突然の訃報に接したとき、悲しみの中で葬儀の準備を進めなければなりません。
何から手をつければ良いか、頭が真っ白になってしまう方も少なくないでしょう。
特に「葬儀準備で必要な持ち物リスト」は、いざという時に慌てないためにも事前に把握しておきたい大切な情報です。
この記事では、葬儀の際に必要になる様々な持ち物について、その必要性や準備のポイントを詳しく解説します。
一つずつ確認していくことで、少しでも安心して故人様をお見送りするための時間にご自身の心を向けられるよう、お手伝いができれば幸いです。
葬儀準備で「これだけは必須」最低限必要な持ち物
葬儀に参列する立場であっても、遺族として準備を進める立場であっても、最低限必ず必要になる持ち物があります。
これらは葬儀を滞りなく進めるため、そして故人様や他の参列者の方々に対し失礼なく振る舞うために欠かせないものです。
まずはこれらの必需品をしっかりと押さえておきましょう。
特に、訃報を受けてから葬儀までの時間は限られていますので、これらのアイテムがすぐに用意できる状態にしておくことが大切です。
身だしなみを整えるための必需品
葬儀における身だしなみは、故人様への哀悼の意を表すとともに、ご遺族や他の参列者の方々への配慮を示すものです。
そのため、服装や持ち物にも一定のマナーがあります。
男性はブラックスーツに白いワイシャツ、黒いネクタイ、黒い靴下が基本です。
女性はブラックフォーマルと呼ばれる喪服に、黒いストッキング、黒いパンプスが一般的です。
バッグも黒で、光沢のないシンプルなものを選びましょう。
アクセサリーは結婚指輪以外は原則として外しますが、パールのネックレスやイヤリングは着用が許容されています。
ただし、二連以上のものや、華美なデザインのものは避けましょう。
化粧はナチュラルに、ネイルは派手な色やデザインのものは落としておくのがマナーです。
髪が長い場合は、黒いゴムで一つにまとめるなど、すっきりと整えましょう。
葬儀の現場では、「喪服は用意していたけれど、黒い靴下が見つからない」「急いで駆けつけたら、普段使いの派手なバッグしか持っていなかった」といったケースをよく見かけます。
いざという時に慌てないためにも、喪服一式とそれに合わせる小物類は、すぐに取り出せる場所にまとめておくか、定期的に確認しておくことをお勧めします。
特に、靴やバッグは普段あまり使わないものなので、カビが生えていないか、傷んでいないかなどもチェックしておくと安心です。
マナーを守るために欠かせない持ち物
葬儀では、香典や数珠といったマナーに関わる持ち物も非常に重要です。
香典は、故人様への供養の気持ちを表すもので、不祝儀袋に入れて持参します。
金額は故人様との関係性によって異なりますが、新札は「不幸を予期して準備していた」と捉えられかねないため、なるべく古いお札を使用するのがマナーとされています。
ただし、あまりにもくしゃくしゃのお札も失礼にあたるため、一度折り目をつけるなどして使用するのが良いでしょう。
袱紗(ふくさ)は、香典袋を包むための布で、慶事用とは異なり、弔事用の落ち着いた色(紫、紺、緑など)のものを使用します。
袱紗に包むことで、香典袋が汚れたり折れたりするのを防ぎ、丁寧な気持ちを伝えることができます。
数珠(念珠)は、合掌する際に手にかけ、仏様や故人様と心を通わせるための道具とされています。
宗派によって形状や持ち方が異なる場合がありますが、自身の宗派の数珠を持参するのが一般的です。
もし数珠を持っていない場合でも、無理に用意する必要はありません。
大切なのは故人様を偲ぶ気持ちです。
ただし、葬儀の受付で「袱紗を忘れてしまって…」と困っている方や、「数珠は必要ですか?」と尋ねる方をよくお見かけします。
これらの持ち物は、葬儀の場で必要になる可能性が高いものですから、事前に準備しておくと、いざという時に落ち着いて対応できます。
特に香典袋の書き方や金額については、事前に確認しておくと安心でしょう。
手続きや連絡に必要な大切な持ち物
葬儀の準備や手続きを進める上で、必ず必要になる持ち物があります。
最も重要なのは、死亡診断書(または死体検案書)です。
これは死亡の事実を証明する公的な書類で、火葬許可証の申請や、その後の遺産相続、保険金請求など、様々な手続きに必要になります。
葬儀社に手続きを代行してもらう場合でも、原本またはコピーが必要になるため、大切に保管しましょう。
また、葬儀社との打ち合わせや、死亡届の提出などの際に印鑑が必要になります。
実印である必要はありませんが、シャチハタのようなスタンプ式の印鑑は避けるのが一般的です。
認印をすぐに取り出せるようにしておきましょう。
さらに、親族や関係者への連絡、葬儀社とのやり取りのために、携帯電話は必需品です。
連絡先リストを携帯電話に登録しておくか、控えておくと便利です。
葬儀の現場では、死亡診断書のコピーを複数枚用意しておくと、その後の手続きがスムーズに進むという経験則があります。
役所や銀行など、提出先が多くなる可能性があるため、あらかじめ数枚コピーを取っておくことをお勧めします。
また、筆記用具(ペン)は、香典袋の記帳や、簡単なメモを取る際に役立ちます。
普段から持ち歩いている方も多いかもしれませんが、忘れずに準備しておきましょう。
これらの持ち物は、葬儀という非日常の状況下で、冷静に手続きを進めるために非常に重要な役割を果たします。
「うっかり忘れがち」でも、あると安心な持ち物
必需品に加えて、持っていると葬儀という場を少しでも快適に過ごせたり、予期せぬ事態に対応できたりする「あると安心」な持ち物があります。
これらは、リストとして挙げられることは少ないかもしれませんが、実際に持参した方からは「助かった」「持ってきて良かった」という声が多いアイテムです。
ぜひ、ご自身の状況に合わせて準備を検討してみてください。
これらのアイテムがあることで、精神的な負担が少しでも軽減され、故人様との最後の時間を大切に過ごすことに集中できるでしょう。
長時間の滞在を快適にする個人的なアイテム
葬儀は、通夜から告別式、火葬と、長時間に及ぶことが一般的です。
特に遺族や近親者は、式場に泊まり込んだり、長時間待機したりすることもあります。
そのような際に、個人的なアイテムがあると非常に役立ちます。
まず、ハンカチとティッシュは必需品と言っても良いでしょう。
涙を拭くのはもちろん、何かと使う機会が多いアイテムです。
特にティッシュは、個包装のものがあると便利です。
女性は、化粧直し用の最低限の化粧品(ファンデーション、口紅など)があると、身だしなみを整えられます。
また、普段から服用している常備薬がある方は、必ず持参しましょう。
葬儀中は気が張っているため、体調を崩しやすい方もいらっしゃいます。
念のため、頭痛薬や胃薬なども持っておくと安心です。
携帯電話の充電器も忘れずに。
連絡手段として不可欠な携帯電話のバッテリーが切れてしまうと困ります。
モバイルバッテリーがあると、場所を選ばずに充電できるためさらに便利です。
葬儀の控室で、「薬を持ってくるのを忘れてしまって…」と体調が悪そうにしている方や、「携帯の充電が切れそう」と焦っている方を実際に見かけたことがあります。
これらのアイテムは、ご自身の体調管理や連絡手段の確保に直結するため、非常に重要です。
また、眼鏡やコンタクトレンズを使用している方は、予備やケア用品を持参すると安心です。
特にコンタクトレンズは、長時間着用していると乾燥しやすいので、目薬があると良いでしょう。
天候や状況に合わせた備え
葬儀当日の天候は、直前にならないと分かりません。
雨予報が出ている場合は、雨具(傘やレインコート)を忘れずに持参しましょう。
特に、火葬場への移動などで屋外に出る機会もあるため、濡れて体を冷やさないように注意が必要です。
冬場の葬儀であれば、コートやマフラー、手袋などの防寒具も必要になります。
ただし、式場内では脱ぐのがマナーですので、置き場所に困らないようなものを選ぶか、クロークなどを利用しましょう。
夏場の葬儀であれば、扇子や小さな扇風機があると、暑さをしのぐのに役立ちます。
また、式場によっては控室が狭かったり、椅子が少なかったりする場合もあります。
体調に不安がある方や、高齢の方、小さなお子様連れの方などは、折りたたみイスがあると、少し休憩したいときに便利です。
ただし、使用できる場所や状況は限られるため、周囲への配慮は必要です。
葬儀の現場では、突然の雨で参列者の方が困っている場面や、冬場に薄着で震えている方を見かけることがあります。
天気予報をチェックし、その日の天候に合わせた備えをしておくことは、ご自身だけでなく、同行する家族のためにも大切です。
また、式場内は冷暖房が効いていますが、火葬場などでは屋外で待機することもあるため、脱ぎ着しやすい服装や、羽織るものがあると体温調節がしやすく安心です。
足元が冷えやすい方は、冬場は厚手のストッキングや靴下を着用することも検討しましょう。
状況や立場によって変わる、柔軟に対応するための持ち物
葬儀の形式は多様化しており、一般葬、家族葬、一日葬など様々な形があります。
また、参列者なのか、遺族なのかといった立場によっても、必要になる持ち物は変わってきます。
ここでは、それぞれの状況や立場に合わせて、柔軟に対応するために知っておきたい持ち物について解説します。
ご自身の参列する葬儀の形式や、ご自身の立場を事前に確認し、適切な準備を進めましょう。
特に、近年増えている家族葬では、一般葬とは異なる準備が必要になる場合があります。
通夜と告別式、それぞれの持ち物
通夜は、故人様との最後の夜を家族や親しい人々が共に過ごす儀式です。
告別式は、故人様との別れを告げ、社会的なお見送りをする儀式です。
一般的に、通夜は急な訃報を受けて駆けつけるケースも多いため、地味な平服でも構わないとされていますが、最近では通夜から喪服を着用する方も増えています。
一方、告別式は正式な儀式であるため、喪服の着用が基本です。
遺族として通夜に参列し、そのまま式場に泊まり込む場合は、着替えや洗面具、タオルなどの宿泊セットが必要になります。
式場によっては寝具が用意されていることもありますが、事前に確認しておくと安心です。
また、通夜振る舞いに参加する場合は、食事の際に汚れても良いように、予備のマスクやウェットティッシュがあると便利かもしれません。
私が経験した葬儀の現場では、通夜に急遽駆けつけた方が、翌日の告別式のために慌てて喪服を取りに帰るケースや、通夜に泊まり込む予定だったが、着替えを忘れて困ったという声を聞いたことがあります。
通夜と告別式、どちらに参列するのか、遺族として泊まり込む必要があるのかなど、自身の状況をしっかりと把握し、必要な持ち物を準備することが重要です。
また、自宅での通夜と式場での通夜では、準備するものが異なる場合があるため、葬儀社に確認すると良いでしょう。
家族葬や一日葬ならではの持ち物
家族葬や一日葬は、一般葬に比べて参列者の範囲を限定したり、通夜を行わずに一日で葬儀を終えたりする形式です。
これらの形式でも、喪服や香典(ただし、香典を辞退する場合もあります)、数珠といった基本的な持ち物は必要になります。
しかし、参列者が少ない分、受付を設けない場合や、受付係を親族が担当する場合もあります。
そのため、受付用品(芳名帳、香典を置くお盆、筆記用具など)は、遺族が準備する必要があるか、葬儀社が用意してくれるかを確認する必要があります。
また、家族葬では、故人様との別れをよりパーソナルなものにするために、故人様の愛用品や思い出の品を祭壇に飾ったり、棺に入れたりすることがあります。
故人様が好きだったもの(お酒、お菓子、手紙、写真など)を持参したい場合は、事前に葬儀社や他の遺族と相談しておくとスムーズです。
ただし、火葬できないもの(金属、ガラス、燃えにくいものなど)もあるため注意が必要です。
家族葬では、故人様との最後の時間をゆっくり過ごせる反面、「何か故人に手向けるものを持ってくればよかった」と後から後悔する方もいらっしゃいます。
故人様が好きだった本やCD、一緒に写った写真など、何か一つでも思い出の品を持参することで、より心に残るお見送りになるでしょう。
一日葬の場合も、通夜を行わないだけで、告別式や火葬に必要な持ち物は基本的に同じです。
ただし、拘束時間が短くなるため、宿泊セットなどは不要になります。
遠方からの参列や宿泊を伴う場合の追加アイテム
遠方から葬儀に参列する場合や、通夜に泊まり込んだり、葬儀後に親族で集まったりするなど、宿泊を伴う場合は、通常の持ち物に加えていくつかのアイテムが必要になります。
まず、着替えは日数分必要です。
通夜・告別式用の喪服とは別に、移動中や宿泊施設で過ごすための平服を用意しましょう。
下着や靴下も忘れずに。
洗面具(歯ブラシ、歯磨き粉、シャンプー、リンス、石鹸など)やタオルも必需品です。
宿泊施設によってはアメニティが用意されていますが、普段使い慣れたものを持参する方が安心できるでしょう。
また、宿泊先での乾燥対策として、保湿クリームやリップクリームがあると便利です。
長時間の移動や宿泊で体が疲れることもありますので、リラックスできるアイテム(例えば、使い捨てのアイマスクや耳栓など)があると、少しでも快適に過ごせるかもしれません。
さらに、移動手段によっては、乗り物酔い止め薬や、長時間座っていても疲れないようなクッションなどがあると役立ちます。
遠方からの参列の場合、交通手段の手配(新幹線や飛行機のチケットなど)や宿泊先の予約も重要な準備の一つです。
これらの手配は、訃報を受けてからすぐに行う必要があるため、葬儀の持ち物リストと並行して確認を進めましょう。
また、葬儀の後に親族で会食をする場合など、少し改まった服装が必要になる可能性も考慮し、喪服以外の少しきれいめな服装を一着用意しておくと安心です。
葬儀の持ち物、いつから準備を始めるのが良い?
葬儀の持ち物準備は、いつから始めるのが良いのでしょうか。
突然の訃報に接してから慌てて準備する方もいらっしゃいますが、事前に準備しておけるものも多くあります。
ここでは、亡くなってから葬儀までの短い期間での準備と、生前からできる事前準備について解説します。
事前に準備を進めておくことで、いざという時に冷静に対応でき、故人様との最後の時間をより大切に過ごせるようになります。
亡くなってから葬儀までの短い期間での準備
人が亡くなってから葬儀が執り行われるまでは、非常に短い期間です。
一般的には、訃報を受けてから葬儀社に連絡し、遺体の搬送、安置、葬儀の形式や日程の打ち合わせ、通夜、告別式、火葬という流れで進みます。
この期間で、前述した必需品(喪服、香典、数珠、印鑑など)や、状況に応じて必要になる持ち物(着替え、洗面具など)を準備する必要があります。
特に、自宅以外で亡くなった場合は、病院などから遺体が搬送される前に、着替えや簡単な化粧品などを持参して駆けつける必要があることもあります。
この時は、まずは最低限の身だしなみを整えるものと、連絡手段(携帯電話)、そして財布などの貴重品だけを持って駆けつけることが多いです。
その後、葬儀社と打ち合わせながら、必要な持ち物をリストアップし、家族で分担して準備を進めるのが効率的です。
訃報はいつ届くか分かりません。
夜中や早朝の場合もあります。
そのような場合でも慌てずに対応できるよう、喪服や必要な小物はすぐに取り出せる場所にまとめておくと良いでしょう。
また、葬儀社との打ち合わせの際に、持ち物について分からないことがあれば遠慮なく質問しましょう。
葬儀のプロフェッショナルとして、必要なものや用意すべきものについて具体的にアドバイスしてくれます。
事前準備としてできること
葬儀の持ち物に関して、生前からできる事前準備はいくつかあります。
最も大きな準備の一つは、喪服の用意です。
いざという時に慌てて購入したりレンタルしたりする手間を省くため、自分に合ったサイズの喪服を一着用意しておくと安心です。
定期的にサイズが合っているか、傷んでいないか、クリーニングが必要かなどを確認しておきましょう。
また、袱紗や数珠といった小物類も、事前に準備しておくと