葬式にふさわしいスーツの正しい着方

2025年4月24日

突然の訃報に接したとき、悲しみに暮れる一方で、葬儀や告別式への参列準備に戸惑うことは少なくありません。
特に服装は、故人やご遺族への弔意を示す大切な要素です。
失礼のないようにしたいけれど、「どんなスーツを着ればいいの？」「小物はどうすればいいの？」といった疑問や不安を感じる方もいらっしゃるでしょう。
このページでは、葬式にふさわしいスーツの正しい着方について、男性・女性それぞれの立場から、基本のマナーや状況に応じた対応、小物選びのポイントまで、詳しく分かりやすく解説します。
いざという時に慌てないよう、ぜひ最後までお読みいただき、安心して故人をお見送りするための準備にお役立てください。

葬儀・告別式に参列する際の基本の服装マナー

葬儀や告別式に参列する際の服装は、「喪服」と呼ばれるものが基本となります。
喪服には格式があり、参列する立場や故人との関係性によって適切なものが異なりますが、一般の参列者の場合は「準喪服」を着用するのが最も一般的で失礼にあたりません。
準喪服とは、男性であればブラックスーツ、女性であればブラックフォーマルウェア（ワンピース、アンサンブル、パンツスーツなど）を指します。
弔事においては、派手な色柄や光沢のある素材、肌の露出が多いデザインは避けるのが鉄則です。
また、アクセサリーやバッグ、靴などの小物類も、服装に合わせて控えめなものを選ぶ必要があります。
故人を偲び、ご遺族に配慮するという気持ちが最も大切であり、その気持ちを表す手段の一つとして服装のマナーがあると理解しておきましょう。
地域や宗教、葬儀の形式（家族葬など）によって、服装に関する考え方が多少異なる場合もありますので、不安な場合は事前に確認することも大切です。

男性編：ブラックスーツの選び方と正しい着こなし

男性が葬儀・告別式で着用するブラックスーツは、ビジネスシーンで着る黒いスーツとは異なります。
弔事用のブラックスーツは、「礼服」として販売されており、ビジネススーツの黒よりもさらに深い黒色で、光沢のないマットな生地感が特徴です。
この深い黒が、弔意を表すのにふさわしいとされています。
ビジネススーツの黒は、光の加減でグレーに見えたり、ストライプなどの織り柄が入っていたりすることがあり、弔事には不向きです。
ブラックスーツはシングルとダブルのタイプがありますが、どちらを選んでも問題ありません。
シングルブレストの場合は、ジャケットのボタンは一番下のボタンを外して着用するのが一般的ですが、葬儀では一番下のボタンも含めて全て留めるのがより丁寧な着こなしとされています。
ダブルブレストの場合は、全てのボタンを留めるのがマナーです。
スリーピースのブラックスーツも着用可能で、ベストを着用することでより格式高い印象になります。
ただし、ベストもスーツと同じ光沢のない黒無地のものを選んでください。
ワイシャツは白無地のレギュラーカラーかワイドカラーを選びます。
ボタンダウンシャツや色柄物、織り柄がはっきりしているものは避けてください。
ネクタイは黒無地のものを選び、結び目はシンプルにプレーンノットで結び、結び目の下に「ディンプル」と呼ばれるくぼみを作らないのが弔事でのマナーです。
靴下も黒無地のものを選び、座った時に肌が見えないように長めの丈のものを選びましょう。
ベルトは黒無地の革製で、金具が目立たないシンプルなデザインが適しています。

女性編：ブラックフォーマルの種類と身だしなみ

女性の葬儀・告別式での服装は「ブラックフォーマル」と呼ばれ、ワンピース、アンサンブル、パンツスーツなど、様々なスタイルがあります。
最も一般的なのは、ワンピースにジャケットを羽織るアンサンブルです。
ワンピース単体でも問題ありませんが、ジャケットを羽織ることでよりフォーマルな印象になります。
スカート丈は、椅子に座った時に膝が隠れる長さが適切です。
膝上丈や極端に長いロングスカートは避けてください。
袖丈は、夏場でも肩や肘が隠れる五分丈以上が望ましいとされています。
ノースリーブや半袖のワンピースの場合は、必ずジャケットやボレロなどを羽織りましょう。
デザインは、露出が少なく、フリルやレースなどの装飾が控えめなものを選びます。
パンツスーツも準喪服として認められるようになってきていますが、スカートスタイルの方がより伝統的で格式が高いとされています。
パンツスーツを選ぶ場合は、ワイドすぎないシルエットで、ジャケットと共布のものが基本です。
ブラックフォーマルは、深い黒色で光沢のないマットな生地を選ぶことが重要です。
素材はウールやポリエステルなどが一般的です。
ストッキングは、肌色ではなく黒のストッキングを着用します。
厚さは20～30デニール程度の透けにくいものが適切です。
冬場はタイツを履いても良いか迷う方もいますが、一般的にはストッキングが基本です。
しかし、最近では防寒を考慮し、厚手のタイツも許容される場合が増えてきました。
ただし、網タイツや柄物は厳禁です。
靴は黒無地のパンプスで、エナメルなどの光沢素材は避け、布製かスムースレザーを選びます。
ヒールの高さは3～5cm程度の太めのヒールが歩きやすく、かつフォーマルな印象を与えます。
オープントゥやミュール、サンダル、ブーツは不適切です。

通夜と告別式で服装は変えるべき？状況別の対応

通夜と告別式では、服装に関するマナーに若干の違いがあります。
かつては、通夜は急な知らせを受けて駆けつけるため、地味な平服でも良いとされていました。
しかし、近年では通夜に参列する方が増え、告別式と同様に準喪服を着用するのが一般的になっています。
特に、訃報を事前に知っていた場合や、勤務先から弔電を打つなど、準備する時間があった場合は、通夜でも準喪服で参列するのが基本です。
急な訃報で、やむを得ず準喪服の準備が間に合わない場合は、地味な色（黒、紺、ダークグレーなど）のビジネススーツやワンピースを着用しても構いません。
この場合でも、シャツやブラウスは白無地、ネクタイは黒無地、靴やバッグも黒で光沢のないものを選び、アクセサリーは結婚指輪以外は外すなど、できる限り弔事のマナーに沿った装いを心がけましょう。
告別式は、故人とのお別れを告げる儀式であり、通夜よりもフォーマルな装いが求められます。
一般参列者の場合は、通夜と同様に準喪服（ブラックスーツやブラックフォーマル）を着用します。
親族の場合は、より格式の高い正喪服や準喪服を着用することが多いですが、最近では家族葬など形式にとらわれない葬儀も増えており、ご遺族間で服装の格を揃えることが重要視されています。
地域やご遺族の意向によって服装の考え方が異なる場合があるため、事前に確認できる場合は確認しておくのが最も安心できる方法です。
例えば、「平服でお越しください」と案内があった場合でも、普段着で良いという意味ではなく、「略喪服（ダークスーツなど）で構いません」という意味合いであることが多いので注意が必要です。