突然の訃報に接し、悲しみの中で葬儀告別式への参列準備を進めるのは、心身ともに負担の大きいことです。
特に、何を持参すれば良いのか、どのようなマナーがあるのかなど、迷うことも多いでしょう。
慌ただしい状況だからこそ、必要な持ち物をあらかじめ把握しておくと、少しでも落ち着いて故人様とのお別れの時間を過ごすことができます。
この記事では、葬儀告別式に持参する持ち物リストとして、最低限必要なものから、状況に応じてあると便利なもの、そして持ち物に関するマナーや注意点まで、詳しく解説します。
この記事を読んでいただければ、安心して葬儀告別式に参列するための準備が整うでしょう。
葬儀告別式に最低限必要な基本的な持ち物
葬儀告別式に参列する際に、多くの人が共通して必要とする基本的な持ち物があります。
これらは故人様への弔意を示したり、儀式にのっとって参列したりするために欠かせないものです。
まずは、これらの必須アイテムについて詳しく見ていきましょう。
いざという時に慌てないよう、事前に準備しておくことが大切です。
特に、頻繁に使うものではないからこそ、どこに保管しているか確認しておくと安心です。
弔意を示す「香典」の準備
香典は、故人様の御霊前にお供えする弔慰金です。
お線香やお花の代わりに供えるという意味合いがあります。
香典の金額は、故人様との関係性や自身の年齢によって異なりますが、一般的には親族の場合は1万円~10万円程度、友人・知人の場合は5千円~1万円程度、会社関係の場合は5千円~1万円程度が目安とされています。
ただし、地域や家によって習慣が異なる場合もあるため、心配な場合は事前に親しい親族や上司などに相談してみるのも良いでしょう。
香典は、必ず新札ではなく、一度使用した古札を用意するのがマナーです。
これは、「不幸を予測して準備していた」という印象を与えないためです。
どうしても手元に古札がない場合は、新札に一度折り目をつけてから包むようにします。
香典袋の選び方も重要です。
四十九日より前は「御霊前」または「御香典」と書かれた不祝儀袋を、四十九日以降は「御仏前」と書かれた不祝儀袋を使用するのが一般的です。
ただし、浄土真宗では故人はすぐに仏様になると考えられているため、四十九日より前でも「御仏前」を使用します。
表書きは薄墨で書くのが正式なマナーですが、最近では薄墨の筆ペンなども市販されています。
氏名はフルネームで、裏面には金額と住所、氏名を記入します。
香典は、受付で渡す際にスムーズに取り出せるよう、バッグの中の取り出しやすい場所にしまっておくことをおすすめします。
宗派を問わず持参したい「数珠」
数珠は、仏式の葬儀において故人様への供養や自身の心を落ち着かせるために用いる仏具です。
宗派によって数珠の形や持ち方が異なりますが、一般的に略式数珠と呼ばれるものは宗派を問わず使用できます。
略式数珠は、主玉の数が108個より少なく、片手で持てるものがほとんどです。
正式な数珠をお持ちでない場合や、自身の宗派が不明な場合は、略式数珠を用意しておくと良いでしょう。
数珠は、合掌する際に左手に持ち、房を下にして親指で軽く押さえるのが基本的な持ち方です。
数珠を貸し借りすることはマナー違反とされていますので、必ずご自身のものを持参しましょう。
数珠は、仏具店や百貨店、最近では文具店などでも購入できます。
価格帯も幅広く、材質によって様々な種類があります。
数珠は、儀式の際に必要となる大切な持ち物ですので、忘れないように必ずバッグに入れておきましょう。
また、数珠は普段から大切に扱い、清潔に保つように心がけたいものです。
香典を包む大切な「袱紗」
袱紗(ふくさ)は、香典袋やご祝儀袋を汚れや折れから守り、相手への丁寧な気持ちを表すために用いる布です。
葬儀に持参する香典は、必ず袱紗に包んで持っていくのがマナーです。
袱紗の色は、弔事の場合は紺色、緑色、灰色、紫色など、地味な寒色系のものを選びます。
紫色であれば慶弔どちらにも使えるため、一つ持っておくと便利です。
袱紗には様々な種類がありますが、大きく分けて風呂敷タイプと金封ふくさタイプがあります。
風呂敷タイプは、香典袋を中央に置き、左、右、下、上の順に折って包みます。
金封ふくさタイプは、袋状になっており、香典袋をそのまま差し込んで使用します。
どちらのタイプでも構いませんが、金封ふくさタイプの方が扱いやすいと感じる方も多いでしょう。
香典を袱紗から取り出す際は、受付の方の前で丁寧に行います。
袱紗を開き、香典袋を取り出し、袱紗を畳んでその上に香典袋を乗せて両手で渡すのが正式な作法です。
袱紗は、香典袋をそのままバッグに入れるよりも、より丁寧な印象を与え、大切な香典袋を守る役割も果たします。
忘れずに香典と一緒に準備しておきましょう。
清潔感を保つための「ハンカチ」
葬儀告別式では、涙を拭いたり、手を拭いたりするためにハンカチが必要です。
特に悲しみの場面では、涙が止まらなくなることもあるかもしれません。
ハンカチは、派手な色や柄のものは避け、白や黒、紺色などの地味な色で、無地のものや控えめな柄のものを選ぶのがマナーです。
素材は、綿や麻などの吸水性の良いものが実用的です。
タオル地のものはカジュアルすぎるという意見もありますが、最近では許容される場合も増えています。
ただし、光沢のある素材やレースの多いものは避けた方が無難です。
ハンカチは、ポケットやバッグのすぐに取り出せる場所に入れておきましょう。
男性の場合はスーツの内ポケットに、女性の場合はバッグのポケットなどに入れておくと便利です。
清潔なハンカチは、身だしなみを整えるだけでなく、いざという時に役立つ必需品です。
忘れずに持参しましょう。
また、予備のハンカチを一枚用意しておくと、より安心です。
その他、状況に応じて持参を検討したい持ち物
葬儀告別式に最低限必要なものの他にも、状況に応じて持参すると便利なものや、準備しておくと安心できるものがあります。
これらは必須ではありませんが、あることでより快適に、そして落ち着いて参列できる場合があります。
ご自身の状況や、参列する葬儀の形式、季節などを考慮して、必要かどうか検討してみましょう。
身だしなみを整えるための小物類
葬儀告別式では、清潔感があり、控えめな身だしなみが求められます。
そのため、身だしなみを整えるための最低限の小物を携帯しておくと良いでしょう。
例えば、女性の場合は、控えめな化粧直し用のファンデーションやリップクリーム、鏡などがあると便利です。
ただし、派手な色のメイク直しは避け、あくまで自然な状態を保つように心がけます。
男性の場合は、髪の乱れを直すための小さなブラシやコームなどがあると良いかもしれません。
また、爪切りや小さなハサミなどは、緊急時に役立つことがあります。
ただし、これらを人前で使うのは避けるべきです。
あくまで個人的な身だしなみの確認・調整のために、お手洗いなどで使用します。
香水やコロンは、強い香りは周囲の迷惑になる可能性があるため、つけないか、ごく控えめにするのがマナーです。
制汗剤なども同様に、無香料タイプを選ぶのが無難です。
念のため準備しておきたい日用品や常備薬
葬儀告別式は、長時間にわたることもありますし、慣れない環境で体調を崩す可能性もゼロではありません。
そのため、念のため日頃服用している常備薬や、頭痛薬、胃薬などの一般的な薬を少量携帯しておくと安心です。
また、コンタクトレンズを使用している方は、念のため眼鏡や予備のコンタクトレンズ、保存液などを持参すると良いでしょう。
式中にコンタクトに不具合が生じた場合でも安心です。
絆創膏なども、もしもの時に役立つことがあります。
最近では、感染症対策としてマスクの着用が一般的になっていますが、予備のマスクを数枚持っておくと、汚れてしまったり、紐が切れてしまったりした場合に交換できて安心です。
これらの日用品や常備薬は、小さなポーチなどにまとめておくと、バッグの中で散らばらず、必要な時にすぐに取り出せて便利です。
ご自身の健康状態を考慮し、必要と思われるものは遠慮なく持参しましょう。
ただし、音の出るものや、匂いの強いものは避けるように注意が必要です。
季節や天候に合わせた持ち物
参列する季節や当日の天候によって、持参すると良いものが変わってきます。
夏場であれば、会場が暑い場合に備えて、小型の扇子やうちわがあると便利ですが、仰ぐ際は控えめに、周囲に風を送らないように配慮が必要です。
また、汗を拭くためのハンカチや、制汗シートなども役立ちます。
ただし、強い香りのするものは避けましょう。
水分補給のためのペットボトル飲料を持参する方もいますが、式中に飲むのは控え、休憩時間などに利用するのがマナーです。
冬場であれば、防寒対策としてコートやマフラー、手袋などが必要になりますが、これらは式場に入る前に脱ぐのがマナーです。
会場内は暖房が効いていることが多いですが、足元が冷えることもあります。
使い捨てカイロなどがあると助かるかもしれません。
雨や雪の予報が出ている場合は、傘が必須です。
傘は、黒や紺色、グレーなどの地味な色で、無地のものを選ぶのが望ましいです。
季節や天候に合わせた準備をすることで、不快な思いをすることなく、式に集中することができます。
小さなお子様連れの場合の準備
小さなお子様を連れて参列する場合、通常よりも持ち物が多くなります。
周囲への配慮もしつつ、お子様が快適に過ごせるように準備することが大切です。
まず、おむつが必要なお子様の場合は、おむつ、おしりふき、使用済みおむつを入れる袋(消臭機能付きだと尚良い)は必須です。
授乳が必要な場合は、授乳ケープやミルク、哺乳瓶なども必要になります。
離乳食が必要な場合は、すぐに食べさせられるものを用意しておくと良いでしょう。
お子様が飽きてしまわないように、音の鳴らない絵本やおもちゃを少量持参するのも良いアイデアです。
ただし、音が鳴るものや、光るものは避けるようにします。
着替えも一式持っておくと、万が一汚してしまった場合でも安心です。
会場によっては授乳室やおむつ交換台がない場合もあるため、事前に確認しておくとより安心です。
お子様連れでの参列は大変ですが、必要なものをしっかりと準備しておくことで、少しでも負担を減らすことができます。
周囲への配慮も忘れずに行いましょう。
葬儀告別式に持参する持ち物に関する注意点とマナー
葬儀告別式に持参する持ち物については、種類だけでなく、色やデザイン、そして取り扱い方にも様々なマナーがあります。
これらのマナーを守ることは、故人様への敬意を示すとともに、ご遺族や他の参列者の方々への配慮にもつながります。
ここでは、持ち物に関する特に重要な注意点とマナーについて詳しく解説します。
持ち物の色やデザインに関する一般的なマナー
葬儀告別式に持参する持ち物は、服装と同様に、控えめで地味なものを選ぶのが基本的なマナーです。
バッグや靴、傘、ハンカチ、数珠袋、袱紗など、目につくものは全て、黒、紺、グレーなどの地味な色で、無地のものか、目立たない控えめな柄のものを選びます。
光沢のある素材や、派手な装飾(スパンコール、大きな金具、アニマル柄など)は避けるべきです。
特に女性のバッグは、布製や革製で、自立するタイプのものが良いとされています。
小さめのハンドバッグが無難ですが、荷物が多い場合はサブバッグを用意しても構いません。
サブバッグも同様に、黒などの地味な色で、布製のものが適しています。
靴も黒のシンプルなデザインを選びます。
エナメル素材や装飾の多いものは避けるようにしましょう。
傘も、派手な色や柄のものは避け、黒や紺色などの地味なものを用意します。
これらのマナーは、故人様やご遺族への配慮からくるものです。
華美なものを避けることで、弔意を表します。
受付での持ち物の扱い方
葬儀告別式に到着したら、まず受付で挨拶を済ませ、香典を渡します。
この際、持ち物の扱い方にもマナーがあります。
受付に着いたら、まずバッグから袱紗に包んだ香典を取り出します。
袱紗から香典袋を取り出し、袱紗の上に香典袋を乗せて、両手で受付の方に渡します。
その際、「この度は心よりお悔やみ申し上げます」など、お悔やみの言葉を添えるのが一般的です。
受付で記帳を求められた場合は、持参した筆記用具(黒または薄墨の万年筆やボールペン)で記帳します。
受付を済ませたら、コートやマフラーなどの防寒具は会場に入る前に脱ぎます。
傘は、会場の傘立てに置くか、持参した傘袋に入れて持ち込みます。
受付での一連の動作をスムーズに行うためにも、香典や筆記用具などはバッグの取り出しやすい場所にまとめておくと良いでしょう。
また、スマートフォンは電源を切るか、マナーモードに設定し、式中は使用しないようにしましょう。
会場への移動で気をつけること
葬儀告別式が行われる会場への移動手段についても、いくつかの注意点があります。
公共交通機関を利用する場合、電車やバスの中では静かに過ごし、他の乗客に配慮することが大切です。
特に、式場へ向かう服装をしている場合は、周囲の目を意識し、慎重に行動しましょう。
自家用車を利用する場合、会場に駐車場があるか、事前に確認しておくことが重要です。
特に都市部の斎場などでは、駐車スペースが限られている場合があります。
満車の場合や駐車場がない場合は、近くのコインパーキングなどを利用することになりますが、葬儀の日は混雑することも予想されるため、時間に余裕を持って出発するか、公共交通機関の利用も検討しましょう。
また、自家用車の場合でも、車内に派手なものや不必要な荷物を置かないようにします。
移動中から、故人様を偲ぶ気持ちを持ち、落ち着いた行動を心がけることが、葬儀への参列において大切なマナーです。
これは持参しない方が良いもの
葬儀告別式には、持参しない方が良いものや、持ち込みが制限されているものもあります。
例えば、殺生を連想させるもの(革製品でもワニ革やヘビ革など)、光り物(派手なアクセサリー、光沢の強いバッグや靴など)、派手な色や柄のもの、音の出るもの、強い香りのするものなどは避けるべきです。
また、会場によっては飲食物の持ち込みが制限されている場合があります。
故人様への供養のためにお供え物を持参したい場合は、事前にご遺族や葬儀社に確認するのが丁寧です。
スマートフォンは必須の連絡ツールですが、式中は電源を切るかマナーモードにし、使用は控えます。
写真撮影や録音も、特別な許可がない限りは控えるべき行為です。
故人様への敬意と、他の参列者への配慮から、不要なものや場にそぐわないものは持参しないように注意しましょう。
まとめ
葬儀告別式への参列は、故人様との最後のお別れをする大切な機会です。
突然の知らせに戸惑うことも多いですが、事前に持ち物やマナーを確認しておくことで、少しでも落ち着いて故人様を偲び、ご遺族に寄り添うことができます。
この記事では、葬儀告別式に最低限必要な香典、数珠、袱紗、ハンカチといった基本的な持ち物から、状況に応じてあると便利なもの、そして持ち物に関する大切なマナーや注意点について詳しく解説しました。
香典は新札を避け、袱紗に包んで渡すこと、数珠は自身のものを持参すること、持ち物は地味な色やデザインを選ぶことなど、知っておくべきポイントは少なくありません。
また、常備薬や季節に応じた対策、小さなお子様連れの場合の準備など、ご自身の状況に合わせた準備も大切です。
これらの情報を参考に、安心して葬儀告別式に参列するための準備を進めていただければ幸いです。
故人様への弔意と、ご遺族への配慮を忘れずに、心穏やかに最期のひとときを過ごせるよう願っています。