大切な方を亡くされたとき、どのような形でお見送りをするか、考えることは心労も伴い、戸惑うことも多いでしょう。
近年、家族葬という形式を選ぶ方が増えています。
家族葬は、ご遺族や親しい友人のみで故人様を偲ぶ、比較的小規模なお葬式です。
しかし、「家族葬を選んだけど、具体的にどう進めればいいの?」「流れがよく分からない」といった疑問をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
この記事では、お葬式家族葬の流れ全体像を、ご危篤・ご逝去の瞬間から葬儀後の手続きまで、具体的なステップに沿って分かりやすく解説します。
家族葬を検討されている方、あるいは家族葬を控えている方が、安心して故人様をお見送りできるよう、準備から葬儀当日、そしてその後に至るまで、知っておきたいポイントを丁寧にお伝えします。
最後までお読みいただければ、家族葬の全体像が掴め、どのように進めていけば良いかが見えてくるはずです。
家族葬を選ぶ前に知りたい基本と全体像
家族葬という言葉はよく聞かれるようになりましたが、具体的にどのような葬儀なのか、他の形式とどう違うのか、費用はどのくらいかかるのかなど、基本的な情報が分からないままでは不安も大きいでしょう。
ここでは、家族葬が選ばれる理由や、一般的な葬儀との違い、そして最も気になる費用について詳しく解説し、家族葬の全体像を把握するための基礎知識をお伝えします。
家族葬は、形式にとらわれず故人様とゆっくりお別れしたいと考えるご家族にとって、非常に良い選択肢となり得ます。
家族葬が選ばれる理由とメリット・デメリット
家族葬が広く選ばれるようになった背景には、様々な理由があります。
一つには、核家族化や高齢化が進み、親戚や地域とのつながりが薄れてきたことが挙げられます。
また、故人様やご遺族の「形式にとらわれず、心穏やかに見送りたい」という意向も強く反映されています。
家族葬の最大のメリットは、参列者が少ないため、慌ただしさが少なく、故人様との最後の時間をゆっくりと、そして密やかに過ごせる点です。
大規模な一般葬のように、多くの弔問客への対応に追われることがないため、ご遺族の精神的な負担を軽減できます。
また、参列者が少ない分、葬儀の規模を抑えることができ、結果として費用を抑えられるケースが多いのもメリットと言えるでしょう。
さらに、故人様が好きだった音楽を流したり、思い出の品を飾ったりと、より故人様らしい温かい雰囲気で見送ることができる自由度の高さも魅力です。
一方で、デメリットも存在します。
最も多いのは、家族葬を選んだことに対する親戚や知人からの理解を得にくい場合があることです。
「なぜ知らせてくれなかったのか」「お別れをしたかった」といった声が後から届き、トラブルに発展する可能性もゼロではありません。
また、香典を辞退した場合、後々弔問に訪れる方への対応や、香典を受け取らなかったことによる経済的な負担増も考慮する必要があります。
家族葬は、あくまで「家族や親しい人のみで行う」というだけで、儀式自体は一般的な仏式葬儀と変わらないことが多いですが、参列者の範囲を明確に線引きすることが、後々のトラブルを防ぐ上で非常に重要になります。
家族葬の費用相場と費用を抑えるポイント
家族葬の費用は、一般葬に比べて抑えられる傾向にありますが、その相場は葬儀社や地域、プランの内容によって大きく変動します。
一般的に、家族葬の費用相場は100万円から200万円程度と言われています。
この費用には、祭壇、棺、骨壺、ドライアイス、霊柩車、火葬料、人件費などが含まれますが、飲食費や返礼品、お布施などは別途かかることが多いです。
葬儀費用は大きく分けて、「基本料金」「変動費用」「実費費用」の3つに分けられます。
基本料金には、祭壇設営や会場使用料、スタッフ人件費などが含まれ、これは葬儀社のプランによって異なります。
変動費用は、参列者の人数によって変動する飲食費や返礼品費です。
実費費用は、火葬料や待合室使用料、お布施など、葬儀社を通さずに支払う費用や、葬儀社が立て替えて支払う費用です。
家族葬で費用を抑える最大のポイントは、変動費用の大部分を占める飲食費と返礼品費をコントロールすることです。
参列者を限定することで、これらの費用を大幅に削減できます。
また、葬儀社選びも非常に重要です。
複数の葬儀社から見積もりを取り、プランの内容を比較検討することで、適正価格で納得のいく葬儀を行うことができます。
見積もり内容を詳しく確認し、何が含まれていて何が含まれていないのかを明確にすることが大切です。
さらに、不要なオプションを削ることも費用削減につながります。
例えば、豪華すぎる祭壇や、過剰な装飾などは、必ずしも必要とは限りません。
故人様やご家族の意向に沿った、シンプルながらも心のこもった祭壇を選ぶことで、費用を抑えながらも温かいお見送りが可能です。
事前に葬儀社に相談し、予算を伝え、その範囲内でどのような葬儀が可能か話し合うことも有効です。
生前に葬儀の準備をする「終活」の一環として、葬儀社に事前相談をしておくことで、いざという時にも慌てずに済み、費用についても冷静に判断できます。
葬儀社によっては、事前相談割引や会員割引などを用意している場合もあります。
家族葬だからこそ悩む参列者の範囲と連絡方法
家族葬を行う上で、最も頭を悩ませる点の一つが、誰に参列してもらうか、そして誰に知らせるかという参列者の範囲決めです。
家族葬は「家族やごく親しい人のみ」と定義されますが、「ごく親しい人」の定義は人それぞれであり、線引きが非常に難しいからです。
一般的には、同居している家族、別居している直系の親族(子、孫など)、そして故人様やご遺族と特に親交の深かった友人・知人などが含まれることが多いです。
どこまでを「家族」とするか、どこまでを「親しい人」とするかは、ご遺族や故人様の生前の意向を尊重し、家族間でしっかりと話し合って決めることが重要です。
例えば、「いとこまで」「孫の配偶者まで」など、具体的な範囲を決めておくと、後々の混乱を防げます。
参列をお願いする方への連絡は、危篤の段階で、あるいはご逝去後すぐに電話で行うのが一般的です。
その際、家族葬で行うこと、参列者の範囲を限定していること、香典や供花を辞退するかどうかなどを明確に伝える必要があります。
連絡を受けた方が「参列したい」と申し出られた場合、どのように対応するかについても、事前に家族で方針を共有しておきましょう。
一方、家族葬に参列されない方への連絡は、葬儀が終わってから事後報告とするのが一般的です。
葬儀前に連絡してしまうと、「なぜ呼んでくれなかったのか」という感情を抱かせてしまう可能性があるためです。
事後報告の際には、葬儀を近親者のみの家族葬で行ったこと、故人様が生前お世話になったことへの感謝の気持ちなどを丁寧に伝えることが大切です。
事後報告の方法としては、電話、手紙、あるいは年賀状や暑中見舞いなどの機会を利用して伝える方法があります。
事後報告のタイミングも重要で、あまり遅くなりすぎると失礼にあたるため、一般的には葬儀後一週間から十日以内を目安とすることが多いです。
また、会社関係や町内会など、形式的な付き合いのある方々への連絡については、どこまで知らせるか、誰が知らせるかなどを事前に決めておくとスムーズです。
家族葬だからこそ、参列者の範囲と連絡方法については、慎重かつ丁寧に進めることが、後々の人間関係を円滑に保つ上で非常に大切になります。
家族葬の具体的な流れ:ご逝去から葬儀当日まで
大切な方が亡くなられてから、葬儀を終えるまでには、やるべきことがたくさんあります。
特に初めて家族葬を経験される方にとっては、どのような流れで進んでいくのか分からず、不安を感じることもあるでしょう。
ここでは、ご危篤・ご逝去の瞬間から、ご安置、納棺、そして通夜式、告別式、火葬といった葬儀当日までの具体的な流れを、時系列に沿って詳しく解説します。
それぞれのステップで何をすべきか、どのような点に注意すべきかを知ることで、落ち着いて故人様をお見送りするための準備ができます。
危篤・ご逝去からご安置、そして納棺まで
ご家族の危篤を告げられたら、まずは近親者に連絡をします。
可能であれば、故人様と最期のお別れができるように、会いたい人に来てもらう手配をします。
病院でご逝去された場合、医師から死亡診断書を受け取ります。
自宅でご逝去された場合は、かかりつけ医に連絡し、死亡診断書を作成してもらいます。
かかりつけ医がいない場合は、警察に連絡し、検視を受けてから死亡診断書を作成してもらうことになります。
死亡診断書は、その後の様々な手続きに必要となる非常に重要な書類ですので、複数枚コピーを取っておくと良いでしょう。
ご逝去後、ご遺体をどこにご安置するのかを決めなければなりません。
自宅にご安置する場合と、葬儀社の安置施設や斎場にご安置する場合があります。
どちらの場合も、ご遺体を搬送してもらう手配が必要です。
この時点で、依頼する葬儀社を決定し、寝台車の手配をお願いするのが一般的です。
葬儀社に連絡する際は、「家族葬を希望していること」「ご遺体の安置場所」「死亡診断書の有無」などを伝えます。
葬儀社の担当者が到着したら、今後の流れや、家族葬のプランについて打ち合わせを行います。
ご安置場所が決まったら、故人様を搬送し、安置します。
自宅にご安置する場合は、布団や枕を用意し、故人様の枕元に守り刀や枕飾り(一膳飯、水、枕団子など)を飾るのが一般的です。
安置施設の場合は、施設側で必要な準備をしてくれます。
ご安置後、次は納棺の儀式を行います。
納棺は、故人様を棺に納める大切な儀式です。
一般的には、湯灌(お体を洗い清めること)や死化粧を施し、旅支度を整えてから棺に納めます。
納棺は葬儀社の担当者が行いますが、ご遺族も立ち会うことができます。
ご家族の手で故人様の旅支度を整えたり、好きだったものを棺に入れたりする時間は、故人様との最後の触れ合いとなり、大切な思い出になります。
納棺が終わると、いよいよお通夜に向けての準備が本格的に始まります。
この段階で、通夜や告別式の日程、場所、規模、そして費用の見積もりなど、具体的な内容を葬儀社と最終確認します。
通夜式・告別式・火葬の流れ
ご遺体の安置と納棺を終えたら、いよいよ通夜式、そして告別式へと進みます。
家族葬の場合でも、儀式の流れ自体は一般的な仏式葬儀と大きく変わりません。
まず通夜式は、ご遺族や近親者が故人様と共に夜を過ごし、冥福を祈る儀式です。
かつては文字通り夜通し行われましたが、近年では「半通夜」として数時間で終了することが一般的です。
通夜式の開始時刻は、通常夕方から夜にかけて設定されます。
通夜式では、僧侶による読経が行われ、参列者は焼香を行います。
家族葬の場合、参列者が少ないため、一人ひとりがゆっくりと故人様と向き合う時間を持つことができます。
通夜式の後には、「通夜振る舞い」として、食事の席が設けられることがありますが、家族葬では省略したり、簡単な軽食程度にしたりすることも多いです。
翌日は告別式です。
告別式は、故人様と最期のお別れを告げ、弔うための儀式です。
通夜式に続いて行われることが多く、日中に行われます。
告別式では、再び僧侶による読経や弔辞、弔電の奉読などが行われます。
ご遺族や参列者は、故人様との別れを惜しみ、最後の焼香を行います。
告別式の後、故人様を棺に納めたまま、火葬場へと出棺します。
出棺の際には、霊柩車に棺を乗せ、ご遺族や近親者が霊柩車に同乗して火葬場へ向かいます。
火葬場に到着すると、火葬炉の前で最期のお別れを行い、棺を炉に納めます。
火葬にかかる時間は、通常1時間半から2時間程度です。
火葬が終わるまでの間、ご遺族は火葬場の控室や、斎場に戻って待機します。
火葬後、ご遺骨を骨壺に納める「拾骨(しゅうこつ)」を行います。
拾骨は、故人様のご遺骨を箸で拾い、二人一組で骨壺に納める儀式で、故人様を送る上で非常に大切な時間となります。
地域によって拾骨の方法や、どの骨から拾うかなどの慣習が異なる場合があります。
拾骨を終えると、骨壺を受け取り、自宅や斎場に戻ります。
葬儀当日には、火葬後すぐに「繰り上げ初七日法要」を行うことが増えています。
これは、本来は死後七日目に行う法要を、参列者の負担を減らすために当日に繰り上げて行うものです。
家族葬の場合、この繰り上げ初七日法要を行うことで、葬儀後のご遺族や参列者の負担を軽減できます。
葬儀当日の進行と注意点
家族葬の葬儀当日は、通夜式に始まり、告別式、そして火葬・拾骨と慌ただしく時間が過ぎていきます。
スムーズに進行するためには、事前に葬儀社としっかりと打ち合わせを行い、当日のスケジュールや役割分担を確認しておくことが重要です。
葬儀当日、ご遺族は開始時刻よりも早めに斎場に到着し、最終確認や準備を行います。
受付を設ける場合は、受付係をお願いした方に早めに集まってもらい、記帳や香典の受け渡しについて説明します。
家族葬の場合、香典を辞退することも多いため、その場合は受付を設けず、弔問客への対応のみとする場合もあります。
葬儀の進行は、基本的に葬儀社の担当者がリードしてくれますので、指示に従って行動すれば大丈夫です。
通夜式、告別式ともに、僧侶の読経、焼香と進みます。
家族葬では、参列者が少ないため、焼香の時間も比較的ゆっくりと取れることが多いです。
故人様との最後の時間を大切にするためにも、慌てずに、一つ一つの儀式に心を込めて臨むことが重要です。
告別式の後、出棺となります。
出棺の際には、ご遺族や親しい方で棺を霊柩車まで運びます。
火葬場へは、霊柩車にご遺族代表が同乗し、他の親族はマイクロバスや自家用車で向かいます。
火葬場での待ち時間には、軽食や飲み物を用意しておくこともあります。
拾骨を終えて斎場に戻った後、繰り上げ初七日法要を行い、その後、精進落としの会食に移るのが一般的な流れです。
葬儀当日は、ご遺族は精神的にも肉体的にも疲労困憊していることが予想されます。
無理をせず、休憩を取りながら進めることが大切です。
また、参列者への感謝の気持ちを伝えることも忘れてはいけません。
家族葬だからこそ、一人ひとりの参列者に対して、丁寧な対応を心がけましょう。
特に注意したい点としては、葬儀社との連絡を密にすることです。
急な変更や、分からないことがあれば、すぐに担当者に確認し、不安を解消しながら進めていくことが、後悔のない葬儀につながります。
また、当日の持ち物(死亡診断書、印鑑、遺影写真、火葬許可証など)を事前に確認し、忘れ物がないように準備しておくことも大切です。
家族葬を終えた後の手続きと供養、そして注意点
家族葬の儀式や火葬が無事に終わっても、それで全てが終了するわけではありません。
葬儀後には、役所への届出や相続に関する手続き、そして故