人生で初めて、あるいはまだ経験が少ないからこそ、葬式に参列する際の服装マナーに戸惑う20代の方は多いのではないでしょうか。
突然の訃報に接し、悲しみに向き合う中で、失礼のないようにしたいけれど、具体的に何を準備すれば良いのか、どんな服装が適切なのか、迷ってしまうのは当然のことです。
特に若い世代にとって、喪服や礼服は日常的に着るものではないため、「これで大丈夫かな?」「周りから浮いてしまわないかな?」といった不安を感じやすいものです。
このガイドでは、そんな20代の皆さんが葬式という場に安心して臨めるよう、服装に関する基本的なことから、急な場合や具体的なアイテム選び、さらには服装以外の身だしなみのポイントまで、分かりやすく丁寧にご説明します。
これを読めば、いざという時にも落ち着いて準備を進められるはずです。
20代が知っておくべき葬式服装の基本マナー
葬式や通夜に参列する際の服装には、故人への弔意と遺族への配慮を示すためのマナーがあります。
特に20代の場合、社会経験がまだ浅く、フォーマルな場に慣れていないことも多いため、基本的なルールを知っておくことが大切です。
服装選びの第一歩として、通夜と葬儀・告別式での服装の違いや、喪服の種類、避けるべき色や素材について理解しておきましょう。
これらの基本を押さえておけば、どのような状況でも失礼なく参列できます。
葬式と通夜で服装に違いはある?喪服の種類と選び方
通夜は本来、故人と最後の夜を過ごす場であり、急な弔問が多いため、略式礼服や地味な平服でも許容されるとされてきました。
しかし、近年では通夜に参列する方が多くなり、葬儀・告別式と同じように喪服(ブラックスーツやブラックフォーマル)を着用するのが一般的になっています。
特に会社関係や遠方からの参列でない限り、通夜でも喪服を選ぶのが無難でしょう。
葬儀・告別式は、故人を見送る儀式であり、最も格式の高い場とされます。
そのため、原則として喪服の着用が必要です。
喪服には、格式の高い順に正喪服、準喪服、略喪服があります。
正喪服は喪主や親族が着用するもので、男性なら和装やモーニング、女性なら和装やブラックフォーマルスーツなどがこれにあたります。
20代の参列者が主に着用するのは、準喪服または略喪服です。
準喪服は一般的な喪服のことで、男性ならブラックスーツ、女性ならブラックフォーマルウェア(ワンピースやアンサンブル)を指します。
最も広く着用されており、通夜、葬儀、告別式いずれにも対応できるため、一着持っておくと安心です。
略喪服は、地味な色合いのスーツやワンピースなどを指し、急な弔問や、家族葬など近親者のみで行われる小規模な葬儀に参列する場合に許容されることがあります。
しかし、迷ったら準喪服を選ぶのが最も間違いがありません。
20代の参列者であれば、準喪服であるブラックスーツやブラックフォーマルウェアを用意しておくのが、どのようなお葬式にも対応できるためおすすめです。
もし手持ちがない場合は、後述するレンタルや購入、あるいは地味な平服での代用を検討することになりますが、基本的には準喪服が望ましいと覚えておきましょう。
服装の色と素材:絶対に避けるべきものとは?
葬式や通夜の服装は、原則として黒が基本です。
ただし、単なる黒い服であれば何でも良いというわけではありません。
喪服として着用する黒は、深い漆黒であることが望ましいとされています。
これは、光沢がなく、弔いの場にふさわしい落ち着きと品格があるからです。
普段着の黒いスーツやワンピースは、ビジネス用だったり、カジュアルな素材だったり、光沢があったりすることが多いため、喪服としては不適切とされる場合があります。
特に、ベルベットやサテン、シフォンなど、華やかさや透け感のある素材、ラメやスパンコールなどの装飾があるものは、弔事には全くふさわしくありませんので絶対に避けましょう。
また、白やグレー、ネイビーといった黒以外の地味な色合いの服は、略喪服として許容される場合もありますが、あくまでも「略式」であることを理解しておく必要があります。
親族として参列する場合や、格式を重んじる式では、黒の喪服が必須です。
参列者として不安な場合は、主催者や他の参列者に事前に確認するか、迷わず黒の喪服を選びましょう。
柄物についても、ストライプやチェックはもちろん、たとえ地味な色合いでも柄が入っている服は基本的にNGです。
無地の黒が原則です。
素材に関しては、光沢のない、ウールやポリエステルなどの落ち着いたものを選びます。
夏場は通気性の良い素材を選ぶこともありますが、それでも光沢や透け感がないか確認が必要です。
冬場はコートを羽織りますが、これも黒や地味な色合いで、派手な装飾のないものを選びます。
ファー付きのコートは殺生を連想させるため、避けるのがマナーです。
このように、葬式の服装における「黒」は、色だけでなく素材や質感も含めて選ぶ必要があることを覚えておきましょう。
【男女別】20代のための具体的な葬式服装ガイド
葬式の服装マナーは、男性と女性で異なります。
基本的な「黒の喪服」という点は共通していますが、スーツの形やシャツ、ネクタイ、ワンピース、小物類など、それぞれに細かいルールが存在します。
20代の皆さんが、いざという時に慌てずに適切な服装を選べるよう、男性と女性それぞれの具体的な服装ガイドをご紹介します。
自分の性別に合った項目をチェックして、準備を進めてください。
男性編:スーツ、シャツ、ネクタイ、靴の選び方
男性の喪服は、原則としてブラックスーツです。
ビジネススーツの黒とは異なり、より深い黒色で光沢のない素材が一般的です。
スーツの形はシングルでもダブルでも構いませんが、ボタンは一つか二つのものが一般的です。
スリーピース(ベスト付き)も格式が高く、問題ありません。
シャツは白無地のレギュラーカラーまたはワイドカラーを選びます。
ボタンダウンシャツはカジュアルな印象を与えるため、弔事では避けるのがマナーです。
ネクタイは黒無地のものを選びます。
光沢のある素材や柄物、ブランドのロゴが入っているものは避けましょう。
ネクタイピンは原則としてつけません。
つける場合でも、光沢のないシンプルなデザインのものを選びます。
靴下は黒無地を選びます。
くるぶし丈のソックスや柄物はNGです。
靴は黒の革靴を選びます。
デザインは内羽根式のストレートチップやプレーントゥが最もフォーマルとされています。
エナメル素材や金具の多いデザイン、スエード素材は避けましょう。
靴下と同様に、靴も光沢のないものが望ましいです。
ベルトも靴に合わせて黒で、シンプルなデザインのものを選びます。
金具が派手なものや、ベルトの幅が太すぎるものは避けましょう。
例えば、筆者の友人が初めて葬式に参列した際、ビジネス用の黒いスーツと靴で参加したのですが、後から他の参列者の深い黒の喪服を見て「自分のスーツはグレーっぽく見えたかも…」と少し恥ずかしかったと言っていました。
ビジネス用の黒と喪服用の黒は色が異なるため、可能であれば喪服用のブラックスーツを用意するのがベストです。
急な場合はビジネス用の黒無地スーツで代用することもありますが、その場合でもシャツ、ネクタイ、靴、靴下は弔事用のものを用意することで、より失礼のない装いになります。
女性編:ワンピース、アンサンブル、靴、ストッキングの選び方
女性の喪服は、ブラックフォーマルウェアと呼ばれ、ワンピースやアンサンブル(ワンピースとジャケットのセット)が一般的です。
スカート丈は、椅子に座った際に膝が隠れる程度の長さが適切です。
袖は、夏場でも肩が出ないデザイン、冬場は長袖が基本です。
露出の多いデザインや、ボディラインを強調するようなタイトなシルエットは避け、ゆったりとしたデザインを選びましょう。
素材は光沢のない黒無地のものが原則です。
靴は黒のパンプスを選びます。
ヒールは高すぎず低すぎない3~5cm程度が適度です。
ピンヒールやオープントゥ、サンダル、ブーツはカジュアルな印象を与えるため避けましょう。
素材は布製か光沢のない革製を選びます。
ストッキングは黒の無地のものを選びます。
厚さは20~30デニール程度が一般的です。
夏場でも素足はNGです。
冬場はタイツを履いても良いですが、肌が透けない程度の厚手のものが良いでしょう。
柄物やラメ入りのストッキング・タイツは避けましょう。
例えば、私が初めて葬式に参列した時は、手持ちの黒いワンピースに黒いタイツとブーツで済ませようとしたのですが、年配の親族から「ブーツは弔事には向かないわよ」とそっと教えていただき、慌ててパンプスを買いに行った経験があります。
靴は意外と見られていますので、黒のシンプルなパンプスを一足用意しておくと安心です。
また、冬場のコートは黒や地味な色合いのロングコートを選び、ファーや装飾のないものを選びましょう。
バッグ、アクセサリー、髪型、メイクのマナー
葬式に持っていくバッグも、服装と同様にマナーがあります。
バッグは黒の布製または光沢のない革製を選びます。
デザインは小ぶりなハンドバッグが一般的です。
金具や装飾が少なく、シンプルなものを選びましょう。
ブランドロゴが大きく入ったバッグは避けるのがマナーです。
風呂敷を持参する方もいますが、これは荷物が多くなった場合にサブバッグとして使用することが多く、メインバッグは別に用意するのが一般的です。
アクセサリーは、結婚指輪以外は原則としてつけません。
つける場合でも、パールのネックレスやイヤリング(一連のもの)のみが許容されます。
二連のパールネックレスは「不幸が重なる」という意味合いで避けられることがあります。
光るものや揺れるデザインのもの、ダイヤモンドなどの宝石類は華美になるため避けましょう。
髪型は、清潔感を第一に考えます。
長い髪は一つにまとめ、顔にかからないようにします。
派手なヘアアクセサリーは避け、黒や地味な色のシンプルなゴムやピンを使用します。
お辞儀をした際に髪が乱れないようにしっかりとまとめましょう。
メイクは控えめにナチュラルメイクが基本です。
派手な色のアイシャドウやリップ、チークは避け、ベージュやブラウン系の落ち着いた色を選びます。
ラメ入りの化粧品は使用しません。
ネイルは落とすのが望ましいですが、難しい場合はベージュやクリアなどの肌になじむ色にするか、黒い手袋をするなどの配慮が必要です。
香水はつけないのがマナーです。
このように、服装だけでなく小物や身だしなみ全体で、故人を偲び、遺族に配慮する姿勢を示すことが大切です。
急な葬式や準備時間がない場合の服装と持ち物
突然の訃報は、いつ訪れるか分かりません。
特に急な葬式に参列することになった場合、喪服を持っていなかったり、準備する時間がなかったりすることもあるでしょう。
そんな時でも、最低限のマナーを守り、失礼なく参列するための方法があります。
また、葬式に参列する際に必要な持ち物についても、事前に知っておけば慌てずに済みます。
ここでは、急な状況への対応策と、忘れずに持っていきたい持ち物について解説します。
間に合わないときの応急処置と失礼にならない工夫
急な訃報で喪服を用意する時間がない場合、手持ちの服で代用することを検討することになります。
この場合、最も重要なのは「黒に近い地味な色合い」「光沢のない素材」「シンプルなデザイン」の3点を満たす服を選ぶことです。
男性であれば、黒や濃紺、チャコールグレーなどのビジネススーツで、無地のものを選びます。
シャツは白無地、ネクタイは黒無地を用意します。
靴は黒の革靴で、光沢のないものを選びます。
女性であれば、黒や濃紺、グレーなどの無地のワンピースやアンサンブル、スーツを選びます。
スカート丈は膝が隠れるものを選び、露出の多いデザインは避けます。
靴は黒のパンプス、ストッキングは黒無地を着用します。
普段着で代用する際の注意点として、カジュアルすぎる素材(デニム、ジャージなど)やデザイン(Tシャツ、パーカーなど)、派手な色や柄、光沢のある素材、肌の露出が多い服は絶対に避けなければなりません。
また、ビジネススーツで代用する場合でも、シャツやネクタイ、靴、靴下(女性の場合はストッキングと靴)は弔事用のものを揃えることで、全体の印象が引き締まり、より失礼のない装いになります。
もし、手持ちの服で適切なものが見つからない場合は、ユニクロやGU、しまむらなどのファストファッションブランドで、黒無地のシンプルなワンピースやジャケット、パンツなどを探すという方法もあります。
ただし、これらの服はあくまで「応急処置」であり、正式な喪服ではないことを理解しておきましょう。
可能であれば、葬儀社のレンタルサービスを利用したり、紳士服店やフォーマルウェア専門店で略喪服を購入したりすることも検討すべきです。
例えば、私の知人は急な通夜に参列する際、黒いパンツスーツしか持っておらず、インナーに白いブラウスを着ようとしたのですが、先輩から「白はダメだよ、黒か地味な色にしなきゃ」とアドバイスされ、慌てて黒いカットソーを買いに走ったそうです。
このように、インナーの色や素材にも注意が必要です。
葬式に持っていくべき必須の持ち物リスト
葬式に参列する際は、服装以外にもいくつか持っていくべきものがあります。
これらを事前に準備しておけば、当日慌てずに済みます。
必須の持ち物としてまず挙げられるのは、香典と袱紗(ふくさ)です。
香典は、故人の霊前にお供えするもので、新札は避けるのがマナーです。
金額は故人との関係性によって異なりますが、20代であれば友人や知人の場合は3千円~5千円程度が一般的とされています。
香典袋は、白黒または双銀の水引がかかった不祝儀袋を使用します。
名前はフルネームで書きましょう。
袱紗は、香典袋を包むためのものです。
紫色のものは慶弔両方に使えるため便利です。
弔事では、寒色系(紺、緑など)の袱紗を使用し、包み方は左開きにするのがマナーです。
次に、数珠も持参するのが一般的です。
宗派によって数珠の形は異なりますが、自分の宗派の数珠がない場合は、どの宗派でも使える略式数珠を用意しておくと良いでしょう。
数珠は貸し借りするものではないため、一人一つ持っているのが望ましいです。
その他、黒や白のハンカチ、予備のストッキング(女性)、小さくたためるエコバッグ(荷物が増えた場合)、体温計や消毒液(現在の状況に合わせて)なども準備しておくと安心です。
また、夏場は扇子(派手なデザインは避ける)、冬場は防寒具(コート、カイロなど)も必要に応じて持っていきましょう。
忘れがちなのが、携帯電話の電源を切るかマナーモードにする配慮です。
会場に入る前に必ず設定を確認しましょう。
これらの持ち物を、黒や地味な色合いのシンプルなバッグにまとめて入れておくと、いざという時に慌てずに済みます。
まとめ
20代で初めて、あるいは経験が少なく葬式に参列する際、服装マナーは大きな不安要素の一つかもしれません。
しかし、基本的なポイントを押さえておけば、故人やご遺族に対して失礼なく、落ち着いて弔意を示すことができます。
最も大切なのは、派手さを避け、地味で落ち着いた色合いの服装を選ぶことです。
特に黒の喪服は、通夜、葬儀、告別式といったどのような場面にも対応できるため、可能であれば一着用意しておくと安心です。
男性なら光沢のないブラックスーツに白無地シャツ、黒無地ネクタイ。
女性なら黒のワンピースやアンサンブルに黒ストッキング、黒パンプスが基本となります。
急な訃報で喪服の準備が間に合わない場合は、手持ちの黒や地味な色の無地で光沢のない服で代用することも可能ですが、あくまで応急処置であることを理解し、小物類(ネクタイ、靴、ストッキング、バッグなど)だけでも弔事用のものを用意するなど、できる限りの配慮をすることが大切です。
服装だけでなく、髪型やメイク、アクセサリーといった身だしなみ全般で、華美にならず、清潔感と落ち着きを意識しましょう。
また、香典や袱紗、数珠といった持ち物も忘れずに準備しておくことが、スムーズな参列につながります。
葬式という場は、故人を偲び、お別れをする大切な儀式です。
服装マナーは、その場にふさわしい振る舞いをするための一つの要素にすぎません。
最も重要なのは、故人を悼む気持ちと、ご遺族への思いやりの心です。
もしマナーに迷うことがあれば、遠慮なく周囲の詳しい方や葬儀社のスタッフに尋ねてみるのも良いでしょう。
この記事が、20代の皆さんが葬式という場に安心して臨むための一助となれば幸いです。