葬儀という場は、故人を偲び、ご遺族に寄り添う大切な時間です。
参列する際には、服装だけでなく、持ち物にも細やかな配慮が求められます。
特にバッグは、全身のコーディネートの一部として意外と目につくものであり、マナー違反は避けたいものです。
どのようなバッグを選べば良いのか、どんな点に気をつけるべきなのか、多くの人が迷うポイントではないでしょうか。
この記事では、葬儀で使うバッグのマナーについて、具体的な選び方から避けるべきポイントまで、分かりやすく丁寧にご説明します。
失礼のない装いで、心穏やかに故人をお見送りするために、ぜひ参考にしてください。
葬儀にふさわしいバッグの基本マナーと選び方
葬儀に参列する際に持つバッグは、慶事とは異なり、控えめで落ち着いたデザインが基本です。
故人やご遺族への敬意を示すためにも、華美な装飾や派手な色使いは避けるのがマナーとされています。
バッグ選びは、服装と同じくらい重要な要素であり、その場の雰囲気に調和することが求められます。
ここでは、具体的にどのようなバッグがふさわしいのか、性別ごとの選び方や、色・素材・デザインの基本ルールについて詳しく見ていきましょう。
適切なバッグを選ぶことで、安心して葬儀に臨むことができます。
女性が持つべき正式なバッグとは
女性の場合、葬儀にふさわしいとされる正式なバッグは、黒色の布製ハンドバッグです。
素材は、シルクやサテン、ポリエステルなどの光沢のないものが一般的です。
エナメルやビニールといった光沢のある素材は、慶事を連想させるため不適切とされています。
デザインは、シンプルで装飾が一切ないものを選びましょう。
金具も目立たない、小さく控えめなものが望ましいです。
サイズは、財布やハンカチ、数珠、袱紗など、必要最低限のものが収まる小ぶりなものが正式とされています。
大きすぎるバッグや、肩にかけるショルダーバッグ、リュックサックなどは、カジュアルな印象を与えるため葬儀の場にはふさわしくありません。
ハンドバッグを手に持つスタイルが最も丁寧な印象を与えます。
慶事用のバッグは、たとえ黒色であっても、ビーズやスパンコール、ラインストーンなどの装飾が施されていることが多いため、葬儀用としては避けなければなりません。
喪服に合わせるバッグは、あくまでも控えめで、悪目立ちしないことを最優先に考えることが重要です。
男性が持つべきバッグの選び方
男性の場合、基本的に葬儀にバッグを持っていく必要はありません。
スーツのポケットに財布や携帯電話などを収め、手ぶらで参列するのが最も一般的であり、失礼にあたらないスタイルとされています。
しかし、どうしても荷物がある場合や、遠方からの参列で書類などがある場合は、バッグを持参することもあります。
その際は、黒色で地味なデザインのブリーフケースやセカンドバッグを選びましょう。
素材は、光沢のない革製や布製が適しています。
ビジネスバッグを持参する場合でも、派手な色やデザイン、大きなブランドロゴが入ったものは避け、黒色のシンプルなものを選ぶように心がけてください。
カジュアルなリュックサックやトートバッグは、葬儀の厳粛な雰囲気には相応しくありません。
男性がバッグを持つ場合も、あくまで必要最低限の荷物を収めるためのものであり、ファッション性よりも機能性とマナーを重視した選び方が求められます。
バッグの色・素材・デザインの基本ルール
葬儀に持参するバッグの色は、黒が最も基本であり、最も無難な選択肢です。
深い紺色や濃いグレーなども許容される場合がありますが、黒色を選べば間違いありません。
明るい色や華やかな色は厳禁です。
素材に関しては、前述の通り、光沢のない布製(シルク、サテン、ポリエステルなど)が最もフォーマルとされています。
革製については、殺生を連想させるため避けるべきという伝統的な考え方もありますが、近年では光沢のないスムースな黒色の革製であれば許容される傾向にあります。
ただし、ワニ革やヘビ革といった爬虫類系の革や、アニマル柄、ファー素材は、殺生や華やかさを連想させるため絶対に避けなければなりません。
デザインは、無地でシンプル、装飾が一切ないものを選びましょう。
金具も必要最小限で目立たないものが望ましいです。
大きなバックルやチェーン、スタッズなどは不適切です。
全体として、控えめで上品な印象を与えるバッグを選ぶことが、葬儀のマナーを守る上で非常に重要になります。
葬儀で避けるべきバッグの特徴とNGマナー
葬儀という厳粛な場では、普段使いのバッグや慶事用のバッグがマナー違反となることがあります。
どのようなバッグが不適切なのか、またバッグに関するどのような行為がNGマナーにあたるのかを知っておくことは、失礼なく参列するために非常に重要です。
つい良かれと思って持参したものが、かえって周囲に不快感を与えてしまう可能性もあります。
ここでは、具体的に避けるべきバッグの特徴やデザイン、そしてバッグの持ち方や中身に関する注意点について詳しく解説します。
これらのNGポイントを押さえておくことで、葬儀の場で戸惑うことなく、適切な振る舞いができます。
こんなバッグは絶対にNG!避けるべきデザインや装飾
葬儀の場で最も避けなければならないのは、派手な色やデザインのバッグです。
具体的には、赤や白、黄色などの明るい色や原色のバッグは厳禁です。
また、ゴールドやシルバーなどの金属色、蛍光色なども不適切です。
素材に関しても、エナメルやビニールのように光沢の強いもの、キラキラとしたラメやスパンコールがあしらわれたものは慶事用と見なされるため避けてください。
爬虫類系の革(ワニ、ヘビなど)や、毛皮(ファー)、アニマル柄のバッグも、殺生を連想させるため不適切とされています。
デザイン面では、大きなブランドロゴが目立つものや、派手な金具、スタッズ、フリル、リボン、大きなコサージュなどの装飾が多いものは、葬儀の厳粛な雰囲気には合いません。
カジュアルな素材であるデニムやキャンバス地、ビニール素材のバッグも避けるべきです。
キャラクターものや、あまりにも普段使い感の強いリュックサックやトートバッグも不適切です。
葬儀の場では、あくまで故人を偲び、ご遺族に配慮することが最優先されるため、個性を主張するようなデザインや装飾は一切不要です。
持ち方や中身に関する知っておきたい注意点
葬儀でのバッグに関するマナーは、選ぶバッグだけでなく、その持ち方や中身にも及びます。
まず、バッグを置く場所ですが、基本的に床に直接置くのはマナー違反とされています。
椅子があれば椅子の下か、膝の上に置くようにしましょう。
椅子がない場合や、どうしても床に置かざるを得ない場合は、壁際などに控えめに置くように配慮が必要です。
受付では、バッグを開けて財布を取り出す際に、中身が見えたり、もたついたりしないように事前に準備しておきましょう。
また、お焼香などで前に進む際は、バッグは持ったまま移動するのが一般的です。
中身に関しては、必要最低限のものだけを入れるように心がけましょう。
財布、ハンカチ、ティッシュ、数珠、袱紗などが基本です。
財布は、華美な装飾がない、落ち着いたデザインのものを選ぶのが望ましいです。
携帯電話は必ずマナーモードに設定し、着信音や操作音が鳴らないように注意してください。
お菓子や飲み物など、その場で必要のないものはバッグから出しておくか、サブバッグに入れるようにしましょう。
バッグの中身が整理されていることも、その人の品格を示すと考えられます。
葬儀で役立つサブバッグの上手な使い方
葬儀に参列する際、メインのフォーマルバッグだけでは荷物が収まらない場合があります。
特に、冬場のコートやマフラー、折りたたみ傘、遠方からの参列で着替えや書類がある場合、小さなお子さん連れの場合など、荷物が多くなりがちです。
そのような場合に役立つのがサブバッグです。
サブバッグを上手に活用することで、メインバッグの中身を整理しつつ、必要なものをスマートに持ち運ぶことができます。
しかし、サブバッグもまた、葬儀の場にふさわしいものを選ぶ必要があります。
ここでは、サブバッグが必要となる場面や選び方、そしてサブバッグに入れるもの、入れないものについて詳しく解説します。
サブバッグを適切に使うことで、より快適に、そしてマナーを守って葬儀に参列することができます。
サブバッグが必要な場面と選び方
サブバッグが必要になるのは、主に以下のような場面です。
まず、冬場にコートや防寒具(手袋、マフラーなど)を持参する場合。
これらをたたんで入れるためにサブバッグがあると便利です。
次に、雨や雪の日に折りたたみ傘を持参する場合。
濡れた傘をそのまま持ち歩くのは難しいため、サブバッグに入れます。
また、遠方から参列する場合は、着替えや書類、移動中に必要なものなど、荷物が多くなりがちです。
小さなお子さん連れの場合は、オムツや着替え、おやつなど、子供の荷物が増えます。
これらの荷物をメインバッグに無理やり詰め込むと形が崩れたり、必要なものがすぐ取り出せなくなったりするため、サブバッグの利用が効果的です。
サブバッグを選ぶ際のポイントは、メインのフォーマルバッグと同様に、黒色で光沢のない布製であることです。
デザインは、無地でシンプルなトートバッグタイプが最も使いやすく、適しています。
A4サイズが入るくらいの大きさがあると、書類や折りたたみ傘なども収まります。
ブランドのロゴが大きく入っているものや、派手な色、装飾のあるもの、カジュアルすぎる素材(ビニールやキャンバス地の派手な柄物など)は避けましょう。
サブバッグに入れるもの、入れないもの
サブバッグには、メインのフォーマルバッグに入りきらない、またはすぐに取り出す必要のないものを入れます。
具体的には、折りたたみ傘、冬場の防寒具(ストール、手袋など)、携帯電話(電源を切るかマナーモードに)、簡単な化粧直し用具(リップクリームやフェイスパウダーなど、香りの強くないもの)、飲み物(ペットボトルなど)、小さなお子さんの荷物、遠方からの参列で必要なもの(着替え、書類など)などが挙げられます。
メインのフォーマルバッグには、財布、ハンカチ、ティッシュ、数珠、袱紗といった、受付や焼香の際にすぐに必要になるもの、または貴重品を入れておくのが一般的です。
サブバッグに入れるものは、あくまでも補助的な荷物であり、葬儀の場にふさわしくないもの(派手な雑誌、お菓子、大きな音の出るものなど)は入れないように注意しましょう。
また、サブバッグの中身がごちゃごちゃしていると、必要なものがすぐに取り出せず焦ってしまうだけでなく、周囲から見てだらしない印象を与えてしまう可能性があります。
サブバッグを使う場合も、中身を整理整頓しておくことが大切です。
葬儀バッグに関するよくある疑問と一次情報アドバイス
葬儀のバッグ選びには、様々な疑問がつきものです。
「このバッグは大丈夫かな?」「みんなはどうしてるんだろう?」と悩むことも多いでしょう。
特に、普段使いのバッグしかない場合や、急な訃報で準備する時間がない場合など、不安に感じることもあるかもしれません。
ここでは、葬儀バッグに関するよくある疑問にお答えするとともに、一般的なマナーの範囲内で、より実践的な一次情報に基づいたアドバイスをご紹介します。
これらの情報を参考に、ご自身の状況に合わせて、失礼のない、かつ安心して参列できるバッグ選びをしてください。
ブランドバッグはOK?一次情報としての考え方
「ブランドバッグは葬儀に持っていっても良いの?」という疑問はよく聞かれます。
一次情報としてお伝えできるのは、「ブランドそのものがNGなのではなく、デザインとロゴの目立ち具合が判断基準になる」ということです。
例えば、高級ブランドのバッグであっても、黒色で光沢がなく、装飾が一切なく、ブランドロゴがほとんど見えないか、非常に控えめなデザインのものであれば、マナー違反とまでは言われない場合が多いです。
逆に、ノンブランドのバッグでも、派手な色や装飾、カジュアルなデザインであれば不適切です。
しかし、これはあくまで一般的な傾向であり、故人やご遺族の考え方、参列者の年代層や地域性によっても許容範囲は異なります。
迷うくらいであれば、フォーマル用の黒い布製バッグを選ぶのが最も安全で、誰からも指摘される心配がありません。
もし手持ちのバッグで代用せざるを得ない場合は、可能な限りロゴが見えないように持つ、スカーフなどでロゴを隠す、またはロゴの部分を内側にするなどの工夫をすることで、控えめな印象に近づけることができます。
ただし、無理な場合は潔くフォーマルバッグを用意することをおすすめします。
子供や学生の葬儀バッグはどうする?
子供や学生が葬儀に参列する場合のバッグについても、大人とは少し考え方が異なります。
まず、小さなお子さんの場合、基本的に手ぶらで問題ありません。
もし荷物がある場合は、保護者がまとめて持つのが一般的です。
小学校高学年以上の子供や学生が自分で荷物を持つ場合、大人ほど厳格なフォーマルバッグを用意する必要はありません。
学校指定のバッグがある場合は、それが最も無難です。
制服での参列であれば、学生カバンで良いでしょう。
私服で参列する場合や、学校指定のバッグがない場合は、地味な色(黒、紺、グレーなど)の、装飾のないシンプルなリュックサックやトートバッグを選びましょう。
キャラクターものや派手な柄、明るい色のバッグは避けてください。
要は、その場の雰囲気を乱さない、控えめな印象のバッグであれば問題ありません。
学生は、教科書やノートなどを持ち運ぶためのバッグが必要な場合もあるため、A4サイズが入る実用的なものが選ばれることが多いですが、あくまでも葬儀の場にふさわしい落ち着いたデザインを心がけましょう。
突然の訃報に対応できる準備とは(一次情報)
葬儀は、いつ、どこで参列することになるか予測できません。
特に、突然の訃報を受けた場合、準備する時間が限られている中で、適切なバッグを用意するのは難しいこともあります。
このような不測の事態に備えるための一次情報として、「常に黒のフォーマルバッグを一つ、クローゼットに用意しておくことの重要性」を強くお勧めします。
値段の高いものである必要はありません。
いざという時に慌てずに済むよう、手頃な価格でも良いので、黒色の布製フォーマルバッグを一つ持っておくと安心です。
もし、急な訃報で手持ちのバッグで代用するしかない場合は、ご自身の持っているバッグの中で、最も黒色に近く、光沢がなく、装飾が少ないものを選びましょう。
派手なチャームやキーホルダーが付いている場合は必ず外し、可能な限りシンプルな状態にします。
大きなブランドロゴがある場合は、前述のようにロゴが見えないように持つなどの工夫をします。
また、最近ではコンビニエンスストアやスーパーマーケットでも、急な仏事に対応できるよう、簡易的な黒色のフォーマルバッグが販売されている場合があります。
いざという時のための備えとして、選択肢の一つとして知っておくと、万が一の際に役立つかもしれません。
何よりも大切なのは、故人を悼む気持ちと、ご遺族への配慮です。
バッグ選びに迷ったら、「このバッグは、この厳粛な場にふさわしいか?」と自問自答し、少しでも不安があれば、より控えめでシンプルなものを選ぶようにしましょう。
まとめ
葬儀に参列する際のバッグ選びは、故人への哀悼の意と、ご遺族への配慮を示す大切なマナーの一つです。
基本的には、黒色の光沢のない布製ハンドバッグが最も正式とされています。
女性は小ぶりなハンドバッグ、男性は手ぶらか地味なブリーフケースやセカンドバッグが望ましいです。
色や素材、デザインは、黒を基調とし、光沢や派手な装飾、アニマル柄などは避けるのが鉄則です。
バッグの持ち方や中身にもマナーがあり、床に直置きせず、必要最低限のものだけを整理して入れることが大切です。
荷物が多い場合は、黒色で無地の布製サブバッグを上手に活用しましょう。
ブランドバッグの判断基準はロゴの目立ち具合であり、迷う場合はフォーマルバッグを選ぶのが無難です。
子供や学生は、学校指定のバッグや地味な色・デザインのもので構いません。
そして何よりも、突然の訃報に備え、一つはフォーマルバッグを用意しておくと安心です。
葬儀バッグは、おしゃれを楽しむためのアイテムではなく、故人を偲び、静かに弔いの気持ちを表すための道具です。
これらのマナーを踏まえ、落ち着いた装いで葬儀に臨みましょう。