会社の従業員やそのご家族、あるいは日頃お世話になっている取引先の方に不幸があった際、会社として弔意を示すために香典を出すべきか、出すとしたらどのようにすれば良いのか、迷われる方は多いのではないでしょうか。
「葬儀で会社から香典を出す場合」には、個人で出す場合とは異なる様々な配慮や手続きが必要です。
特に担当者の方は、失礼があってはならないとプレッシャーを感じることもあるかもしれません。
この記事では、会社として香典を出す際の判断基準から具体的な手続き、金額の相場、マナー、そして経費処理まで、あなたが知りたい情報を網羅的に、かつ分かりやすく解説します。
この記事を読めば、突然の訃報にも落ち着いて対応できるようになるでしょう。
会社から香典を出す判断基準と社内規定
会社として香典を出すかどうかは、故人と会社との関係性によって判断するのが一般的です。
最も多いケースは、会社の従業員やそのご家族が亡くなられた場合です。
この場合、福利厚生の一環として香典や弔慰金を支給する会社が多く見られます。
また、長年お世話になった取引先の役員や担当者が亡くなられた場合にも、会社として弔意を示すために香典を出すことがあります。
さらに、会社のOB・OGの方が亡くなられた際に、会社への貢献度などを考慮して香典を出すケースも存在します。
これらの判断は、会社の規模や文化、これまでの慣例によって異なります。
重要なのは、誰が亡くなった場合に会社として香典を出すのか、その基準を明確にしておくことです。
特に、従業員の家族の場合、どこまでの続柄(配偶者、親、子、兄弟姉妹、祖父母など)に対して会社として弔意を示すのかを決めておく必要があります。
曖昧なままにしておくと、ケースごとに判断が異なり、従業員間に不公平感が生じる原因となる可能性も否定できません。
どのような場合に会社として香典を出すか
会社が香典を出す主なケースは、自社の従業員本人、従業員の配偶者や直系親族(親、子など)が亡くなられた場合です。
これは、従業員とその家族を支援するという福利厚生の側面が強いと言えます。
会社の規模によっては、従業員の兄弟姉妹や祖父母まで対象とする場合もありますが、これは会社の規定によります。
次に、取引先の役員や担当者が亡くなられた場合です。
これは、日頃の感謝や今後の良好な関係維持のために、会社として弔意を示すものです。
ただし、すべての取引先のすべての関係者に香典を出すわけではなく、特に重要な取引先や、会社の事業に深く関わりのあった方に対して出すことが多いでしょう。
OB・OGに対しては、会社の発展に貢献された功労者である場合に、弔意を示す目的で香典を出すことがあります。
これらのケース以外にも、地域社会に貢献された方や、会社の事業に間接的に関わりのあった方が亡くなられた際に、会社の判断で香典を出すこともあり得ます。
どのような場合に香典を出すかという基準は、会社の対外的な姿勢を示すものでもあるため、慎重に検討する必要があります。
会社規定の確認と整備の重要性
会社として香典を出す際には、まず自社の慶弔規定を確認することが最も重要です。
多くの会社では、慶弔に関する規程が定められており、香典を出す対象者、金額、手続きなどが明記されています。
この規定に沿って対応することで、担当者の迷いをなくし、一貫性のある対応が可能になります。
もし、まだ慶弔規定が整備されていない場合は、この機会に作成することをお勧めします。
規定を設けることで、「誰が亡くなったらいくら出すのか」「手続きは誰が行うのか」「経費処理はどうするのか」といった点が明確になり、いざという時に慌てずに済みます。
規定を整備する際には、会社の規模や財務状況、従業員の構成などを考慮し、現実的かつ公平な内容にすることが大切です。
また、一度定めた規定も、社会情勢の変化や会社の状況に合わせて見直しを行うことが望ましいでしょう。
例えば、リモートワークが普及したことで、従業員の居住地が広がり、直接弔問することが難しくなるケースも増えています。
そのような状況も踏まえ、郵送や代理人による対応など、規定に盛り込むべき項目を検討する必要があります。
規定が曖昧なままでは、担当者がその都度上司に確認したり、過去の事例を調べたりする手間が増え、迅速な対応が難しくなります。
会社名義で香典を出す際の手順と具体的な準備
会社として香典を出すことが決まったら、具体的な準備を進めます。
個人で香典を出す場合と同様に、香典袋の準備から始まりますが、会社名義ならではの書き方や注意点があります。
また、誰が香典を渡しに行くのか、いつ、どのように渡すのかといった、渡し方に関する手配も必要になります。
これらの準備をスムーズに行うためには、担当者間の情報共有や、必要な物品のリストアップなどが役立ちます。
特に、弔問に赴く人物が会社の代表としてふさわしいかどうか、また弔問時のマナーを理解しているかどうかも重要なポイントです。
事前にしっかりと準備しておくことで、失礼なく弔意を示すことができます。
また、急な訃報に対応できるよう、日頃から香典袋や筆ペンなどを会社の備品として準備しておくと安心です。
準備の段階で最も注意すべき点は、間違いがないように複数人で確認することです。
特に、故人の氏名や戒名、喪主の氏名、通夜・葬儀の日時・場所などは、間違えやすい情報ですので、訃報連絡を受けた際に正確にメモを取り、関係者と共有することが大切です。
香典袋の選び方と表書きの書き方(会社名・役職)
会社名義で香典を出す場合も、個人の場合と同様に、故人の宗教・宗派に合わせた香典袋を選びます。
仏式では蓮の絵柄が入ったものや、無地の白黒あるいは双銀の水引のついた不祝儀袋を用います。
神式では白無地の不祝儀袋に双銀の水引、キリスト教式では白無地の封筒や十字架・ユリの花が描かれた封筒を用いるのが一般的です。
宗派が不明な場合は、無地の白黒水引の袋を選ぶのが無難でしょう。
表書きは、仏式なら「御霊前」「御香典」、神式なら「御玉串料」「御榊料」、キリスト教式なら「お花料」「御ミサ料」などと書きます。
会社名義で出す場合、表書きの下段中央に「会社名+代表者役職名+代表者氏名」を記載するのが最も丁寧な書き方です。
例えば、「株式会社〇〇 代表取締役 〇〇 〇〇」となります。
代表者個人ではなく、会社として出す意思を明確にするためです。
ただし、会社の規模や故人との関係性によっては、「株式会社〇〇」のみを記載する場合もあります。
また、部署や有志一同で出す場合は、「株式会社〇〇 △△部一同」や「株式会社〇〇 有志一同」などと記載します。
文字は薄墨で書くのがマナーです。
筆ペンやサインペンを使用し、楷書で丁寧に書きましょう。
ボールペンや万年筆は避けるべきです。
金額の決め方と中袋への記載方法
会社として出す香典の金額は、会社の規模や故人との関係性、そして社内規定によって決まります。
一般的な相場としては、従業員本人やその配偶者、直系親族の場合は、5,000円~10,000円、役員の場合は10,000円~30,000円といった金額が多く見られます。
取引先の役員や担当者、OB・OGに対しては、5,000円~10,000円が目安となることが多いです。
ただし、これはあくまで一般的な相場であり、会社の規定で定められた金額を優先すべきです。
規定がない場合は、過去の事例を参考にしたり、役員や関係部署と相談して決定します。
金額を決める際には、四や九といった忌み数を避けるのがマナーです。
また、金額を明確にするために、中袋に金額、住所、氏名を記載します。
会社名義で出す場合は、中袋の表に金額を「金参萬圓也」のように旧字体で記載し、裏に会社の住所と会社名、代表者役職名、氏名を記載します。
複数人で連名で出す場合は、代表者の氏名と「他〇名」または「一同」と記載し、別紙に全員の氏名、所属部署、金額などを記載して中袋に入れます。
中袋がない場合は、直接香典袋にお金を入れても構いませんが、中袋に入れた方が丁寧です。
誰が、いつ、どのように香典を渡すか(代理人・郵送)
会社として香典を渡す方法はいくつかあります。
最も丁寧なのは、会社の代表者や、故人との関係が深かった部署の責任者、あるいは総務担当者などが通夜または葬儀に参列し、直接受付で渡す方法です。
会社の代表として弔問に伺う際は、会社の品格を示す機会でもあるため、身だしなみや振る舞いに十分注意が必要です。
受付では、会社の名前と氏名を名乗り、「この度は心よりお悔やみ申し上げます」といったお悔やみの言葉を述べ、香典を渡します。
名刺を渡す場合は、通常のビジネス名刺ではなく、弔事用の名刺(氏名のみが記載された白無地の名刺)を用いるのがマナーとされています。
直接参列できない場合は、代理人に依頼する方法があります。
代理人は会社の他の従業員や、場合によっては秘書などに依頼します。
代理人には、香典を託す旨、誰の代理であるか(会社名、代表者名)、そして受付での対応方法などを事前にしっかりと伝えておく必要があります。
代理人が受付で香典を渡す際は、「〇〇株式会社 代表取締役 〇〇の代理で参りました △△です」と名乗り、香典を渡します。
遠方で弔問が難しい場合や、弔問を辞退された場合は、現金書留で香典を郵送する方法もあります。
郵送する場合は、香典袋に香典を入れ、さらに現金書留用の封筒に入れます。
この際、お悔やみの手紙や会社の弔問を断られた旨への配慮を添えるとより丁寧です。
郵送するタイミングは、訃報を受けてからできるだけ早く、遅くとも葬儀後一週間以内には届くように手配するのが望ましいでしょう。
会社が香典を出す際のマナーと注意点
会社として香典を出す場合、単に金額を包んで渡すだけでなく、様々なマナーに配慮する必要があります。
個人で参列する場合と同様の基本的なマナーに加え、会社という組織としての立場を踏まえた振る舞いが求められます。
例えば、通夜や葬儀に参列する場合の服装や焼香の仕方、遺族への言葉遣いなど、細部にわたる配慮が会社の印象を左右することもあります。
また、複数の従業員で連名で香典を出す場合や、香典を辞退された場合の対応など、会社ならではの状況も発生します。
これらのマナーや注意点を事前に把握しておくことで、失礼なく、故人と遺族に寄り添った弔意を示すことができるでしょう。
特に、会社の代表として参列する人物は、その言動が会社全体の評価につながる可能性があるため、事前のマナー研修なども有効かもしれません。
また、宗教・宗派によって葬儀の形式やマナーが異なるため、事前に確認しておくことも重要です。
通夜・葬儀での振る舞いと受付での渡し方
会社から代表者や代理人が通夜・葬儀に参列する場合、服装は喪服を着用するのが基本です。
男性はブラックスーツに白無地のシャツ、地味な色のネクタイと靴下、黒い靴を合わせます。
女性はブラックフォーマルに黒いストッキング、黒い靴を合わせます。
アクセサリーは結婚指輪以外は控えめにし、真珠の一連のネックレス程度が良いでしょう。
派手なメイクや香水は避けます。
会場に到着したら、受付で記帳を行います。
会社として参列する場合は、会社名、役職、氏名を記載します。
受付の方に「〇〇株式会社の△△です。
この度は心よりお悔やみ申し上げます。
」と丁寧に挨拶をし、香典を渡します。
香典は袱紗(ふくさ)に包んで持参し、渡す際に袱紗から取り出して渡すのが正式なマナーです。
袱紗がない場合は、葬儀用の小さな風呂敷や、地味な色のハンカチなどで代用することも可能です。
香典を渡す際は、相手から見て文字が正しく読める向きにして両手で差し出します。
記帳を済ませたら、案内に従って会場に進み、席に着きます。
焼香や玉串奉奠などの儀式に参加する場合は、遺族や他の参列者の邪魔にならないよう、静かに落ち着いた行動を心がけます。
遺族の方に声をかける際は、簡潔にお悔やみの言葉を述べ、長話は避けるのがマナーです。
「この度は大変なことで…」「心よりお悔やみ申し上げます」といった短い言葉で十分です。
故人の死因などを詮索するような質問は絶対に避けましょう。
従業員一同で出す場合の連名の書き方
会社の従業員が有志で集まって香典を出す場合、「従業員一同」や「社員一同」として連名で出すことがあります。
この場合、香典袋の表書きの下段中央には、「〇〇株式会社 従業員一同」または「〇〇株式会社 社員一同」と記載するのが一般的です。
この書き方であれば、一人ひとりの名前を書くスペースがなくても対応できます。
ただし、誰がいくら出したのかを遺族に伝えるために、別紙に全員の氏名と金額、所属部署などを記載して中袋に入れるのが丁寧な方法です。
別紙は白い便箋などを使い、縦書きで書くのが正式です。
参加人数が多い場合は、代表者数名の名前を記載し、「他〇名」と添えることもありますが、「一同」とする方が簡潔で一般的です。
連名で出す場合の金額は、一人あたりの負担額を決めて、それを合計した金額を包みます。
一人あたりの金額は、故人との関係性や会社の慣例によって異なりますが、1,000円~5,000円程度が多いようです。
この際、金額にばらつきがあると遺族が香典返しに困ることもあるため、一人あたりの金額を統一するか、少額であっても全員が同じ金額を出すように調整することが望ましいでしょう。
集まった金額をまとめて香典袋に入れるため、中袋に合計金額を記載し、裏に「〇〇株式会社 従業員一同」と記載します。
別紙は必ず中袋に添えて入れましょう。
香典辞退の場合の対応
近年、遺族の意向により香典を辞退されるケースが増えています。
訃報連絡に「誠に勝手ながら、御香典、御供花、御供物の儀は固く御辞退申し上げます」といった文言が添えられている場合、その意向を尊重するのが最大限のマナーです。
会社として弔意を示したい場合でも、香典を無理に渡すことは遺族にとって負担となる可能性があります。
香典を辞退された場合は、香典を包む必要はありません。
しかし、会社として何も弔意を示さないのは心苦しいと感じるかもしれません。
そのような場合は、弔電を送ったり、供花を贈ったりすることで弔意を示すことができます。
ただし、供花や供物も辞退されている場合は、弔電のみとするのが適切です。
弔電は、NTTやインターネットの電報サービスなどを利用して送ることができます。
弔電を送る際は、差出人名を「〇〇株式会社 代表取締役 〇〇 〇〇」や「〇〇株式会社 △△部一同」など、会社名義で記載します。
また、後日落ち着いた頃に弔問に伺い、改めてお悔やみの言葉を伝えることも、遺族への配慮となります。
この際も、手土産などは控えめにし、あくまで弔問が目的であることを明確にすることが大切です。
香典辞退は、遺族の負担を減らしたいという思いからのことが多いため、その気持ちを尊重し、別の形で弔意を示すように心がけましょう。
会社の規定で香典を出すことが義務付けられている場合でも、遺族が辞退されている場合は、規定よりも遺族の意向を優先すべきです。
会社が香典を出す場合の金額相場と経費処理
会社として香典を出す際の金額は、個人の場合とは異なり、会社の規定や故人との関係性によって決められます。
また、会社が支出する費用であるため、適切に経費として処理する必要があります。
この経費処理の方法は、税務上の取り扱いにも関わるため、経理担当者は正確な知識を持っていることが重要です。
香典を経費として処理する際の勘定科目や、領収書の要否など、知っておくべきポイントがいくつかあります。
特に、福利厚生費として認められるか、あるいは交際費となるかで、税務上の取り扱いが大きく変わる可能性があるため、注意が必要です。
これらの知識を持つことで、適切に経費処理を行い、税務調査などにも対応できるようになります。
会社の経費で香典を出すこと自体は一般的な慣行として認められていますが、その金額や頻度があまりにも高額であったり、事業との関連性が不明確であったりする場合は、税務上の問題となる可能性もゼロではありません。
会社として出す香典の一般的な相場
会社が香典を出す場合の金額相場は、前述の通り、会社の規模や規定、そして故人との関係性によって大きく異なります。
従業員本人やその配偶者、直系親族に対しては、一般的に5,000円から10,000円程度が相場とされています。
これは、従業員への福利厚生としての意味合いが強いため、比較的安定した金額が支給されることが多いです。
役員が亡くなられた場合は、会社の代表としての弔意を示すため、10,000円から30,000円と相