沢のない素材を選びます。
肌の露出が多いデザインは避け、長袖または七分袖が基本です。
スカート丈は膝下からふくらはぎ程度が適切です。
ストッキングは黒のものを着用します。
夏場でも肌色のストッキングは避けてください。
喪服を持っていない場合や急な参列で準備が難しい場合は、地味な色(黒、濃紺、グレーなど)のワンピースやスーツを着用することも可能ですが、アクセサリーやバッグ、靴などで弔事用に配慮が必要です。
男女ともに、清潔感があり、控えめな着こなしを心がけることが大切です。
靴、バッグ、アクセサリー、メイク、髪型、ネイルの注意点
服装だけでなく、小物や身だしなみにも配慮が必要です。
靴は男女ともに光沢のない黒の革靴が基本です。
男性は紐付きのプレーントゥやストレートチップ、女性は飾りのないプレーンなパンプスを選びます。
エナメル素材やスエード素材、金具のついたデザインは避けるのがマナーです。
バッグも光沢のない黒の布製や革製のものを選びます。
殺生を連想させるアニマル柄やファー素材、爬虫類系の素材は避けるべきとされています。
アクセサリーは結婚指輪以外はつけないのが基本ですが、女性の場合、一連のパールネックレスやイヤリング、または黒曜石などの地味なものに限って許容されます。
二連のネックレスは「不幸が重なる」として避けるべきです。
メイクはナチュラルメイクを心がけ、派手な色合いのアイシャドウや口紅は避けます。
髪型は清潔感を第一に考え、長い髪はまとめておきます。
派手なヘアアクセサリーは避け、黒や地味な色のゴムやピンを使用します。
ネイルも派手な色や装飾は避け、ベージュ系の落ち着いた色にするか、何も塗らないのが最も無難です。
ジェルネイルなどで派手な色が落とせない場合は、黒い手袋を着用することで隠すという方法もあります。
細部にまで気を配ることで、遺族や他の参列者への配慮を示すことができます。
子供や急な参列時の服装のポイント
子供が葬儀に参列する場合、学校の制服があればそれが最も正式な服装となります。
制服がない場合は、白無地のシャツやブラウスに、黒、紺、グレーなどの地味な色のズボンやスカートを合わせます。
靴下は白か黒、靴も黒や茶色などの地味な色のものを選びます。
キャラクターものや派手な色合いの服は避けるように指導します。
乳幼児の場合は、派手な色や柄のものでなければ普段着でも構いませんが、できるだけ落ち着いた色合いのものを選んであげると良いでしょう。
急な訃報で喪服の準備が間に合わない場合、大人も子供と同様に、地味な色合いの服装で参列することが可能です。
男性はダーク系のスーツに白シャツ、地味な色のネクタイ(黒がなければ濃紺やグレー)、女性は黒、紺、グレーなどのワンピースやアンサンブル、スーツを選びます。
ただし、この場合でも、アクセサリーやバッグ、靴などはできるだけ弔事用のものに近づける努力が必要です。
例えば、明るい色のバッグしか持っていない場合は、受付に預けるか、小さな黒いサブバッグに持ち物を移し替えるなどの工夫ができます。
「急なことで準備ができませんでした」と一言添えることで、失礼な印象を与えることを避けられます。
葬儀当日のマナー:受付から焼香、挨拶、香典まで
葬儀当日は、会場に到着してから受付、焼香、故人や遺族への挨拶など、様々な場面があります。
それぞれの場面で求められるマナーを理解しておくことで、落ち着いて故人を偲び、遺族に寄り添うことができます。
ここでは、当日の流れに沿って、具体的なマナーを解説します。
受付での記帳、香典の渡し方、お悔やみの言葉
葬儀会場に到着したら、まず受付に向かいます。
受付では、遺族に代わって弔問客を迎える方がいらっしゃいます。
軽く一礼し、「この度は心よりお悔やみ申し上げます。
」と静かに述べます。
受付で名前と住所を記帳します。
筆ペンが用意されていることが多いので、それを使います。
記帳を終えたら、香典を渡します。
香典は袱紗(ふくさ)に包んで持参するのがマナーです。
受付で袱紗から取り出し、表書きが相手から読める向きにして両手で渡します。
「御霊前にお供えください」など、短い言葉を添えて渡すのが一般的です。
香典を渡す際、金額を声に出して伝える必要はありません。
また、受付で「香典返しは結構です」と辞退の意向を伝えることもありますが、遺族の負担を減らしたいという気持ちからの行動であり、マナー違反ではありません。
受付後は、案内に従って会場に進みます。
コートやマフラーなどは会場に入る前に脱ぎ、たたんで手に持つか、クロークがあれば預けます。
焼香の作法と基本的な流れ
焼香は、仏式の葬儀で故人の冥福を祈るための大切な儀式です。
焼香には、立って行う「立礼焼香」、座って行う「座礼焼香」、回し鉢で隣の人に回していく「回し焼香」など、いくつかの形式があります。
いずれの場合も基本的な作法は同じです。
自分の順番が来たら、焼香台に進み、遺影に一礼、僧侶に一礼します。
そして、焼香台の前に進み、故人に合掌して一礼します。
その後、右手の親指、人差し指、中指で抹香(まっこう)をつまみ、目の高さまで持ち上げ(これを「おしいただく」と言います)、香炉に落とします。
この動作を1~3回繰り返します。
宗派によって回数が異なりますが、一般的には1回または3回とされています。
迷った場合は、前の人に合わせるか、係の方に尋ねるのが無難です。
焼香を終えたら、再び故人に合掌して一礼し、遺族に一礼して自分の席に戻ります。
焼香の回数は宗派によって定められていますが、心を込めて行うことが最も重要であり、回数にこだわりすぎる必要はありません。
大切なのは、故人を偲び、冥福を祈る気持ちです。
故人・遺族への心遣いを伝える挨拶と言葉
葬儀会場では、遺族や他の参列者と顔を合わせる機会があります。
その際に交わす言葉にも配慮が必要です。
遺族に対しては、まずは「この度は心よりお悔やみ申し上げます」と丁寧に弔意を伝えます。
故人との思い出を語る場合も、「寂しくなりますね」「安らかにお眠りください」といった、相手の気持ちに寄り添う言葉を選びます。
「頑張って」「元気を出して」といった励ましの言葉は、かえって遺族を追い詰めてしまうことがあるため避けた方が良いでしょう。
また、「死ぬ」「死亡」といった直接的な言葉や、「重ね重ね」「くれぐれも」といった重ね言葉、「続く」「追って」といった忌み言葉は、不幸が繰り返されることを連想させるため使用しません。
「ご逝去」「お亡くなりになる」といった言葉に置き換えるのが一般的です。
他の参列者とは、会釈をする程度で、大きな声での会話は控えます。
会場内では静かに過ごし、故人への弔意を示すことに集中します。
受付の方や会場のスタッフの方々にも、感謝の気持ちを伝えることを忘れないようにしましょう。
どんな場面でも、故人への敬意と遺族への配慮を最優先に行動することが、最も大切なマナーです。
香典や持ち物に関する疑問を解消
葬儀に参列するにあたり、香典や持ち物についても事前に準備が必要です。
香典は故人への弔意を表すとともに、遺族の負担を少しでも軽減したいという気持ちを込めて贈るものです。
また、数珠など、葬儀に欠かせない持ち物もあります。
ここでは、香典の金額や包み方、そして葬儀に持参すべき持ち物について解説します。
香典の金額相場と適切な包み方
香典の金額は、故人との関係性や年齢、地域の慣習などによって異なります。
一般的には、友人・知人の場合は5千円から1万円、会社の同僚や上司、部下の場合は5千円程度が相場とされています。
親族の場合は、関係性が近いほど金額は高くなり、1万円から10万円以上と幅があります。
自分の年齢も考慮し、無理のない範囲で包むことが大切です。
香典は、不幸が重なることを避けるという意味で、偶数の金額(2千円、4千円、6千円など)は避けるのが一般的です。
ただし、1万円は例外的に許容されることが多いです。
また、「死」や「苦」を連想させる4万円や9万円も避けます。
お札は、新札ではなく、一度使用した古札を使用するのがマナーです。
これは、不幸を予期して事前に準備していたと捉えられないようにするためです。
もし新札しかない場合は、一度折り目をつけてから包むと良いでしょう。
香典袋は、白黒または双銀の水引がかかった不祝儀袋を使用します。
表書きは、仏式の場合は「御霊前」または「御香典」と書くのが一般的です(浄土真宗など一部の宗派では「御仏前」とします)。
神式では「御玉串料」「御榊料」、キリスト教式では「お花料」「御ミサ料」など、宗派によって異なりますので注意が必要です。
名前は、水引の下にフルネームで書きます。
中袋がある場合は、そこに金額と氏名、住所を記載します。
香典は、袱紗に包んで持参し、受付で袱紗から出して渡すのが丁寧なマナーです。
葬儀に持参すべき必須アイテムとあると便利なもの
葬儀に参列する際に、必ず持参したい必須アイテムがいくつかあります。
まず、香典とそれを包むための袱紗です。
袱紗は紫色のものが慶弔両用で使えて便利です。
次に、数珠です。
数珠は宗派によって形が異なりますが、自身の宗派の数珠があればそれを持参します。
宗派に関係なく使える略式数珠も販売されており、一つ持っておくと便利です。
数珠は貸し借りするものではなく、自分のものを使用するのがマナーです。
その他、ハンカチも必須です。
白無地のものか、黒や紺などの地味な色合いのものを用意します。
涙を拭いたり、手を拭いたりする際に使用します。
あると便利なものとしては、筆ペンやボールペンです。
受付での記帳に必要ですが、会場に用意されていることも多いです。
しかし、自分の使い慣れたものがあると安心です。
また、女性の場合、替えのストッキングや、夏場であれば扇子(ただし、華美なデザインは避ける)などがあると役立つかもしれません。
小さく折りたためるサブバッグも、いただいた返礼品や資料を入れるのに便利です。
持ち物は最低限にまとめ、必要なものだけをコンパクトに携帯するのがスマートです。
葬儀中に気をつけたいこと(スマホ、タバコなど)
葬儀中は、故人を偲び、遺族に寄り添うための静粛な場です。
そのため、行動には十分な配慮が必要です。
まず、携帯電話は必ず電源を切るか、マナーモードに設定し、音が出ないように徹底します。
焼香中や読経中に着信音が鳴ってしまうといった事態は、場の雰囲気を壊し、遺族や他の参列者に迷惑をかけてしまいます。
また、葬儀中の写真撮影は、遺族から許可がある場合を除き、絶対に控えるべき行為です。
故人や遺族のプライベートに関わることですので、無許可での撮影は失礼にあたります。
喫煙についても、会場の指定された喫煙所以外での喫煙は厳禁です。
特に、会場の入り口付近や他の参列者が集まる場所での喫煙は、不快感を与える可能性があるため避けるべきです。
また、大きな声での私語や、他の参列者との長話も控えます。
会場内では静かに過ごし、故人への哀悼の意を表すことに集中します。
体調が優れない場合は、無理をせず、必要であれば早めに退席することも考えて良いでしょう。
その際も、遺族や係の方に一言伝えてから静かに退席するようにします。
葬儀という厳粛な場であることを常に意識し、周囲への配慮を忘れないことが大切です。
まとめ
葬儀への参列は、故人との最後のお別れであり、遺族にとっては悲しみの中で行われる大切な儀式です。
参列者として、故人への弔意をしっかりと示し、遺族に寄り添うためには、基本的なマナーを理解しておくことが非常に重要です。
この記事では、訃報を受けた際の準備から、参列者の服装、そして葬儀当日の流れや様々な場面でのマナーについて解説しました。
服装は準喪服や略喪服を基本とし、靴やバッグ、アクセサリーなども落ち着いたものを選ぶこと。
受付での記帳や香典の渡し方、焼香の作法など、当日の流れに沿った具体的な振る舞い。
そして、遺族への心遣いを伝える言葉遣いや、葬儀中に控えるべき行動など、多岐にわたるマナーをご紹介しました。
これらのマナーは、決して形式だけに囚われるものではなく、故人を偲び、遺族を思いやる気持ちを形にしたものです。
初めての参列や、久しぶりの参列で不安を感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、最も大切なのは故人を悼む気持ちです。
今回ご紹介した内容が、いざという時に慌てず、安心して葬儀に臨むための一助となれば幸いです。
もし迷うことがあれば、事前に葬儀社のウェブサイトを確認したり、信頼できる人に尋ねたりするのも良いでしょう。
心を込めて故人を見送り、遺族に寄り添うことが、何よりの供養となります。